日本提出の核廃絶国連決議案に関する核兵器廃絶日本NGO連絡会の声明
日本政府が今年の国連総会第一委員会に米国などとともに共同提出した核兵器廃絶決議案(A/C.1/77/L.61)は、日本主導の決議案としては初めて、核兵器禁止条約に言及するものとなった。
2017年に国連で核兵器禁止条約が採択されて以来、私たちは日本政府に対してこの条約の意義を認め、条約に署名・批准することを求めてきた。しかし、政府はこれに背を向け続けてきた。こうした中、核兵器禁止条約を「核兵器のない世界への出口といえる重要な条約」と評価する岸田文雄首相の下で、今回初めて同条約への言及がなされたことを、私たちは率直に評価したい。
決議案は、この条約の採択を「認識」し、その発効や第一回締約国会議の開催に「留意」するとしている。先の核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書案の表現をほぼ踏襲したものである。言及が事実関係に留まり、この条約の意義を評価する表現が盛り込まれたなかったことは、残念である。
決議案はまた、前述のNPT最終文書案を踏襲する形で、冷戦期以来の核使用の危険の高まりを憂慮し、核兵器のもたらす壊滅的な人道上の結末を深く憂慮し、核兵器の非人道性の認識が核軍縮努力の基礎になるべきだとし、被爆地訪問や被爆者との交流を含む軍縮教育の促進を求めている。これらは、私たちが日本政府に10月6日に提出した要請内容を反映したものとなっており、評価したい。
一方で、この決議案には、核兵器の先制不使用や役割低減に関する記述がない。核兵器に依存する政策をとる国々がまず取り組むべきこうした課題が無視されたことは遺憾である。日本政府には、自らが核兵器への依存から脱却することを含め、核兵器廃絶に一層努力することを求めたい。政府にはまた、核兵器禁止条約の促進を訴える国連決議案(A/C.1/77/L.17)に賛成投票すること、あるいは少なくとも反対投票はしないことを、改めて求める。
2022年10月28日
核兵器廃絶日本NGO連絡会
共同代表
足立修一 (核兵器廃絶をめざすヒロシマの会代表)
伊藤和子 (ヒューマンライツ・ナウ副理事長)
大久保賢一 (日本反核法律家協会会長)
川崎哲 (ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員)
田中煕巳 (日本原水爆被害者団体協議会代表委員)
朝長万左男 (核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員長)