NGO News

2019年05月06日

【2020年NPT再検討会議・第3回準備委員会⑤】「ヒバクシャ・アピール」のサイドイベントが行われました

5月3日、第3回NPT準備委員会のサイドイベントとして、「ヒバクシャ国際署名」主催、PEAC、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会が共催する「ヒバクシャ・アピール」が開催され、国連、NGO、学生、メディア関係者ら約80名が参加しました。本イベントは、5月1日に準備委員会のサイード・ハスリン議長に「ヒバクシャ国際署名」941万人分超が提出されましたが、さらなる世界的な「ヒバクシャ国際署名」の展開をめざす目的で開催されました。

最初に、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)事務局長の木戸季市氏が、5歳のときに長崎で被爆した体験を語りました。「私が見た世界は誰もが予想できない世界で、人類の終わりの地獄でした」と当時の被爆地の様子を語り、「もうこんなことは絶対に起こってはいけない世界」であると述べ、「私たちの命が少なくなってきた今、将来の子ども達に青い地球を残したい」という決意からこの「ヒバクシャ国際署名」を開始したという心境を述べました。

次に、被団協事務局次長の濱住治郎氏は、胎内被爆者として被爆の証言を行いました。原爆によって49歳でなくなった父の思いを振り返り、「父の分まで生きなければいけない。そして核兵器が存在するかぎり被爆者は安心できない」と述べました。胎内被爆者は生まれる前からすでに被爆者であるという苦しみを語り、非人道的な兵器である核兵器を廃絶し、「ふたたび被爆者をつくらせてはいけない」と訴えました。

WCRP国際軍縮シニア・アドバイザーの神谷昌道氏は、今年の8月のドイツにおける第10回WCRP世界大会や来年10月の第9回アジア宗教者平和会議(ACRP)大会などで、世界の宗教者に「ヒバクシャ国際署名」を呼びかけることを誓いました。また、この準備委員会に向けて、核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)日本とWCRP日本委員会が共同提言した核抑止論の再考を求める「核兵器廃絶に向けた共同提言文」について説明をしました。

司会を務めたPEAC代表のレベッカ・アービー氏は、被爆者が被爆者証言をする際の心労の大きさを知ったときに、「私たち若い世代は決して核兵器の恐怖を忘れてはならない、核兵器のない新しい世界をつくらなければならない。まだまだ署名をしていない人がいるので、さらに多くの人に署名を呼びかけたい」と力強く述べました。

その後、核兵器のない世界へ願いを引き継いでいくという意味で、聖火の模型を手渡しながら、各スピーカーが平和への思いを表明しました。木戸氏、濱住氏、神谷氏、レベッカ氏、そしてアワッドさん(14歳)、アボザジオさん(13歳)、広島の庭田杏珠さんと手渡されました。

このイベントでは、フリーディスカッションも行われました。フロアーから被爆者の木戸氏、濱住氏に対して、様々な質問が投げかけられました。印象的であった質疑応答を紹介します。

質問では「原爆投下は戦争を早く終わらせたのではないか?」、「被爆者の方々が、大変な心労で被爆証言を行っているが、時には辞めたくなることはないのでしょうか?」、「街頭署名をお願いしても、なかなか理解してくれない人がいるがどのようにすれば、もっと署名が集まるか?」などが出されました。

これらの質問に対し、木戸氏が回答をしました。以下はその要約です。

「原爆が戦争を終わらせたということを認めることは、戦争を終わらせるために核兵器を使うことを容認することになります。これまで戦後74年間に多くの戦争が起きましたが、原爆が戦争を終わらせたことは一度もありません。原爆には戦争を終わらせる力はありません。」

「被爆者の『ふたたび被爆者をつくならい』という被団協の運動に参加したのは、50歳の時からでした。被団協の運動は自らを救うと共に、人類を救う運動です。今、この運動を通して、自分の生き方を見つけられていることは幸せなことです。」

「運動を展開するには仲間が必要です。私にとって仲間は、現在、一緒に運動を展開している方々でありますが、原爆で亡くなった方々も私の仲間です。この仲間と共に核兵器廃絶をめざしているのです。」

「運動を展開するためには人類の歴史の勉強が必要です。本当に歴史を学ぶことが、平和をつくることになり、それをめざす仲間が増えるのです。皆さん、たくさん学びましょう。」

このような活発なフリーディスカッションを通じて特に心に残りましたのは、出席した若い人達が被爆者の方々に積極的に質問をしている姿でした。その姿からは、被爆者の核兵器なき世界の願いを継承しいきたいという強い意志を感じました。

「ヒバクシャ国際署名」は、国際的に幅広く多くの人々と核兵器なき世界の願いを共有することを意図していますが、このイベントを通じて、被爆者の「ふたたび被爆者をつくならい」という意志を世代間を越えて共有・継承していくことに大切な意義があることを、改めて実感しました。

文責:篠原祥哲(世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会)

このイベントをはじめ、被爆者の木戸さん、濱住さんのニューヨークでの活動が広く報道されています。

NHK広島 2019.5.10 国連で核兵器廃絶訴え 被爆者の活動に密着

共同通信 2019.5.4 被爆者が米国で即時核廃絶訴え 国務省幹部「今はできない」

朝日新聞 2019.5.4 長崎、広島の被爆者が国連内外で核廃絶訴え

NHK 2019.5.4 被爆者 核兵器禁止条約参加求め署名呼びかけ NY国連本部

NHK 2019.5.5 長崎の被爆者がNGO国際会議で核廃絶を呼びか

しんぶん赤旗 2019.5.5 核兵器禁止へ頑張ろう

しんぶん赤旗 2019.5.6 核戦争回避へ各国市民連帯 ニューヨークで国際会議

聖教新聞   2019.5.6   アメリカ・ニューヨークでNPT再検討会議準備会合   SGIの代表が参加 宗教間の共同声明を発表

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