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2019年05月01日

【2020年NPT再検討会議・第3回準備委員会②】一般討論が始まりました

4月29日(月)午前10時(現地時間)、2020年核不拡散条約再検討会議・第3回準備委員会がニューヨークの国連本部で開幕しました。会場となっているのは、信託統治理事会の会議場です。

議長には、国際連合マレーシア政府代表部のサイード・ハスリン(Syed Mohamad Hasrin Syed Hussin)大使が選任されました。同議長は開会のスピーチで、2020年のNPT再検討会議が、同条約の発効50年、さらには無期限延長25周年にあたることに言及しました。また、全ての出席者に対して、お互いに話し合うよう求めました。そして、全ての利害関係者が同条約を支えることに期待を寄せました。さらに、今週の金曜日には、2020年NPT再検討会議に向けた勧告のドラフトをまとめたいと述べました。

サイード・ハスリン議長の発言

中満泉・国連軍縮担当上級代表は、安定や信頼性を促進する対話の減少や核兵器の価値が強調されるといった国際環境の悪化を指摘したうえで、今期の準備委員会を信頼と確信を回復するための機会として欲しいという希望を表明しました。さらに、NPTの誕生を導き、不拡散体制の礎石や核軍縮の重要な基礎としてだけでなく、国際安全保障の柱となってきた協力の習慣を回復するプロセスの開始に期待を寄せました。そのためには、妥協と柔軟性の精神、高度の忍耐力、さらには直接関係のない問題に捕らわれることなく、この条約の実質的な問題について取り組もうとする意思が必要であると指摘しました。

中満上級代表の発言

続いて一般討論が始まりました。すべてをカバーすることはできないので、核軍縮に関連して、特に筆者の関心を引いたいくつかの発言について、核兵器国、その核兵器に依存する国、非核兵器国の順に、概要をお伝えします。

― 核兵器国 ―

【アメリカ】

・核不拡散の約束なくして核軍縮はあり得ない。核不拡散と核軍縮の双方の両立が、NPTの共通の利益である。

・アメリカは、安全かつ持続可能な形で、核兵器のない未来へと前進することを阻害しない環境を築くための、「新しい対話」を模索している。

・冷戦後、アメリカは核弾頭の88%を削減することに成功したように、核軍縮の成否は緊張緩和と信頼醸成にある。当時の条件が失われてしまった今、新しい軍縮の言説の構築が必要である。

・こうした核軍縮のための環境作りは、すべての締約国がNPT第6条の軍縮義務を履行するために必要なことであり、アメリカはそれを推進する。

アメリカの発言

【ロシア】

・ロシアは、新START条約が、中距離核戦略全廃条約(INF)と同じ運命を辿ることを望まない。ロシアは、繰り返しこの条約の更新を主張してきた。

・ロシアは各国と協力して、朝鮮半島での永続的な平和の確立と非核化を促進するための行動計画を策定している。

・2018年12月の国連総会決議により開催される中東非大量破壊兵器地帯(WMDFZ)ための会議に、ロシアは参加する。

ロシアの発言

【中国】

・中国は、核軍拡競争に参加したことはないし、今後も参加しない。他国に核配備をしたこともなければ、核の傘を提供したこともない。

・核兵器国は、先制攻撃を核心に据えた核抑止政策を放棄するべきである。それが非核兵器国と非核地帯に対する安全の保証である。

・核戦争に勝者はない。それは、人類にとっての超えてはならない一線である。

中国の発言

― 核兵器依存国 ―

【日本】

・核兵器廃絶を求め原爆の実相を世界に伝えるために被爆証言を続けてきた被爆者の努力に感謝する。

・国民の生命と財産を守るのは政府の責任であり、日本は、核軍縮と安全保障を同時に求めていく。

・日本は2017年、「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」を立ち上げた。同会議は、2020年NPT再検討会議へ向けた国際社会の努力を呼びかける「京都アピール」を発表した。

・日本は、2018年5月に発表された国連事務総長の軍縮アジェンダを支持する。特に、青年こそが世界変革の力であるという点について、市民社会とのパートナーシップをさらに強め、軍縮・不拡散教育を通じて、次世代の人々に核爆発に関連する安全保障上の懸念と危険性について意識の啓発を行う。

日本の発言

【EU(欧州連合)】

・EUは、新STARTを国際およびヨーロッパの安全保障にとって非常に重要なものととらえており、米国とロシアは、新STARTの更新と延長をするべきである。

・米国とロシアに対して、戦略および非戦略、配備および非配備を含む核兵器のさらなる削減を求める。

・核軍縮と不拡散プロセスにおける、ジェンダーの平等は不可欠の要素である。

EUの発言

― 非核兵器国 ―

【カザフスタン】

・核兵器国による核軍縮義務の明らかな不履行が、核兵器禁止条約に繋がった。

・全ての締約国に対し、核兵器禁止条約の早期発効のために、同条約に署名、批准することを求める。

カザフスタンの発言

【ラテンアメリカ・カリブ海核兵器禁止機構(OPANAL)】

・核兵器の使用およびその威嚇は、国連憲章および国際人道法を含む国際法に違反し、人道に対する罪を構成する。

OPANALの発言

【南アフリカ】

・1995年、ネルソン・マンデラ大統領は、国連総会における彼の最後の演説で次のように述べました。「我々は、問わなければなりません。非道で恐ろしい大量破壊兵器の廃棄を拒むことを正当化するために精巧で洗練した議論を行ってる人達にはナイーブに聞こえるかも知れないが、なぜそのようなものが必要なのか、と」。

・核弾頭の数的削減は重要だが、核兵器の継続的な近代化は、いまだに破壊のための兵器を制限なく保持しようとしている国があることを示している。こうした動きは、NPTの法的義務と政治的約束に逆行するものである。

・こうした理由から、南アフリカは、核兵器禁止条約の採択を歓迎し、本年2月に同条約を批准した。同条約は、1945年以来、核軍縮における最も重要な進展であると信じ、その早期発効への努力を惜しまない。

・禁止条約は、1995年、2000年、2010年、あるいは2020年のNPT再検討会議における最終文書の履行を妨げるものではないし、また妨げてはならない。

南アフリカの発言

【オーストリア】

・NPTは、その完全な履行と遵守が必要である。核兵器国による、第6条を狭義的に解釈しようとする動きは、NPTにおける各国の信頼を損なうものである。

・核兵器の近代化、核兵器が安全保障のために必要であるとの核兵器国による言説は、NPTに反するものである。

・NPT 締約国に対し、核兵器禁止条約への署名と批准を求める。

筆者は、いくつかの問題意識を持ちながら、議論に耳を傾けています。特に、NPTの締約国、特に核兵器国は、今日もなおNPTを重要な国際レジームとみなしているかという点に注目しています。そうであれば、異なる立場の間に対話の可能性は開かれるからです。その観点で、米国のイニシアティブである Creating an Environment for Nuclear Disarmament (CEND) が、何を意図するものかは興味深いところです。また、先端技術が核抑止論にどのような含意をもち、影響を与えるかという点にも注目しています。核兵器の問題は、冷戦時代の「過去の問題」ではなく、AI時代の「新しい問題」でもありうるからです。この点は、「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」による「京都アピール」と共通の問題意識でもあります。

一般討論は30日も続き、その後、NPTの3本柱である①核軍縮、②不拡散、③原子力の平和利用のクラスターに分かれて議論が繰り広げられます。

文責:河合公明(創価学会平和委員会事務局長)

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