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2023年07月26日

2023 NPTレポート1 ― 核不拡散条約(NPT)再検討会議「準備委員会」とは何か

 7月31日から8月11日にかけて、2026年核不拡散条約(NPT)再検討会議の第1回準備委員会がオーストリア・ウィーンにて開催される。それに先立ち、本稿では、そもそも準備委員会とは何かについて、その構造や議論されるテーマ、会議が目指す最終成果などを中心に概説したいと思う。また最後には、7月31日から開催される第1回準備委員会の日程も紹介する。

NPT再検討プロセスと準備委員会[1]

 NPT再検討会議の準備委員会は、5年に1度開催される再検討会議に向けて、その3年前から1年に1度、2週間にわたって開催される。これら3回[2]の準備委員会を踏まえて、NPT締約国は再検討会議を開催し、条約の義務や過去の合意の履行状況および将来の行動計画などについて議論する。3回の準備委員会と再検討会議によって構成されるこの過程は、NPT再検討プロセスと呼ばれている。

 準備委員会では、大きく分けて、会議の規則や進行などに関する手続事項(procedural matters)と条約や過去の合意の履行などに関する実質事項(substantial matters)の2つについて議論および意思決定がなされる
 前者には、例えば、準備委員会および再検討会議における議長の任命[3]や開催日時の決定などが含まれる。第1回準備委員会では、全3回の準備委員会のアジェンダなどが決定される。
 後者については、各国の一般討論の後、3つのクラスターに分かれて議論が行われる。クラスター1では核軍縮や安全の保証などについて、クラスター2では核不拡散や地域問題、非核兵器地帯などについて、クラスター3では原子力の平和的利用やその他の問題についてそれぞれ議論が交わされる[4]
 各クラスターでの議論を終えた後は、最終文書の採択へと移っていく。第1回および第2回準備委員会では、次回の準備委員会に向けて、これまでの議論の内容を総括した「要約(factual summary)」への合意を目指し、第3回準備委員会では再検討会議への「勧告(recommendations)」の採択を目指す[5]。これらがコンセンサスによる合意で採択できなかった場合、議長の裁量によって、要約案あるいは勧告案を議長のワーキング・ペーパーとして提出することができる。

このような構成および流れに基づいて、31日から開催される第1回準備委員会も進行されていく運びとなる。

第1回準備委員会の日程

 今回の第1回準備委員会は、以下のタイムテーブル(現地時間)に沿って進行される予定となっている。

日時アジェンダ
7/31 10am – 1pm開会セッション
7/31 – 8/2一般討論演説
8/2 10am – 1pmNGOステートメント
8/3 – 8/4クラスター1(核軍縮など)
8/7 – 8/8クラスター2(核不拡散など)
8/9 – 8/10クラスター3(原子力の平和的利用など)
8/11最終文書(議長要約を含む)の採択など

 また、準備委員会に先立ち、7月24日から28日にかけて、「再検討プロセスのさらなる強化に関するワーキング・グループ」会合が開催されている。

核兵器廃絶日本NGO連絡会事務局 浅野英男

(PDFはこちら


[1] 以下の解説は、主に、“NPT Review Process: An Explainer” を参照して執筆した。

[2] 通常、第1回準備委員会はオーストリア・ウィーン、第2回準備委員会はスイス・ジュネーブ、第3回準備委員会はアメリカ・ニューヨークで開催される。また、第4回準備委員会が、再検討会議が開催される年に行われる可能性がある。

[3] 議長の選出について、第1回準備委員会は西欧その他諸国グループ(WEOG)、第2回準備委員会は東欧諸国グループ(EEG)、そして第3回準備委員会は非同盟諸国(NAM)がそれぞれ議長を指名する。再検討会議においては、第1回準備委員会の議長が主要委員会Ⅲの議長、第2回の議長が主要委員会Ⅱの議長、第3回の議長が主要委員会Ⅰの議長を務める。また、再検討会議全体の議長はNAMのうち、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、カリブ諸国の間で順番に指名する。

[4] 各クラスターにおいては「特定の課題(specific issues)」について議論する時間が設けられている。なお、再検討会議の場合は3つの主要委員会(Main Committee)とそれぞれの下に設けられる補助機関(Subsidiary Body)という構成になっている。

[5] これまで勧告案が締約国間で合意されたことは一度もなく、議長要約も、2002年以降、採択されたことはない。

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