NGO News

2022年08月06日

NPTレポート②:NGOプレゼンテーション

現地時間8月5日15時(日本時間8月6日4時)過ぎ、ニューヨーク国連本部の総会議場にて、各国政府に向けてNGOが意見表明を行う「NGOプレゼンテーション」が行われました。世界各国のNGOから21団体が選ばれ、約5分ずつそれぞれの主張を述べました。ここでは日本と関わりのある5団体と印象に残った2団体のプレゼンテーションを紹介します。

初めに原水協を代表して笠井亮衆院議員が声明を読み上げました。声明では、現在広島で開かれている原水協世界大会の参加者によるNPT再検討会議への要求として、(1)核兵器の使用と使用の威嚇を非難し、「核兵器のない世界」を実現するための道を開くこと、(2)NPT第6条の義務及びこれまでの合意を再確認し、その履行を始めること、(3)国連憲章とNPTを履行するための努力として、核兵器禁止条約を認識、理解、尊重することを求めるとともに、軍事力ではなく外交によって問題を解決するよう呼びかけました。(笠井亮衆院議員のステートメントはこちら

次に、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の和田征子さんがスピーチを行い、自らの長崎での被爆体験を交えつつ、核廃絶への思いを述べました。被爆当時、和田さんは1歳10か月でしたが、母親から原爆投下直後の様子をよく聞いて育ちました。和田さんの家は爆心地から2.9キロ離れていましたが、隣の空き地に多くの遺体が運ばれ、そこで連日遺体が焼かれていました。それから77年が過ぎた今、核保有国と同盟国の不誠実さと傲慢さのために人類全体が核戦争の瀬戸際にあり、そうした危険な状況を認識してほしいと訴えました。最後に、核兵器を作ったのは人類であり、人類はそれを廃絶することもできるはずだという話があり、大きな拍手が送られました。(和田さんのステートメントはこちら

続いて核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の報告として、ウクライナの学生のイェリザベータ・ホドロフスカ(Yelyzaveta Khodorovska)さんがスピーチを行いました。18歳のホドロフスカさんは、残虐行為を行っても、核抑止力を盾にすればロシアは攻撃されず、その結果、ウクライナで多くの人々が殺されていると非難しました。続けて、NPT締約国として、このような核の威嚇を非難し、二度と起こらないようにするよう求めました。最後に、ウクライナと世界の安全な未来、核兵器のない未来を望んでいると述べ、スピーチを締めくくりました。(ホドロフスカさんのステートメントはこちら

平和首長会議を代表して田上富久長崎市長が登壇しました。田上市長は、核保有国を含むすべての国に対して「核兵器は絶対に使用してはならず、核兵器廃絶は人類が核兵器の危険を回避するための唯一の方法である」ことを、これまで以上に確信を持って訴えることができると述べました。また、今回の会議において、締約国が過去の会議での合意を再確認し、核軍縮に向けて誠実に交渉を進めるという第6条の義務を履行し、核軍縮と不拡散を進める具体的な戦略の提案を出すよう求めました。(田上市長のステートメントはこちら

PEAC研究所(PEAC Institute)のレベッカ・アービィー(Rebecca Irby)さんが、非常に印象に残るスピーチをしました。自身がレナペ族の土地出身であることを明かしたうえで、1944年にナバホ族の土地(米国)から採取された大量のウランが、77年前の8月6日に広島に落とされた原爆に使われたことを明らかにしました。広島と長崎への原爆投下の要因として人種差別を挙げ、なぜドイツやイタリアに原爆が落とされなかったのかと問いかけたラングストン・ヒューズ(Langston Hughes)の著作を引き合いに出しました。また、「植民地主義的な大国がすべて核保有国、核の傘の国であることは偶然ではなく、意図的なものである」と述べました。「核分裂性物質が採掘される場所から、核兵器が製造され、実験され、最終的に配備される場所まで、これらの兵器は常に最も弱いコミュニティに悪影響を与えます。会議が何かを達成するためには、疎外された人々、特にヒバクシャ、非西洋人、非白人、同性愛者、障害者、若者といった人々の有意義な参加が必要だと呼びかけました。核兵器は、植民地主義という木の幹から出た枝であり、核兵器廃絶と公平で平和で持続可能な地球社会の実現に向けて、意味のある成果を上げるためには、「植民地主義の木」を根こそぎ倒さなければならないと主張しました。(アーヴィーさんのステートメントはこちら

KNOW NUKES TOKYOの高橋悠太さんとピースボートのベネティック・カブア・マディソン(Benetick Kabua Maddison)さんは、若者から大人に向けた声明を読み上げました。この声明は、世界中の15の若者団体が共同で作成されました。声明では、現在の核レジームは、若い世代が築いたのでも同意したのでもありません。私たちの安全にとって最大の脅威である核兵器について、大人たちは核兵器を増強し続け、私たち全員を危険にさらしているのです。核兵器が存在する限り、すべての戦争は核戦争にエスカレートする危険を伴います。ウクライナ戦争でのロシアの核の威嚇を考えると、この現実がこれほど明白になったことはありません。今こそ行動を起こすべき時であり、現状に満足して無為に時を過ごしている場合ではないのです、と語りました。(高橋さんとマディソンさんのステートメントはこちら

最後に、全国被爆二世団体連絡協議会会長の崎山昇さんのスピーチ動画が流されました。両親が長崎で被爆した崎山さんは膵臓嚢胞を持ち、母親のように膵臓癌になるかもしれないという不安を抱えています。放射線には世代を超えた遺伝的影響があるとされ、自身も核被害者であると強調するとともに、被爆者二世も癌などの病気で亡くなっていることを紹介しました。マーシャル諸島での核実験、チェルノブイリや福島における「原子力の平和利用」など、将来世代への放射線の影響も深刻な人権侵害の1つであると強調するとともに、放射線被害者の人権を認め、核兵器を廃絶するよう訴えました。(崎山さんのスピーチはこちら

NGOプレゼンテーションは予定より早く17時22分に終了しました。新型コロナウイルスが完全に収束していない中で行われたためか、傍聴席を含め参加者は例年よりやや少ないようでした。

ピースデポ 渡辺洋介

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