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核兵器禁止条約について
核兵器をめぐる国際社会の動き
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核競争から核軍縮へ
1945年7月に米国は史上初の核実験を自国内で行い、翌8月に広島と長崎に原爆が投下されました。第二次世界大戦後は、東西冷戦下で、米国とソ連を中心とする核兵器の軍拡競争が続きました。イギリス、フランス、中国もこれに加わり、核保有国となりました。
核軍拡競争を規制するために、1960年代に部分的核実験禁止条約(PTBT)や核不拡散条約(NPT)が結ばれました。一方、米ソが核戦争寸前までいった「キューバ危機」をきっかけに、中南米で1967年に世界初の非核地帯条約が結ばれました。非核地帯はその後、南太平洋、東南アジア、アフリカそして中央アジアへと広がっていきました。
1980年代に反核運動が世界的に盛り上がるなか、米ソ両国は1987年に中距離核戦力(INF)全廃条約を結び、核軍縮へと舵を切りました。1989年に冷戦が終結してからは、米ロ両国は戦略兵器削減条約(START)を通じて核軍縮を進めてきました。1996年には包括的核実験禁止条約(CTBT)が結ばれましたが、その一方で、1998年にインドとパキスタンが、2006年には北朝鮮が核実験を行い、新たな核保有国となりました。
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核兵器の禁止と廃絶へ
国際司法裁判所(ICJ)は1996年、核兵器の使用・威嚇は「一般的に国際法違反」だとする勧告的意見を出しました。2000年にはNPT再検討会議で、核保有国が「核兵器廃絶を達成するという明確な約束」を行いました。それにもかかわらず、核保有国による核軍縮は非常に遅く、不十分なものでした。
こうした中、生物・化学兵器や対人地雷、クラスター爆弾などが条約で禁止されているのと同じように、核兵器も条約で禁止すべきだとの声が国際的に高まりました。2010年頃から、オーストリア、メキシコ、コスタリカといった国々が核兵器を非人道的兵器として禁止・廃絶する動きを進め、赤十字国際委員会(ICRC)や、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に代表されるNGOがこれを後押ししました。こうして2017年、核兵器禁止条約が国連で122カ国の賛成票をえて採択されました。
核兵器禁止条約とは
核兵器を作ることや持つこと、持ち込ませること、使うこと、使うと脅すことなど、核兵器に関わる活動を全面的に禁止し、核兵器の廃絶を義務づけた史上初の条約(国家間の法的約束)です。2017年7月7日に成立し、2021年1月22日に発効しました。また、この条約には、核兵器の使用や実験によって影響を受けている被害者を援助し、汚染された環境を修復する義務やこれに関する国際協力の義務も規定されています。条約発効後は定期的に締約国(条約に参加している国)の会合が開催されます。2022年6月には第1回締約国会合が開催され、宣言や行動計画などが採択され、締約国は条約に基づいて行動を開始しています。第2回締約国会議は、2023年11~12月に開かれます。全ての国がこの条約に参加すれば、核兵器のない世界が実現するのです。
- 「核兵器禁止条約」条文
- https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000433139.pdf(日本政府による暫定的な仮訳)
- 「核兵器禁止条約 逐条解説」
- https://www.ialana.info/wp-content/uploads/2022/06/TPNW-commentary-japanese-ver.pdf(国際反核法律家協会:IALANA)
- 参考図書
川崎哲『核兵器 禁止から廃絶へ』
岩波ブックレット(2021年) - https://www.iwanami.co.jp/book/b595669.html
- 2022年核禁ウィーク in Japan
- https://2022banweek.nuclearabolitionjpn.com/(第1回締約国会議に合わせたアクション)
私たちの手で社会は変えられる
これまで長きにわたって、被爆者を含め、私たち市民は、核兵器廃絶を願って、非暴力の運動を続けてきました。それは、国際政治に翻弄され、失望と落胆を繰り返しながらの歩みでした。2007年、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が市民の手によって誕生しました。ICANはSNSを使ったキャンペーンや強力なロビー活動などを各国や国際会議の場で展開してきました。その結果、2017年7月7日に「核兵器禁止条約」が国連総会で採択され、2021年1月22日に発効したのです。核兵器が国際法で禁止されるという偉業を市民の手によって成し遂げました。現在ICANのパートナー団体は650を超え、世界中に広がっています。市民一人一人の力は小さくとも、志を同じくする仲間が協力すること、その活動を諦めずに続けることで、社会を動かすことができる。そのことをこれまでの被爆者やICAN、各国の市民社会の活動が示してくれています。
日本が核兵器禁止条約に加わることの意味
核兵器禁止条約は「あらゆる核兵器は許されない」という国際ルールです。広島・長崎で原爆被害を経験した日本がこの条約に加われば、そのルールは、さらに強くなります。逆に、被爆国・日本がこの条約に加わらないままでいたら、「核兵器はそんなに悪くない」という誤ったメッセージを世界に発信することになりかねません。
岸田首相は、核兵器禁止条約には「核保有国が入っていないから」といって、この条約に加わろうとはしていません。首相は「核兵器禁止条約は、核なき世界への出口だ」とも言っています。 しかし、核兵器禁止条約は、出口ではありません。入口です。
核兵器は許されないものだというルールをまず確立し、その上で、核兵器を具体的になくしていくための措置をとっていくべきです。
日本がこの条約に加われば、核保有国やその「傘」の下にある他の国々に大きな影響を与えます。首相は「核保有国を関与させていくことが必要」といいます。日本がこの条約に加わることこそ、核保有国を核廃絶に関与させていく最善の道なのです。
日本が核兵器禁止条約に加わるためのステップ
第1の最初のステップは、締約国会議にオブザーバー参加することです。条約に正式に加わっていない国でもオブザーバー参加はでき、発言することもできます。
日本は必ず参加すべきであると、与野党から声が上がっています。
第2のステップは、日本は核兵器禁止条約に加わることを「めざす」と表明することです。広島選出の岸田首相には、ぜひその表明をしてもらいたいです。
第3のステップは、日本と東アジアの周辺諸国の緊張緩和です。日本が禁止条約に加わることを「めざす」と表明することで、他国の非核化や軍縮を促すことができます。
第4のステップは、条約への署名です。国連総会の際に、首相が署名すべきです。
第5のステップは、条約の批准です。国会でしっかりと議論して、批准承認すなわち国としての正式な法的合意をするべきです。
日本が核兵器禁止条約に
加わるための5つのステップ
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ステップ1 締約国会議にオブザーバー参加する
2025年3月に、次回締約国会議が開催されます
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ステップ2 核兵器禁止条約に加わることを「めざす」と表明する
岸田首相は、少なくともこのような宣言はできるはずです
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ステップ3 東アジアの緊張を緩和する
日本と周辺諸国が、ともに軍備を縮小し信頼を醸成します
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ステップ4 条約に署名する
国連総会の際に、首相が署名すべきです
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ステップ5 条約を批准する
国会でしっかりと審議して、批准(=正式な法的同意)を承認します