G7広島サミットに向けた記者会見レポート
核兵器廃絶日本NGO連絡会では、G7サミットに先立ち、核兵器廃絶をめざして活動するNGOや被爆者団体からなる「核兵器廃絶日本NGO連絡会」として、現在の情勢とサミットに向けた課題についてコメントする記者会見を4月11日に行いました。
会見では、4月から5月に核兵器廃絶を求めて開かれる主要行事の概要(一覧はこちら)についても説明しました。以下、記者会見の内容をレポートします。【文責/遠藤あかり】
はじめに、ピースボートおよびICAN国際運営員の川崎哲NGO連絡会共同代表は、岸田政権は日本のメッセージとして核兵器の廃絶を目指すという姿勢であることをメッセージとして発信している。しかし、その掛け声とは裏腹に核兵器の脅威は高まる一方である。このような状況の中、言葉で終わるのではなく、本当に核兵器廃絶につなげるために一歩を踏み出さなければならないと述べました。
続いて核兵器廃絶日本NGO連絡会の共同代表および幹事が順にG7への期待や要望を話しました。
日本原水爆被害者団体協議会(被団協)代表委員の田中熙巳NGO連絡会共同代表は、核兵器の非人道性をもう一度、理解し直すことが必要だろう。抽象的な言葉となっていて、具体的な状況を想像できる状態ではない。若い世代の人道の理解が実質的なものではなくなっている。人間らしさとは何なのか、戦争における人間らしさを考えることはなくなっていると思う。被爆者は、原爆使用の惨状を、身をもって体験した。全ての被爆者が核兵器は非人道だと訴えてきた。核兵器禁止条約はまさにその非人道性に着目して作られた国際法である。核保有国の指導者が広島に来る重要な機会に非人道性への理解を深めてほしいと訴えました。
ヒューマンライツ・ナウ副理事長の伊藤和子NGO連絡会共同代表は、かつてないほど核戦争の危機が高まっている。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、核保有国が核の威嚇の下に侵略戦争を開始した場合、国際社会が侵略者の暴走を止めることがいかに困難かを示してしまった。こうした事態は、核兵器が人類の安全保障にとって脅威でしかないということを誰の目にも明らかにしたと言える。核抑止が平和をつくり、人々の命を守るというのは完全な幻想である。核保有国のリーダーやその傘の下にいる者たちがしっかりとした考えと理性を持って行動しない限り、この危機を打開することはできない。核兵器を使用するというおよそあり得ないシナリオを食い止め、人類の安全保障にとって脅威である核兵器をどう廃絶に向かわせるかがG7首脳に課された課題である。各国首脳たちには広島に訪れ、核兵器の使用の非人道性を含め、核をめぐる安全保障問題について真剣に討議すること、被爆の実相に学んで被爆者の訴えを傾聴するための十分な機会と時間をとること、首脳宣言において核の先制不使用を明確にし、核兵器を速やかに廃絶するためのコミットメントを確認するよう求めました。
カクワカ広島共同代表の高橋悠太NGO連絡会幹事は、G7に集う国々は、核保有国や核に依存する国々であり、彼らが核の威嚇を非難するということは、自己矛盾を抱えていると捉えなければならない。G7において、西側諸国の結束を示すことが、現在の問題解決につながるとは思えない。広島で開催することで、「核兵器廃絶を考えた」という政治的アピールの材料に利用してほしくない。それは岸田首相が述べる「平和へのコミットメント」ではない。社会正義がキーワードだろう。国内外で、権利を踏みにじられてきた人々が立ち上がり、それに連帯する動きが出てきた。Metoo運動も、Black Lives Matter運動もその一例だ。核兵器廃絶運動にもその視点が必要で、多様な取り組みや人々と連帯する必要がある。ヒバクシャや核被害を経験した人たちが声を上げ、広島や長崎の実態と結びつくことによって大きな普遍的な非人道性への認識が出来上がるのではないかと思う。これらのことを含めてG7各国が討議することにより、具体的な成果が出されることを期待したいと述べました。
⽇本原⽔爆被害者団体協議会(⽇本被団協)事務局次長の和田征子NGO連絡会幹事は、核保有国であるアメリカ、フランス、イギリスの首相とNATO加盟国で核共有をしているドイツ、イタリアが広島に集う。核兵器の被害は一国だけの問題ではなく、国境を超える。人の手に負えないものだとわかりながら所有し、使用まで考えるのはなぜか。核兵器は使われてしまったら自国を守るためという名目であっても、自国を失う結果になるのであり、同時に世界を破滅状態にする行為に他ならないということを認識していただきたい。核兵器の使用の結末を知っているのは広島、長崎の被爆者であり、その声を聴く機会を設けてもらいたい。終息のめどが立たない戦争を起こした国を、ただ非難するだけで一致団結して、核兵器を増強する会議には、決して、してはならないことを心から願いますと訴えました。
記者会見の様子は、ページ上のYouTubeよりご覧いただけます。
発言者
大久保賢一*(日本反核法律家協会会長)
川崎哲*(ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員)
伊藤和子*(ヒューマンライツ・ナウ副理事長)
高橋悠太(核政策を知りたい広島若者有権者の会(カクワカ広島)共同代表)
田中煕巳*(日本原水爆被害者団体協議会代表委員)
朝長万左男*(核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員長)
和田征子(日本原水爆被害者団体協議会事務局次長)
渡部朋子(ANT-Hiroshima 理事長)
*は、核兵器廃絶日本NGO連絡会共同代表。無印は、同幹事。
記者会見の様子は、以下の通り報道されています。
共同通信「『核廃絶の具体的成果を』 被爆者ら、G7広島に訴え」(2023年4月11日)
https://www.47news.jp/national/9182460.html
西日本新聞「核廃絶の具体的成果を」(2023年4月11日)https://www.nishinippon.co.jp/item/o/1078639/
北海道新聞「『核廃絶の具体的成果を』 被爆者ら、G7広島に訴え」(2023年4月11日)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/830275
福島民報「『核廃絶の具体的成果を』被爆者ら、G7広島に訴え」(2023年4月11日)https://www.minpo.jp/globalnews/detail/2023041101000799
神戸新聞NEXT「『核廃絶の具体的成果を』被爆者ら、G7広島に訴え」(2023年4月11日)
https://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/202304/0016233517.shtml
東京新聞「核兵器の非人道性、G7首脳は理解を…広島サミットを前にNGOが会見」(2023年4月11日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/243545?rct=politics
長崎放送「『核廃絶への道筋をどう立てるのか』G7広島サミットに向け 国内NGOが記者会見」(2023年4月11日)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/428600
佐賀新聞「『核廃絶の具体的成果を』被爆者ら、G7広島に訴え」(2023年4月11日)
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1018757
愛媛新聞ONLINE 「『核廃絶の具体的成果を』被爆者ら、G7広島に訴え」(2023年4月11日)
https://www.ehime-np.co.jp/article/ky202304090206100042
TBS NEWS DIG「「核廃絶への道筋をどう立てるのか」G7広島サミットに向け 国内NGOが記者会見」(2023年4月11日)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/428600
中国新聞「『核の非人道性 理解を』 NGO連絡会 G7首脳に注文」(2023年4月12日)
https://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=130584