NGO News

2012年11月22日

核兵器の非合法化をめぐり、外務省と意見交換会を行いました

11月21日(水)午後、核兵器廃絶日本NGO連絡会は、日本の核軍縮政策をめぐって外務省と意見交換会を行いました。国連総会第一委員会や来春オスロで開かれる核の非人道性に関する国際会議について議論しました。NGO側は11団体から13名、外務省からは風間政務官や廣瀬審議官らが参加しました。意見交換会で話し合われたことの概要を、以下に紹介します。なお以下の記録メモ(「続きを読む」をクリックしてください)は、核兵器廃絶日本NGO連絡会の文責においてまとめたものです。


風間政務官(左)と吉田軍備管理軍縮課長


会議室の全体風景

外務省とNGOの意見交換会の記録メモ

※この記録メモは、核兵器廃絶日本NGO連絡会の文責においてまとめられたものです。マスコミが退出した後の質疑応答、意見交換の様子は、予めNGO側から提出されていた質問項目に対する政府回答の部分以外は、割愛しています。

日時:2012年11月21日(水) 14:00~15:00
場所:外務省共用国際会議室(893号室)
参加者:
外務省
風間大臣政務官、廣瀬軍科部審議官、吉田軍備管理軍縮課長、谷内軍備管理軍縮課首席事務官、西田軍縮・不拡散専門官、長島軍備管理軍縮課事務官
NGO
阿久根 武志  世界連邦運動協会
柏原登希子  ふぇみん婦人民主クラブ
片岡栄子  ふぇみん婦人民主クラブ
金生英道  原水爆禁止日本国民会議
河合公明  創価学会平和委員会
川崎哲  ピースボート
田崎昇  核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員会
田中煕巳  日本原水爆被害者団体協議会
内藤雅義  日本反核法律家協会
永井忠  創価学会平和委員会
前川史郎  原水爆禁止日本協議会
森瀧春子  核兵器廃絶をめざすヒロシマの会
湯浅一郎  ピースデポ

★NGO連絡会による事前提出の質問書はこちら

★話題となっている国連総会での核の非人道性・非合法化に関する共同声明はこちら

風間政務官の回答(主に質問1に対する回答)
御提起いただいた内容について、お答えさせていただく。特に重要なところについては、個人の考え方も踏まえて自分自身の言葉で回答させていただく。その他の部分については、他の担当者から回答させていただく。

今年、核軍縮決議案が圧倒的多数で採択された。今回はイギリスが16年ぶりに共同提案国に入った。共同提案国の数は過去最多。同時に決議案全体の棄権を減らし、賛成を増やせた。このことは我が国の軍縮・不拡散の取り組みが核兵器国を含む国際社会から着実に支持を得ていることを示す。

その他の注目すべきものとしては、FMCT、多国間核軍縮交渉、核軍縮ハイレベル会合など、様々な核軍縮・不拡散の会合を設ける決議が採択された。ATTの決議案も採択された。我が国も積極的に取り組んでいく。

共同声明について、先日参議院の行政監視委員会において公明党の谷合議員からの質問を受けて答弁した。榛葉副大臣も記者会見で同様のことを述べた。
共同声明の拒否理由としては、我が国の安全保障政策の考え方と必ずしも合致した内容が含まれていたというのが、国会答弁や記者会見での答え。

ここからは自分の考え方を踏まえて話をする。
共同声明の中の核兵器の非人道性については、日本政府も認識は一致している。
自分自身も終戦記念日を迎えるころには、とりわけNHK等で放映される核に関する企画はすべて見るようにしている。
原爆被害を訴えるパネル展等にも一市民、一個人、一日本人として参加してきた。
政治家としての私の思いは、この核兵器の惨禍をあらゆる地域で二度と起こしてはならない。いかなる状況においても使用を阻止しなければならないというもの。

そのうえでどういう手段で核兵器の使用を防ぐかが問題である。
第二次世界大戦以降、核保有国・非核国において、それぞれの国の首脳が知恵を絞ってきた。
冷戦期間中、アメリカ、ソ連はMAD(相互確証破壊)の概念に結果的に則っとり、核兵器は使用されずにきた。冷戦終結後、ソ連が解体され、他の核保有国も生まれてきた。MADが必ずしもすべての核保有国間で合意されない中で、核保有国の核使用をいかに防ぐかが今日の課題であると思う。

防ぐアプローチがいくつかある。
1つは非合法化のアプローチである。これは法律的アプローチであると考えている。
もう1つは、MADの延長線上にあるアプローチであるが、核保有国にとっては自国を攻撃する可能性のある国に対して核兵器を使用する意志を顕在的、潜在的に日常から示すアプローチである。
この2つのアプローチが世界にある。

日本の場合はどうかというと、私としては二度と我が国で核兵器が使用されない確実なアプローチをとりたい。それは何か。外交の手段を駆使してのアプローチになるかと思う。現状は、米国による核の傘のもとにいるアプローチが一般的な考え方である。

仮に非合法化のアプローチをとった場合、日本をはじめとする世界各国で絶対に核兵器が使用されないという保証があるかというと、若干の不安がある。国際社会において違法行為を取り締まる機関がないからである。核の非合法化が実現した場合にも、公式には核保有国として認められない国で、実際に核を持っている国がいたとしたら、その国が核兵器を絶対に使用しないかというと、そこには一抹の不安がある。
不安を抱いているという状況で日本国民を守れるかが、私の判断の大きな要素として浮かび上がってくる。

広島・長崎のような惨禍を日本・世界で起こさないために、どういったアプローチをとるかといったときに、我が国の判断として、今回の共同声明は核の抑止の否定につながる発想があるように受け止めたので、共同声明には署名しなかった。

これが日本政府としての立場である。これは国、個人によって様々考え方があると思う。皆様と間違いなく一致する見解は、二度と核兵器の惨禍を起こさせてはならないという点である。私も広島・長崎の報道を目にして、本当に悲惨であると感じている。

絶対にこうした惨禍を起こしてはならないと訴えながら、原爆の後遺症で亡くなられた方の存在も報道で目にして心に突き刺さっている。そうした方々の残していかれた思い、今でも後遺症に苦しんでいる方の思いをしっかりと受け止めながら、日本政府として、一つひとつの国際的な共同声明あるいは判断にどういった決断をしていくかが外務省の考え方であり、私の考え方である。

2番目にオスロの会議に向けての取り組みということについて、当然我が国としても参加する。戦争被爆国としての知見、被爆者の方の思いを胸に抱いて積極的にオスロ会議に貢献したい。その他の質問については、担当者から回答させていただく。(ここで風間政務官退出。マスコミも退出)

廣瀬審議官からの質問回答
(1)質問2の回答
核の役割を低減することは、数的な削減とともに、核のない世界の実現のために欠くことのできない取り組みであると考えている。
核兵器の非人道的な惨禍に鑑みても、核兵器は二度と使用されるべきものではなく、この観点からも役割低減は核軍縮において重要な取り組みであると考えている。
こうした点から、外務省としてすべての核保有国に対してNSA(消極的安全保証)の提供など、各国の安全保障政策における核兵器の役割低減に向けた取り組みを求めている。
NPDIにおいても2010年の立ち上げ以来、核兵器の数的削減とともに役割低減を重要な取り組みとしており、来年4月のNPT再検討会議準備委員会においてもNPDIとして役割低減をテーマに作業文書を提出する予定である。

(2)質問3の回答
核兵器禁止条約の交渉開始については核兵器国を含む多くの国が受け入れていない状況のため、こうした国際約束を直ちに要請することは現実的でないため、政府として棄権した。核兵器が現に存在している国際情勢において、核兵器のない平和な世界を実現するためには核兵器国を取り込んだ形で現実的に着実な努力をすることが大事であると考えている。

(3)質問4の回答
この決議案においては、「核兵器のない世界の達成と維持へ向けた多国間の核軍縮交渉を前進させるための提案」を検討するための作業部会の設置を決めている。我が国としては、CDが長年停滞していることを懸念しており、作業部会が多国間の軍縮交渉の前進に資することを期待している。我が国はこれまで繰り返し多国間の軍縮交渉の次なる段階はFMCTであると国際社会において概ね支持があると理解している。その観点からFMCT交渉開始の議論が起こることを期待すると書いているが、これはその他の議題を無視するということではない。包括的な核兵器廃絶についても議論する準備がある。

(4)質問5の回答
風間政務官の回答の中で言及があったため省略

(5)オスロ会議について
具体的にどういう内容が議論されるかについて詳細が分からない。分かった段階で検討したい。

【約30分間の質疑応答、意見交換。割愛】

まとめ
森瀧春子:
今日の話を伺っても日本が共同声明に参加しなかったことは理解できない。核抑止の安全保障政策を否定するものだからだというが、言いくるめられる説得力はない。核兵器がいかに非人道的であると共通の認識があるといわれているが、であるならばあらゆるアプローチを使って核兵器をなくそうとするべきだ。禁止条約をつくっても、それを取り締まる機関がないということを言っていたが、そうであるならば法の無力を標榜されているに等しい。法治社会にあってはならないのではないか。英知を結集して規範にして、そのあとでいかに守らせるかを考えるべきではないか。
オスロ会議については、日本の政府とNGOが協力して進めていってもらいたい。

廣瀬審議官:
立場の違いはあるが、核兵器の非人道性等を訴え続けている思いは同じだと思う。オスロについてもこれから意見交換していきたい。

以上

【報道】
核非合法化 参加国と連携要請(NHK広島、2012.11.21)
「核非合法化」署名を NGO・市民連絡会、外務省に要請(長崎新聞 2012.11.22)

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