「核」を自分事にするためには
2019.10.049月23日に国連大学で「核なき世界へ向けて–それって他人事?自分事?–」が開催されました。9月26日は国連が定めた「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」で、それに合わせて核兵器廃絶日本NGO連絡会が主催し、国連広報センターが共催、ヒバクシャ国際署名が協力しました。
イベントの冒頭に、茂木敏充外務大臣が「核兵器のない世界を作るには核兵器国を巻き込まなければなりません。これらの国々の橋渡しをするのが日本政府の役割です。政府としても核兵器のない世界へ向けて、被爆者の方の言葉を真摯に受け止め行動していきます」と、メッセージを送りました。
第1部「核なき世界へ向けて」では3人が報告しました
国連広報センターの佐藤桃子さん
私たちは核兵器のない世界へ向けて努力が続けられていることを認識して賞賛すべきです。国連としては「市民意識の向上」と「教育の向上」に引き続き力を入れていきたいと思います。
研究施設ユニタールでは、戦争を経験した国のリーダーを集めて国の復興を考える勉強会やフィールドワークを実施しています。広島に訪れ、「核を落とされた街がどう復興したのか」を学んでいます。
近年、「若者」は未来のリーダーと言われますが、今後どうリーダーシップを取っていくのかを考える必要があります。それの成功している分野が気候変動です。1人の少女から始まった訴えに各国の若者がリーダーシップをとってアクションを起こしています。
日本被団協事務局次長の和田征子さん
被爆者が思っていることは「その死は空から突然降ってきたものではない」と言うことです。原爆を作り、落とした人がおり、それによって喜んだ人がいるという認識を持っています。
その日から被爆者は、この被害や想いを世界へ訴えるべく日本被団協を結成し、今日まで1日も休むことなく声を上げ続けてきました。被爆者の平均年齢は82歳を越え、「今後誰が語り継いでくれるのか」という不安や「三度目は使われてはならない」という強い想いのもと行動を続けています。
日本政府は「唯一の被爆国」と言いながら被爆者に寄り添った行動は未だにしてくれていません。これからも日本政府に訴え続けていきます。
みなさんも一緒に「公共の善」に向けて努力を続け進んでいきましょう。
外務省軍縮不拡散・科学部長の久島直人さん
私たち政府の基本的立場は「唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界を目指すことが使命」ということです。核兵器国と非核兵器国の協力の下、現実的・実践的に取り組みを続けております。
具体的な取り組みとして日本政府が主導する取り組みが大きく4つあります。
・核軍縮の実践的な進展のための賢人会議
・軍縮・不拡散イニシアティヴ(NPDI)
・国連総会での「核兵器廃絶決議」を通じた働きかけ
・G7、二国間協議
などに力を入れています。
みなさんも仰っていた通り、日本政府は核兵器禁止条約の署名・批准をしていません。禁止条約は政府から見ると核保有国が賛同してないため、アプローチの仕方が異なるという認識をしています。核兵器廃絶というのは共通の目的だと認識していますので、政府の立場で核廃絶へ向けて今後も取り組みを続けたいと思います。
第二部 パネルディスカッション
第2部は5名のパネリストによるパネルディスカッション「核兵器を自分事として考える」です。
パネリストは
・ヒバクシャ国際署名キャンペーンリーダーの林田光弘さん
・外務省軍縮不拡散・科学部長の久島直人さん
・元高校生平和大使、ミュージカル「Sing!」に出演の布川仁美さん
・東京大学、「ヒロシマ・アーカイブ」「記憶の解凍」プロジェクトの渡邉英徳さん
・日本被団協事務局次長の和田征子さん
です。
モデレーターはフォトジャーナリストの安田菜津紀さん。
林田さんから久島さんに向けて、
期限を決めていないヒバクシャ国際署名にも賛同してもらえないのか?という質問と、核保有国の指導者を広島・長崎に招き、形式的ではなくきちんと資料館を案内してほしいとの提案がありました。
久島さんは、政府の立場では仮定の質問にはなかなか答えることができないとの回答があり、核保有国の指導者の招待は積極的に行なっていきたいと仰っていました。
それに対して渡邉さんからは、日本政府に対して「福島の事故の終息は必ずします」と仮定の話をしていながら、なぜ核兵器禁止条約は言えないのか」という厳しい意見がありました。
和田さんからは2年前にこのイベントで外務省の方がお話しされてから、ステップバイステップはどれくらい進んだのか?という質問と、海外の政治家たちだけではなく日本の閣僚も資料館に足を運ぶべきだという意見がありました。なんと過去10年間で長崎の資料館を訪れた日本の閣僚はいないそうです。
回答として久島さんからはCTBTの署名国が少しずつ増えており、最終的に核兵器がなくなるためにCTBTの署名国が増えることは歩みが進んでいることだと思うと述べました。
さまざまな議論が行われた最後に、モデレーターの安田さんから「今後、核兵器に関するニュースを聞いた時に、今日出会った被爆者の和田さんのことを思い出すかもしれません。それが自分事に考えることの始まりだと思います」と会を締めくくる言葉がありました。
被爆者のみなさんはすでに「自分たちが見届けることのできない将来へ向けて」考え、行動しています。いま自分に何ができるのかを考え、共に声を上げ続けていきましょう。
報道
▼NHK 核兵器の廃絶を考えるシンポジウム 東京
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190923/k10012095421000.html
NEWS
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