【2024NPTレポート】NGOセッション ー 国内・海外NGOからの共同提言
7月23日(火)、スイス・ジュネーブ国連事務局で開催されている2026年核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けた第2回準備委員会にて、NGOによる意見表明(NGOセッション)が行われました。
以下では、アメリカのNGOである軍備管理協会(Arms Control Association)が、国内外の50以上の市民団体および専門家を代表して発言した共同声明(全文はこちら)を紹介します。
「軍縮の行き詰まりを打破し、第6条の軍縮義務を実施するために」と題した共同声明は、冒頭で「NPTの核兵器5カ国は、この10年以上、軍縮に取り組まず、NPT第6条の重要な約束を守らず、毎年数百億ドルを費やして核兵器の近代化や改良を行い、場合によっては、核兵器を無期限に保有するつもりであるかのように、核戦力を拡大している」と核兵器国を批判しました。
また、「今日、非核兵器国は核兵器禁止条約を含め、核軍縮を推進するために積極的に関与しているが、核兵器国同士の真剣な対話は見られない。核の危険は増大している。NPTのどの核兵器国も、NPTの軍縮義務を果たしていると主張することはできない。その結果、NPT体制の存続と世界の平和と安全が深刻な危機にさらされている」と強調。米ロおよび米中間での軍備管理交渉や対話の欠如をはじめ、軍縮の低迷と新たな軍拡競争のリスクに対する懸念を示し、「NPT体制を修復し、新たな核軍拡競争、あるいはそれ以上の事態を回避するためには、今こそ行動を起こすべき時だ」と呼びかけました。
そして、「世界中の何百万もの声を代表する市民社会」として、「この会議に参加するすべての国の代表団、とりわけNPT核兵器5カ国に対し、NPTにおける軍縮の約束を完全に尊重し、その実施を加速する」こと、「1995年のNPT再検討・延長会議で発表された「核兵器の完全廃絶」を達成するという共同の約束を実施する」ことを求め、2026年のNPT再検討会議に向けて以下の6つの提案をしました。
- 米国とロシアが、直ちに核軍縮・軍備管理の交渉の場に戻り、新STARTの下での義務を完全に履行し、新START条約[1]の期限が切れる前に、核兵器の上限を設定し削減するための新たな取り決めに合意すること。少なくとも、米国とロシアは、自国の核兵器を制限・削減するためのより包括的な枠組み合意や一連の合意を締結できるようになるまで、双方が新STARTの上限である1550発を超える戦略核兵器の配備数を増加させてはならないという単純な二国間合意を締結すること。
また、米国とロシアが戦略核兵器の配備量に上限を設けることに同意し、新たな核軍縮枠組みの交渉に取り組む限り、NPTの他の核兵器国である中国、フランス、英国は、核兵器全体の規模の凍結と核分裂性物質の生産停止を約束すること。
このような取り決めについて、危険な核をめぐる競争を緩和し、米ロ間だけでなく、中国、フランス、英国も巻き込んだ、より集中的で広範な軍備管理・軍縮交渉の場を創出するだろう、とも述べました。 - NPTの核兵器国5カ国すべてが、核兵器の使用や使用の威嚇を行わないことを共同で約束し、いかなる理由によっても核兵器を最初に使用しないことに合意するよう、真剣なハイレベル対話を行うこと。
この点について、今年初め、中国の政府高官が核兵器国5カ国は「核兵器の先制不使用に関する条約を交渉し、締結するべきだ」と提案し、中国政府がこのテーマに関するワーキングペーパーを発表したことに注目していること。この考えに対し、米国の高官は4月、「もし彼らが、先制不使用の提案によって提起された多くの疑問について対話を望むのであれば、われわれはそれに応じる」と述べたことにも言及しました。
加えての提案として、NPT核兵器5カ国が、1973年の米ソ核戦争防止協定をどのように更新し、実施し、多国間化するかを検討すること。
この協定は、「国際の平和と安全を危険にさらすような状況において、相手国、相手国の同盟国、その他の国に対する武力による威嚇や武力の行使を行わない」ことを誓約するものであり、「いつでも核戦争の危険がある場合には、(双方は)直ちにこの危険を回避するための緊急協議に入る」ことを求めるものであること。このような対話は、2022年1月にNPTの核兵器5カ国が発表した「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」という共同声明を具体化するための期限を過ぎた方法である、と述べました。
なお、こうした核リスク低減策やその他の核リスク低減策は、核戦争につながりかねない緊張を完全に取り除くことはできず、核抑止政策に内在する危険性を取り除くことも、危険な形の質的・量的核軍拡競争を防ぐこともできない、ことにも留意しました。 - 核兵器使用の威嚇を「許されない」違法なものとして非難すること。
私たちは、一部の核保有国の指導者が最近行った、核兵器を使用する用意があることを強調する威嚇を非難する。核兵器を使用するといういかなる脅しは、いかなる時、いかなる状況下においても極めて危険であり、まったく容認することはできない、と述べました。
また、TPNWは、核兵器に対するタブーを強化し、NPTを強化し、検証可能な形で核兵器数の上限を設定し、削減し、最終的には廃絶するための新たな道筋を作る補完的なアプローチである、とも述べました。 - TPNWの第1回締約国会議が2022年の政治宣言で述べたように、この会議でも「核兵器のいかなる使用や使用の威嚇も、国際連合憲章を含む国際法の違反である」と宣言し、「いかなる核兵器の威嚇も、それが明示的であろうと暗黙的であろうと、またいかなる状況であろうと、明確に非難する」こと。
- 軍縮会議の全メンバーが、核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)と、非核兵器国に対する法的拘束力のある消極的安全保証に関する交渉を可能にする作業計画に合意すること。
これらのテーマやその他のテーマに関する補助機関を設置するという6月14日の決定は、十分とはいえないが、前向きで、小さな前進であったこと、にも言及しました。 - 事実上存在している核実験モラトリアムへの支持を共同で再確認するとともに、残りの9つのNPT未批准国に対し、2026年のNPT再検討会議までに包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准するための具体的な行動をとるよう求めること。このようなNPT核兵器5カ国によるCTBT支持の声明は、2016年9月の国連安全保障理事会決議2310という形で発表されたのが最後である。それまでの間、NPT締約国は核兵器国に対して、核実験再開の脅威を控えるよう要求し、核実験場跡地で現在行われている核実験がゼロ・イールドのもので、CTBTに完全に適合しているという信頼を築くための新たな技術的措置に合意するよう積極的に働きかけること。
以上の提案を踏まえ、共同声明の最後には、「これらの軍縮目標やその他の軍縮目標を前進させるための努力は、この会議の後も継続し、国連総会、国連安全保障理事会、そして二国間や多国間の最高レベルでの会議、さらにはそれ以外の場でも追求されなければならない」と述べ、外交を通じて、より安全な、核なき世界の実現を呼びかけました。
軍備管理協会リサーチアシスタント 倉光静都香
[1] 同条約は米露の戦略核兵器の配備上限数を1,550発とする条約で、2026年の2月に失効する予定である。失効後の新たな核軍備管理の交渉は未だに開始されておらず、多くの国が懸念を表明している。