Campaign News

2024年08月26日

【レポート】国会議員討論会「核兵器廃絶に向けた日本の役割〜核の非人道性を想起して〜」

 8月5日16時から、国会議員による討論会「核兵器廃絶に向けた日本の役割〜核の非人道性を想起して〜」が広島市内で開催されました。核兵器廃絶日本NGO連絡会と核兵器をなくす日本キャンペーンの共催によって開催されたこの討論会には、中満泉国連事務次長、国会より9の政党の代表者、NGO代表として日本被団協の和田征子事務局次長、核兵器をなくす日本キャンペーン事務局スタッフの浅野英男さんが参加しました。

 今年3月の国連安保理会合において、国連のグテーレス事務総長は「今日、核戦争のリスクはこの数十年で最高レベルにある」と警告しました。こうした危機迫る国際情勢にあって、広島への原爆投下から79年となる8月6日を前に、核兵器廃絶に向けて日本が果たすべき役割について、以下の3つのテーマに焦点を当て、議論が行われました。

  1. 核不拡散条約(NPT)再検討プロセス―第2回準備委員会(7.22~8.2)の評価と今後の課題
  2. 核兵器禁止条約―第3回締約国会議(2024年3月)に向けて
  3. 被爆80周年に向けた課題

 核兵器廃絶日本NGO連絡会の川崎哲共同代表(ピースボート共同代表/ICAN国際運営委員)の司会で行われた討論会では、上記3つのテーマをめぐり各党から活発な意見が出されました。なお、今回の討論会の一部では非公開での意見交換が行われました。以下、討論会の概要です(討論会公開部分のアーカイブはこちら)。

中満泉(国連事務次長・軍縮担当上級代表)

 2026年核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けた第2回準備委員会では、NPT体制を維持しなければならない、これ以上の弱体化はどの締約国にとっても利益にならないという認識が共有されていた。現在の核リスクは、冷戦ピーク時と同程度のものであり、非常に強い懸念を持っている。NPTはこうしたリスクを回避するために重要な国際会議の場であるが、そこでの議論の雰囲気は停滞気味であり、締約国間の意見の対立はますます深まっている。さらに、(今回の準備委員会では)過去の合意文書の文言を弱めるような発言も出ている。NPTの信頼性がこれ以上損なわれないよう、2026年の再検討会議までに舵を切り直さなければならない。

 来年の3月には、核兵器禁止条約第3回締約国会議がニューヨークで開催される。この間、同条約の普遍性、核軍縮とジェンダー、NPTとの補完性など、様々な視点から活発な議論が進められてきた。核兵器禁止条約によって生まれている国際的な核軍縮の追い風をどのようにしてNPTにも活かしていけるかが問われている。核軍縮を進めることは厳しいと諦めるシニシズム(冷笑的な態度)ではなく、今のような状況だからこそ、各国にはこれまで以上に努力を積み重ねてほしいと思う。

浅野英男(核兵器をなくす日本キャンペーン事務局スタッフ)

 7月22日から開催されたNPT第2回準備委員会では、2週間にわたる会議の結果、議長総括が作業文書として提出された。とはいえ、核兵器国間には核軍縮に向けたアプローチについて大きな溝が存在しているように見受けられた。核兵器禁止条約の締約国は、核兵器のあらゆる脅威とその高まりを指摘し、核軍縮の停滞を何度も強調した。

 それを踏まえて、日本として検討すべき項目を2つ挙げたい。まず、どのように「核兵器国間の橋渡し」を するかである。現在、核兵器国による核軍拡が加速しており、それは日本の安全保障という観点からも最重要課題である。このままだと2026年には米ロの新START条約が失効し、中国は同様の核軍備管理条約に入っていない。包括的核実験禁止条約(CTBT)発効や核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)交渉開始の促進はとても重要な取り組みだが、その実現にはかなりの時間を要するだろう。時間的猶予のない状況を考えると、そのような取り組みと並行し、あるいはそれよりも優先させる形で、核兵器国間の橋渡しを日本の核軍縮外交の柱として掲げ、具体的な取り組みの検討を進めるべきではないだろうか。核兵器数の減少傾向の維持という日本政府のコミットメントを口だけでなく、現実のものにしていく必要がある。

 2点目に、核兵器禁止条約にどう建設的に関わっていくのかである。NPTでの核軍縮が困難を極めている中、それをどのように打破していくのかを模索するのと同時に、核兵器禁止条約における核軍縮の取り組みを推進し、そのモメンタムをどうNPTに繋げていくかを考えなければならない。また、条約への参加とは関係なく、核被害者援助・環境修復の取り組みに協力することも可能なはずである。こうした具体的な関わり方を議論していく中で、核兵器禁止条約の第3回締約締約国会議にオブザーバー参加する意義も見えてくるのではないだろうか。

 来年の被爆80年に向かって政治と市民の手で、ヒロシマ・ナガサキは何があっても繰り返させない、そして核兵器のない世界に向けた時代の転換点を生み出していきたい。(発言全文および配布資料はこちら)。

猪口邦子(自由民主党・国際軍縮促進議員連盟会長)

 日本は核軍縮・不拡散の旗手であり続ける責任がある。日本政府は、核兵器国と非核兵器国の橋渡し役として、「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議を主催してきた。そこには核保有国からの参加者もおり、絶対に核兵器を使うべきではないこと、NPTは堅持すべきであることを確認した。今回(NPT第2回準備委員会で)採択された議長総括を第3回準備委員会に繋げなければならない。今回の総括には、我が国が掲げているFMCTについての内容も多く入っている。その点についても皆様と議論していきたい。

山口那津男(公明党・党代表)

 核をめぐる状況は一層厳しさを増しており、核兵器数の減少傾向が逆転しかねない状況であることを憂慮している。NPT第2回準備委員会では、議長総括が発表された。核保有国に対して核戦力の透明性を高めることや北朝鮮の核ミサイル開発に対する懸念が示された点を評価する。公明党は、核抑止に代わる新たな安全保障政策のあり方や核兵器の先制不使用の誓約の議論がなされていくことを求めている。2026年のNPT再検討会議では成果文書が合意されるよう、政府には外交努力を尽くしてもらいたい。

 核兵器禁止条約について、公明党は、核廃絶の国際機関を確立しようとするものとして評価しており、唯一の戦争被爆国として政府は来年の第3回締約国会議にオブザーバー参加すべきだと考える。我が党として、第3回締約国会議にも党議員を派遣することを検討したい。昨年、日本は核被害者援助・環境修復に関する国連決議に賛同しているが、核兵器禁止条約でもそうした取り組みが期待されている。来年は、被爆・戦後80年、そして国連創設80年という節目の年となる。若い世代を含む世界のリーダーに被爆の実相に触れてもらうことは重要である。公明党は今般発足した「核兵器をなくす日本キャンペーン」をはじめ、幅広い関係者と力を合わせ、平和創出の取り組みを推進していく。核兵器不使用の記録を継続させ、「核のない世界」の実現に邁進する決意である。

福山哲郎(立憲民主党・党元幹事長)

 残念ながら核を巡る国際情勢は悪化している。核の威嚇や使用などはあってはならない。東アジアの情勢についても、北朝鮮とロシアの急接近や中国の不透明な核軍拡を含め、不確実性が高まっている。こうした状況の中で、核抑止体制の強化を議論すべきという声も大きくなっている。しかし、相互不信のエスカレーションを避けるためにも、唯一の戦争被爆国である日本が忍耐強く「核兵器のない世界」に向けて行動する責任がある。まずは、核兵器禁止条約について、日本がオブザーバー参加をするべきである。NATO加盟国のドイツやノルウェー、アメリカの同盟国であるオーストラリアもオブザーバー参加をしている。日本政府にオブザーバー参加を強く求めていきたい。

 NPT第2回準備委員会で議長総括が採択されたことについて、一定の評価をするが、一方でそれぞれの締約国の考えの違いも明らかになっている。2026年までこの交渉は油断を許さない。核兵器の先制不使用、透明性の向上、FMCTの早期交渉の開始等々、論点は多岐にわたっている。日本政府には、来年の核兵器禁止条約第3回締約国会議、被爆80周年を含め、国際的なモメンタムを上げていくことによって、2026年のNPT再検討会議につなげていく努力をしていただきたい。核兵器禁止条約を入り口として、何らかの突破口を作っていくという考え方も重要であると思う。まずは日本にオブザーバーとして来年の締約国会議に参加していただきたい。

小野泰輔(日本維新の会)

 NPT第2回準備委員会の議長総括が残せたことは、各国が対話の環境を作ろうしている現れだと感じた。そうした中で日本が果たすべき役割は大きい。岸田総理も昨年のG7広島サミットや賢人会議など、あらゆる場面で核軍縮を進めている。核兵器禁止条約を出口ではなく、ツールとして活かすことを日本こそ諦めずにやらなければいけない。我が党としては、多くの国が拡大抑止に頼らざるを得ない現状と「核兵器のない世界」を実現していくことは両立すると思う。そうした合意形成をまず日本の中で行っていき、日本だからこそできることをやっていければと思う。

田村智子(日本共産党・党委員長)

 核兵器が使われるのではないかという不安が世界に広がっているなか、核抑止力論を見直し、核兵器禁止条約への参加を真剣に検討するということが日本に求められている。この点、日米閣僚級会合で拡大抑止、米の核抑止力を日米一体で強化する議論が行われたことは極めて重大である。日本が、核兵器の先制使用も否定しないアメリカとともに、核戦争の恐怖を突きつけることは絶対にすべきでない。唯一の戦争被爆国として、核兵器の非人道性を世界に全力で訴え、核抑止力論の呪縛を断ち切ることを求めたい。

 核兵器禁止条約への参加について、第6・7条に基づく被爆者や核実験被害者への援助、汚染された地域の環境修復のための取り組みが既に開始されており、日本が協力するか否かが問われている。第3回締約国会議にオブザーバー参加し、協力を開始し、条約の批准に向かうことを強く求める。

 NPTについては、第6条の核軍縮交渉の義務が棚上げされ続けていることが最大の問題である。日本政府はNPTを「核兵器のない世界」への礎石として位置づけており、第6条の義務を果たすよう核兵器国に迫る外交を求める。

玉木雄一郎(国民民主党・党代表)

 NPTをもう一回見直し、その重要性を確認すべきだと思う。特に、NPTの第6条は核兵器国に課されている義務であり、そのことを再検討会議や準備委員会で繰り返し再確認することが重要だと思う。そこで日本が具体的にどのようなイニシアティブを発揮できるかを検討し、取り組むべきである。その意味では、準備委員会で議長総括がまとまったことは半歩前進だと思う。

 また、我が国としてはG7で出した広島ビジョンをフォローアップし、核兵器不使用の継続を図っていくべきである。核保有国・非保有国の間のみならず、核保有国の間での分断も進んでいるため、その橋渡しを日本がやっていくべきだろう。最後に賢人会議などで指摘されたAIと核の問題についても、日本がイニシアチブを発揮して、規制を入れていくことが大事である。核兵器禁止条約については、日本がオブザーバーとして出席して、被爆の実相を伝えることと同時に、合意が得られやすい被害者援助・環境修復について発言することが重要だ。

櫛淵万里(れいわ新選組・共同代表)

 核兵器の力を背景に世界では戦争や虐殺が続いており、このような時に、被爆者の方々とともに、核廃絶について日本の役割を議論することはとても貴重な機会だと思う。NPT第6条で確認された核軍備撤廃の義務を誠実に履行することをすべての核保有国に求める。加えて、核の先制不使用の政策に少なくとも日本は賛同しなければならない。

 しかし、岸田総理が口にしている核廃絶とは逆行する形で、核抑止政策が強化されている。アメリカの核兵器への(日本の)依存はかつてないレベルで高まっている。周辺国との緊張が高まっている東アジアにあって、それがさらに軍拡競争を煽れば、何らかの偶発的衝突から破滅的事態に至り、核戦争に直結しかねない。

 昨年の核兵器禁止条約第2回締約国会議では、核抑止論は安全保障政策として正当化できない。国際的な緊張を悪化させ、核の拡散リスクを危険なほどに高めている、という画期的な政治宣言が採択された。さらに注目すべきは、核に頼らない安全保障に転換していくための協議プロセスが始まっていることである。唯一の戦争被爆国として、ヒロシマ・ナガサキの被爆の実相を伝えることはもちろん、核の非人道性の認識を現在の安全保障政策に反映させていく重要かつ必要な転換期にある。そのためにも来年3月に開催される締約国会議に日本政府は、少なくともオブザーバー参加すべきである。

齋藤アレックス(教育無償化を実現する会・政調会長)

 「核兵器のない世界」の実現に向けて重要なことは、核兵器が使われない状態を継続させるための具体的な取り組みである。そのために、NPT体制の正常化や新START後継条約の交渉を核保有国に粘り強く働きかけていくことが重要だ。そもそもNPT体制は、核兵器の拡散を防ぐため、5か国のみに核保有を認めるという不平等な条約であり、その体制を維持することは核兵器国の利益に繋がっている。だからこそ、ロシアが核で威嚇するような言動は特に非難されるべきである。ウクライナ戦争と切り離してでも、核を使用させないための管理体制を再構築することについて議論する必要があると思う。

 また、今日の国際情勢において核抑止が必要であると認めることと、将来的な核廃絶を目指すことは矛盾するものではない。日本政府には、核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバー参加し、核兵器を持たない国々と連帯して核保有国に圧力をかけ、核軍備管理・軍縮を推進していくよう求めたい。核が一度でも使われることになれば、核兵器が通常兵器のように使用される世界になりかねない。そのような世界では人類文明も存続できないことを、私たち日本人はよく理解している。世界中の人たちにヒロシマ・ナガサキの被爆体験を知ってもらうことを通じて、核兵器が生み出す地獄のような惨状を現実の危機として認識してもらい、核廃絶に向けた国際世論を喚起していくことが有効だ。被爆者の高齢化が進むなか、私たちがこれまで生の声で伺ってきた被爆体験を後世にしっかりと残していく取り組みを国として力強く支援することを求める。

福島みずほ(社会民主党・党首)

 核使用をちらつかせる発言や広島・長崎への原爆投下の正当化、核武装論や核共有論が広がっていることに大きな懸念を持っている。だからこそ核兵器禁止条約は重要であり、核抑止論を乗り越えていく必要がある。

 日本は核兵器禁止条約を批准し、せめて来年の3月にはオブザーバー参加すべきである。ドイツ、ベルギー、ノルウェー、オーストラリアなどがオブザーバー参加をしている。ドイツは核実験被害者らへの国際的な援助に取り組もうとしており、日本こそやるべき課題であると思う。

 また、核抑止論は虚構であり危険である。核兵器禁止条約の締約国会議では、安全保障上の政策として核抑止が実施されることは核不拡散を損ない、核軍縮に向けた前進も妨害している、との議論があった。核兵器使用の可能性がある核抑止論は、まさに核被害者を冒涜している。

 日本政治の転換が必要である。日本社会では核の非人道性が共有されているにも関わらず、政治が動かない。社民党は、2001年に北東アジアにおける非核安全保障構想を発表している。東アジアで緊張を緩和し、非核化を目指すべく日本の政治は努力すべきではないだろうか。

和田征子(被爆者代表・日本原水爆被害者団体協議会事務局次長)

 この討論会には「核の非人道性を想起して」という副題がついている。私たち被爆者が想起することは、被爆の体験である。原爆投下後、言葉で言い表すことのできない被害がアメリカと日本政府によって隠蔽されたために、被爆者は自分の悲しみや苦しみ、そして病気の原因が何であるかも知らされることなく捨て置かれた。何の支援も得ることなく、9年間、身を隠すような生活を強いられた。生き残ったという罪悪感、蘇ってくるあの時の光景、人々の苦しみの声、病気、貧困、諦めた多くの夢、そして差別や偏見の中で生きることを余儀なくされた者もいる。原水爆禁止世界大会が開かれ、被爆者が表に出て、やっと声を上げられる時が来た。原爆投下から11年目の日本被団協の設立声明・世界への挨拶の中で私たちは「自分たちの体験を通して、自らを救うとともに人類の危機を救おう」と誓った。それ以来、被爆者は、核兵器廃絶を願い、国内外に訴え続けている。

 原爆投下から79年が経った。今まで幸いなことに核兵器が使用されることはなかった。日本政府は、この不使用の歴史を伸ばすことが大事であると発言している。しかし、使わない危険なものを持ち続けることが国を守る安全保障政策だろうか。核兵器国が「核戦争に勝者はなく、決して戦われてはならない」という声明を発表した。この5カ国がいつ話し合いをしたのだろうかと驚き、そして安堵感を覚えたことを思い出す。しかし、その2月、ロシアのウクライナ侵攻が始まった。プーチン大統領の核使用をほのめかす発言もあった。国の指導者としての誇り、倫理観はどこにあるのか。恐ろしく、悲しく思った。広島・長崎のあの非人道的結末が繰り返されるのかという恐怖だった。

 これまでの討論会での議論の通り、核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加については、与党からも重要だとの合意がある。また、NPTと核兵器禁止条約の補完性については、一定の賛同をいただいている。そして、核兵器禁止条約は核兵器廃絶の出口であるという発言は大きな一歩であると思う。これまで何度も外務省と懇談を重ねてきた。しかし、繰り返される返事は、今日も話が出たCTBT、FMCT、賢人会議、ユースのことばかり。政府の回答が(同じことの)繰り返しであることを、私たちは本当に残念に思う。来年3月の締約国会議には必ずオブザーバー参加していただきたい。

 議員の皆様は、国を守る意思決定者(decision maker)である。国の政策を作り、それを実行する皆様にはピースメーカー(peace maker)であっていただきたい。核兵器が使用されたら日本も世界も、そして地球も人類も存続の危機に陥るということを自分のこととして考えてほしい。

非公開討論を終えての総括

猪口邦子

 与党と野党で立場が違うとはいえ、接点もあった。来年のNPT第3回準備委員会、その次にある再検討会議において、NPT強化のために、核兵器禁止条約の中で議論されている被害者援助・環境修復を活かせたらと思う。多くの人が広島を訪れ、資料館も見にいくことで、核兵器の非人道性の発信にも繋げていけたらと思う。本日の討論会の参加者は半分が女性議員で、ジェンダーバランスがとてもいいテーブルだった。色々な思いを受け止めて、与党の一員としてしっかりと努力していきたい。

谷合正明(公明党・党核廃絶推進委員会委員長)

 核兵器をめぐる状況は厳しいということを認識した上で、NPTと核兵器禁止条約について、成功裏に導いていくことが公明党の果たすべき役割だ。自民党とオブザーバー参加に関する立ち位置は違うが、連立政権としての良さを発揮していきたい。来年の被爆80年、国連創設80年という節目の年に向けて、公明党には広島県、長崎県、沖縄県それぞれに平和に関する委員会があるので、地方議員、地方自治体、さらにNGOと協力しながら活動を活性化させていきたい。

福山哲郎

 厳しい安全保障環境の中でも、核廃絶への思いを持ち続けることが大事だと皆さんと確認できたのは良かった。核被害者援助・環境修復について、日本が核兵器禁止条約にオブザーバー参加することで貢献できるということが確認できた。日本被団協の歩みや原発の事故の知見なども含めて、日本は充分に貢献できるので、オブザーバー参加して、役割を果たすべきだ。

小野泰輔

 核兵器禁止条約で議論される被害者援助・環境修復を、核保有国を含めたNPTの場で議論していく意義は非常に大きい。核兵器禁止条約締約国会議への議員の参加など、与野党一丸となって、引き続き頑張っていきたい。

田村智子

 核抑止でいいのかという議論が始まったことがとても重要だ。核抑止とは、いざとなればためらわずに核兵器を使用するという恐怖による安全保障だが、これはどうして安全保障になるのか。そして、それがどうして「核兵器のない世界」の実現と両立するのかということは国会でも議論すべきだ。核抑止に対する別の道とは、戦争の心配のない東アジアをつくる外交を選択することだと考えている。核抑止という問題とともに日本がやるべき平和の外交とは何か、核兵器のない世界を目指すためにどういう道を歩むべきなのか、率直な議論を積み重ねていきたい。それが第3回締約国会議にオブザーバー参加し、核兵器禁止条約に参加していくという道を切り開くものになるだろう。

玉木雄一郎

 今日は去年にも増して充実した議論ができた。我々の議論も進化していくことが必要だ。大変厳しい状況にあるからこそ、核保有国も非保有国も入っているNPTの重要性はこれまで以上に増しており、それを確認しなければいけない。特に第6条、核軍縮に向けた誠実交渉義務を改めて確認し、その一環として核兵器禁止条約締約国会議のオブザーバー参加もしていくべきだ。その中で、日本が被爆の実相を伝えるとともに、被害者援助・環境修復の分野について橋渡しができる。AIという新たな課題に対しても、一定の規制を日本が超党派で提案していくこと重要である。

櫛淵万里

 日本がオブザーバー参加するにはどうしたらいいかを議論するなかで、我が国にしかできないことがあるという点に一致できたのではないか。これは、大きな前進だったと思う。拡大抑止をどう乗り越えるか、核抑止論をどう次に展開していくのかという議論がここ広島から始まったのは本当に意義深いと思う。これこそ核兵器禁止条約の真ん中で議論されていることに繋がる話だと思う。北東アジアの非核化に向けた外交努力をもっと日本はすべきである。東アジアは世界でも異常な数の核保有国がひしめき合っているにもかかわらず、安全保障を協議する場もない。最後に、敵の核兵器は悪いけれども、自分の核は良いという理論は成り立たないということを確認したい。昨年の広島サミットの文書でそのような記述が見られたが、やはりそれは世界や東アジアを分断に導いてしまう道だと思う。核そのものを悪とする認識に立って議論を進める事が、来年の被爆80年に向けた政治の取り組みであるべきだと思う。

齋藤アレックス

 日本のすべての政党が「核兵器のない世界」を目指していることに一致できていると確認できた。世論の圧倒的な後押しを受けながら、与野党を超えて取り組んでいきたい。核兵器禁止条約のオブザーバー参加に関しては、なぜ参加をするのか、どういった利点があるのかを丁寧に説明し、国会でも議論していかなければならないと感じた。核兵器が使われる危険性が高まっている中、米ロ間の新START履行の再開、新START継続の議論をするように日本からも働きかけるよう国会でも言っていきたい。

福島みずほ

 1点目に、日本の役割について、橋渡しや核廃絶と言うのであれば、核兵器禁止条約にせめてオブザーバー参加してこそ果たせる役割があることを今日確認できたのではないかと思う。来年の締約国会議の中で、核抑止論についての議論と報告が出ると聞いているので、そこに向けて私たちも議論したらいいし、日本政府もそこにコミットしてほしい。今日はあまり話せなかったが、次回は、軍縮が安全保障になるというテーマについて話したい。

和田征子

 多くの話題が出たけれども、それをぜひ国会で議論していただきたい。超党派の議連を作っていただきたい。日本被団協は、被爆80年に向かって、全党の議員の皆様にアンケートを予定している。それにお答えいただきたい。政策の提言者として、ピースメーカーとしての皆様の働きに託したい。

浅野英男

 来年3月には核兵器禁止条約の第3回締約国会議が開催され、そこでは国会議員フォーラムも開催されると思う。会議に日本政府も、今日来ていただいた政党の代表の皆様も、そして市民社会もいることを目指して一緒に取り組んでいきたい。 

中満泉

 軍縮は安全保障のツールであるということを私の最後の言葉にしたいと思う。私たちは、軍縮をお花畑の理想論としてやってるわけではない。安全保障というのは、そもそも適切な防衛力にプラスして、外交と軍縮・軍備管理・不拡散のさまざまな取り組みのセットが必要である。

 キューバ危機は、おそらく、人類社会が全面核戦争の最も近くまでいった歴史上の瞬間だが、そこで危機感を共有できた政治指導者が、その後、外交と対話を通じて、1年経たないうちに部分的核実験禁止条約を締結することができた。それは、軍縮・軍備管理が安全保障のツールであると米ソ両国が理解したからである。これは、危機が好機にもなり得るという非常に重要な歴史上の事例だ。国会議員の先生方には、グランドビジョンを描いて、軍拡ではなく軍縮と平和の方向に舵を切れるようなリーダーシップをぜひ発揮していただきたい。来年の被爆80周年の機会をうまく捉えて、平和に向けたビジョンを提示してほしい。覚悟の表明であるような80周年にぜひしていただきたい。

閉会挨拶

足立修一(核兵器廃絶日本NGO連絡会共同代表)

 本日の議論では、広島・長崎が経験した核の非人道的結末というものが世界的なレベルで認識されるようになったことが核兵器禁止条約の成立に結びつき、核兵器の問題を浮き彫りにしていること。他方で、限られた核保有国しか参加していないことから、日本政府が極めて消極的な態度を取っているということ。そこからをどうやって日本の中での核兵器廃絶に向けた動きを進めるかということ、などについて突っ込んだ議論ができた。特に、核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加やFMCTについて議論が深められた。私どもは、「核兵器をなくす日本キャンペーン」を通じて核兵器廃絶に向けて活動していくが、国会議員の皆様には国会の場で核兵器廃絶をめぐる日本の動き、核兵器禁止条約などへの関わりなどについてぜひ議論していただきたい。

文責:倉本芽美(核兵器をなくす日本キャンペーンインターン)

【参加者一覧】
・中満泉 国連事務次長・軍縮担当上級代表
・猪口 邦子 自由民主党 参議院議員 / 国際軍縮促進議員連盟会長
・山口 那津男 公明党 参議院議員 / 公明党代表
  ※ 山口代表退出後は谷合正明 参議院議員 / 公明党核廃絶推進委員会委員長
・福山 哲郎 立憲民主党 参議院議員 / 立憲民主党元幹事長
・小野泰輔 日本維新の会 衆議院議員
・田村智子 日本共産党 参議院議員 / 日本共産党委員長
・玉木雄一郎 国民民主党 衆議院議員 / 国民民主党代表
・櫛渕万里 れいわ新選組 衆議院議員 / れいわ新選組共同代表
・斎藤アレックス 教育無償化を実現する会 衆議院議員 / 教育無償化を実現する会政調会長
・福島みずほ 社会民主党 参議院議員 / 社会民主党党首
・和田征子 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)事務局次長
・浅野英男 核兵器をなくす日本キャンペーン事務局スタッフ
・(司会)川崎哲 核兵器廃絶日本NGO連絡会共同代表/ICAN国際運営委員

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