《HIBAKUSHA2020~被爆75年へ向けて~》第三弾:市民の力でもう一度

2019.09.12

事務局スタッフの鈴木です。

インタビュー企画第三弾はNGO核兵器廃絶地球市民集会ナガサキの

実行委員長である朝長万左男さんです。

朝長さんは『ヒバクシャ国際署名』をすすめる長崎県民の会の共同代表の1人でもあります。

 

※なおこのインタビューは2019年4月末のものであり、

情報が現在と異なる部分もありますのでご了承ください。

 

 

2020年の9月が署名の最終集約ということで、被爆者の方に関わらず色んな人に話を聞いています。今後、どういう風に活動を盛りあげていくのか、署名がどういう意味を持っているのかなどを伺えたらと思っています。

 

署名活動は市民社会の中での活動で、市民の力で核保有国には一定の圧力をかけられているのではないかと思っています。

長崎ではちょっと勢いが弱いところは、もう一度初心に戻って各自治体にテコ入れをしていこうとしています。長崎県は佐世保市という軍港がある市長を除けば、全ての市長さん、首長さんが賛成しています。そういう自治体をベースにした署名活動はいろいろターゲットがあると分析していますので、そこに具体的に回っていくとかをしたいですね。もう一回、市長さんから各自治体の住民の方に声をかけて頂いて、町内会の部長さんに電話をかけてもらうとかね。もう一回、この1年間努力しましょうと、鼓舞しているところです。今後飛躍的に署名数を伸ばすためには、もっと大きな企画やインパクトのあることが起こればいいんですけどね。例えば核兵器国の1カ国が禁止条約に入ろうかという動きが出てくるとかね。

 

2015年のNPT再検討会議では合意決議に至ることがでず、国際情勢はますます悪化していますよね。

 

今、アメリカとロシアがお互い敵対関係を強めていて、特に小型核兵器の増産に傾きつつあります。これまで築いてきた新START条約とか、もっと前のINF条約など不安定になってきています。ネガティブな方向にいっていますよね。そういう意味でなかなか核軍縮を進めることが難しい情勢です。その影印は、冷戦から続いています。

アメリカは自分たちを中心に資本主義の流れを作っていきたいと考えています。だから、アメリカの軍事力を世界に主張し、軍隊の基地をさまざまな場所に配置しています。日本はその中でも大きな割合を占めているわけです。それで世界の安定した秩序を確立していこうとしています。これは安倍さんのいう武力をベースにして平和を構築していくというやり方ですよね。彼は何て言ったかというと「積極的平和主義」という言葉を使ったんですよ。積極的っていうのはどういうことかというと、簡単に言えば核兵器で戦争を防止している、核の傘も抑止力ということです。ですが、これが今うまくいってないんです。

 

アメリカ中心社会に異論を持つ国々は多いですもんね。2020年のNPT再検討会議で重要な論点は何になるでしょうか?

 

前回のNPT再検討会議では、中東の国々が一堂に会して3つの大量破壊兵器の軍縮をどうするかという会議をするという決議ができませんでした。その前の2010年にはそれをすることの合意が成立されたんですけどね、結局それができないでいます。今回もそれをしないといけません。それが本当にできるかどうか。現在、唯一世界で核軍縮の対話が進みつつあるのが米朝です。2回目の会談はうまくいきませんでしたけど、日本の社会が不安におののいていたミサイルの脅威も、彼らが会うとそれなりに沈静化はしますよね。そのときに我々日本人にとって一番重要なのは、日本と北朝鮮の関係は対話と信頼醸成に向かってスタートを切れていないと自覚することです。日本も含めて北東アジアが非核地帯になれるくらい大きい展望を持ってやらないといけないっていうのが、僕ら長崎のNGOのグループのコンセンサスです。

 

核の話をしていると必ず北東アジア非核兵器地帯の構想の話がでてきますよね。日本は北東アジアの一員としてリーダーシップを発揮しないといけませんね。

 

理想は日本を含めて北東アジアが全部非核兵器地帯になればいいっていうのが今の考え方です。日本政府は、この考え方を「理解はするけど具体的に議論する段階じゃない」と言っていますけどね。そして、その上で日本は、核兵器禁止条約については核兵器国と同様、今のところ無視しています。核兵器国もその後の態度はずっと反対を継続しているんですけど、日本政府が唯一違うのは、賢人会議っていうのを発足させて、どうやったら対立関係にある禁止条約推進派と禁止条約反対派の断裂を乗り越えられるのかを議論する場を設けています。核兵器が今はまだ必要だというのが核兵器国の根本理念です。それを核抑止論といいます。核抑止論の克服と言うのが最大の目的です。

 

核保有国は段階的に核兵器を減らしていこうとい主張ですね。人道性の観点から小型核兵器に絞り、世界の秩序が保たれたのちに核兵器をなくすことを主張しているからこそ、そこで分断が生まれてしまっていますよね。

 

そうですね。マルチステップという言葉があって、多段階に核軍縮を進めていったほうがいいというのが保有国の考え方です。そこで禁止条約が批准されて発効したとしても、なかなか状況は厳しいわけです。新たな核軍縮がそこからスタートして、極端な話、核弾頭の最小限の数を例えば300として、米ロその他の国を含めて300発までは絶対減らしてしまう、というような強固なコンセンサスが出来上がっていくようなことが2020年の会議で決議されることは、全然現実的ではありません。また、僕はICANも大きな壁にぶち当たっていると思います。日本政府もそういう意味では、大きな壁にぶち当たっているんじゃないでしょうか。だいぶ賢人会議に頼りすぎていますね。どういう風に世界に向かって橋渡しをしていくのかという決意をしないといけません。

 

今、世界で最も核廃絶が進んでいる国はどこなんでしょうか?

 

イギリスです。イギリスが意外と核兵器の全廃に最も近い国だと言われています。トライデントという潜水艦の核兵器しかもう持ってないんですよ。その潜水艦システムをやめるとを議会が決議さえすれば、イギリスは10年か20年で非核兵器国へ移行することができます。実際、イギリス国内では民間と政府でいろんな会議が行われています。イギリス議会では核兵器国には核のない世界をつくるために、NPT条約をつくった責任があると主張しており、その責任論が議論されています。イギリスがそこから突破口をひらいてくれると、核兵器国から核兵器禁止条約の加盟国が出てくるんじゃないかなと思います。そういうステップを少しずつ作り出していく原動力にヒバクシャ国際署名が役立っています。

 

最終署名提出の後の未来のことも少しずつ考えなければと思っています。今後どう活動していくのかの展望はありますか?

 

まあ、署名活動を延長してだらだらやるのもよくないですよね。もう一つ次のステップが出てこないといけません。NPTという国連の枠組みの中で、核軍縮レジームがほとんど機能していません。そこの突破口をNPTの会議で開けるかというのが2020年のテーマなんです。例えば、日本政府が唯一の被爆国として予算をつけて、世界がそれに賛同して東京や広島・長崎で何日間か議論ができるような枠組みを形成することを促すとか。また、サイバー技術の問題があります。宇宙空間とかAI技術が軍事の中でも急速に台頭し始めてきていますよね。これによって核兵器の管理もやろうという動きもあります。人類は今、環境破壊、核戦争、AIによって人類が滅亡するかという3種類の危機に瀕しています。核兵器問題はその中でも人間の知恵でなんとかできる問題なんじゃないかと思います。

 

いろいろステージが変わる中で、去年は平和式典で初めて長崎在住ではない被爆者の方が平和への誓いを読みました。継承のステージも新しくなりつつあると思いますが、どのように感じていますか?

 

本当の体験者で、自分の経験を自分の言葉で語れる人は絶対的に少なくなってきています。彼らが証言してきたものの整理分類が必要になってきています。アメリカのワシントンにあるホロコーストミュージアムでは、ユダヤ人の生き残った人の証言を全部コンピューターに保存してあって、私たちはその証言を聞けるんです。被爆者の生の体験をほとんど忠実に維持できる時代に入っているんじゃないかなと思います。

 

それは新しく画期的な継承方法ですね。では最後に、よくこういう問題に関心のない友達に「なぜ証言を聞く必要があるのか?」と聞かれることがあるのですが、朝長先生はこういう質問を若い人にされたらなんと答えますか?

 

若い世代がなぜ証言を聞かないといけないのかというと、核兵器を何も知らない人たちが核廃絶をしていく時代が来るからです。だから継続的に教育することが重要です。それを怠ると、あるときから「もういいや」となってしまいます。まさに第一世代の被爆者がこれまで70年以上やってきたのは「もういいや」とならないようにするためです。これを地球レベルで考えたとき、地球全体の市民が核兵器に関する知識をきちんと持っていけるかどうかが大事です。どうやって人類の未来を、平和と幸福を実現していくかが、みなさんの世界でより重要な課題になってきます。どうしてもまだ自分の国さえよければっていう感じが強いですけどね。一つ一つ克服していけないといけません。

 

「今一度長崎から」という強い想いを感じるインタビューでした。

小さな課題から大きな課題までさまざまですが、

一つ一つ克服して前に進んでいきましょう。

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作家、僧侶

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