「NPT準備委員会に向けた政府(外務省)とNGO・被爆者との意見交換会」「NPT準備委員会に向けた市民の討論会」レポート

7月31日から、オーストリア・ウィーン国連事務局で、2026年NPT再検討会議に向けた第1回準備委員会が開催されました。核兵器廃絶日本NGO連絡会(以下、NGO連絡会)は、7月18日、外務省との意見交換会をもち、要請書を手交しました(要請書はこちら)。意見交換会には、外務省から林美都子軍縮不拡散・科学部審議官、石井良実軍備管理軍縮課長らが、NGO側から11団体11名が参加しました(NGO参加者リストはこちら)。意見交換会終了後、記者会見および「NPT準備委員会に向けた市民の討論会」(アーカイブはこちら)を開催しました。以下、概要をレポートします。【文・写真:玉木友貴・高橋悠太(カクワカ広島)】

要請書を手交する和田さん(右)

意見交換に先立ち、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の和田征子事務局次長(NGO連絡会幹事)が要請書の趣旨説明を行い、手交しました。要請書では、来たるNPT準備委員会に先立ち、日本政府が取り組むべきこととして、次の5項目を要請しました。
①NPT第6条の核軍縮義務の履行を核保有国に求めること、②核兵器の非人道性の重要を改めて表明すること、③核兵器の先制不使用政策をすべての核保有国に奨励すること、④核兵器の材料を生み出す再処理計画について、⑤核兵器禁止条約の意義に触れる見解をNPT準備委において表明すること。

回答する林審議官

その後、林審議官から要請書に対する「総括的回答」がありました。林審議官は、日本は被爆国として、核なき世界実現の責任を有しており、そのために被爆者やNGOとの協力が大切であると認識していると述べました。しかし、岸田首相が述べている通り、核兵器禁止条約は核兵器のない世界への出口に向けた重要な条約だが、核兵器国が参加していないと指摘しました。そのうえで、核兵器国を関与させる必要があり、そのためにヒロシマ・アクション・プランを実施し、実践的な取り組みをすることで、機運を高めていきたい、とする回答がありました。

意見交換会するNGO関係者(左)

続いて、川崎哲ピースボート共同代表およびICAN国際運営委員(核兵器廃絶NGO連絡会共同代表)の進行で、石井良実軍備管理軍縮課長との非公開の意見交換が行われました。

「NPT第6条の核軍縮義務の履行を核保有国に求める」というNGOの要請に対しては、外務省からは、既にヒロシマ・アクション・プランに挙げられているような核軍縮に向けた取り組みをしっかり行っている、との認識が示されました。また「核兵器に頼らない安全保障政策を検討しないのか?」というNGOからの投げかけに対し、外務省からは、現在、関係国との信頼関係がない状態で、今は検討できる段階ではない、との認識が示されました。

発言する和田さん

外務省の見解に対して、日本反核法律家協会の大久保賢一会長(NGO連絡会共同代表)は、「核なき世界を実現したいという想いは政府と我々とで一致しているが、我々にとっては『喫緊の課題』、核兵器に依存している日本政府にとっては『究極の課題』であり、感覚に違いがあるのではないか」と問題提起しました。

討論会の様子

意見交換会の後に、記者会見を兼ねた「NPT準備委員会に向けた市民の討論会」を開催しました。 「市民の討論会」には、外務省との意見交換会の出席者に加え、日本被団協の田中煕巳代表委員(NGO連絡会共同代表)と、大学生の徳田悠希GeNuine共同創設者が登壇しました。進行は、NGO連絡会事務局に関わる大学院生の遠藤あかりさんです。

最初に、ピースボート共同代表およびICAN国際運営委員の川崎哲さんから、意見交換会の概要と受け止めを報告しました。外務省からは「NPTが核軍縮の礎石である」などとする従来通りの説明がなされ、一歩踏み込んだ議論はなかった、というのがNGO連絡会の受け止めです。

こうした外務省の姿勢に対し、川崎哲さんは「核兵器使用のリスクが高まっているという危機感が感じられなかった」とコメントしました。また、日本被団協の和田征子事務局次長は、岸田首相は「核兵器不使用の歴史を継続しなければならない」などとするが、核兵器に依存する安全保障政策をとり、国内外で核被害が生まれている。「被爆者である私たちを蔑ろにしているのではないか」とコメントしました。

発言する高橋さん

また、要請⑤「NPT準備委員会の中で、核兵器禁止条約の意義を認めること」に関しては、外務省は「持ち帰る」と回答しました。これに対しカクワカ広島の高橋悠太共同代表は「核禁条約に関する市民意識の高まりを無視できなくなり、拒否から検討へとフェーズが変わりつつある、と受け止めることもできるのではないか」と前向きな感想を述べました。一方で、事務局の遠藤あかりさんは、「日本政府が、核禁条約を出口としては重要だが、今すぐ批准はできない」との立場を崩さなかった点は残念だったと述べました。

司会進行する遠藤さん

最後に、日本被団協の田中熙巳代表委員は、「当時15歳の少年として戦争を見てきた。戦争は、核兵器使用という最悪のシナリオにつながりうること常に想定しなければならない」と訴えました。そして「市民が紛争や平和を自分たちの問題として議論をしていくことが必要だ。そして、その議論を直接政治家にぶつけよう」と発言し、そのための『日本キャンペーン』を立ち上げることなどを紹介しました。

以上

意見交換会および、共同記者会見の様子は、以下のメディアで取り上げられました。
NHK「『核軍縮に向け交渉継続』政府は核保有国に働きかけを」(2023年7月18日)
NHK「被爆者団体など “核保有国への核軍縮交渉継続を” 政府に要請」(2023年7月18日)
共同通信「核軍縮、保有国に要求を NPT準備委控え被爆者ら」(2023年7月18日)
中国新聞「『核禁条約 意義に触れて』NPT準備委月末開幕 被爆者ら、国に要請」(2023年7月19日)