【2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会①】ICANキャンペイナーズ・ミーティングが開催されました
4月23日から開催される2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会に先立ち4月21日(土)午前10時より、ジュネーブの会議施設であるLa Pastraleで、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)主催によるキャンペイナーズ・ミーティングの第1日が行われました。会場には、世界各地から100名あまりのICANのキャンペイナーが集いました。
開会の全体会では、ベアトリス・フィンICAN事務局長が登壇。昨年の核兵器禁止条約の採択以降、早期発効を目指すキャンペーンは効果的に行われており、これまで大きな成果を得ることができたことを誇りに思う、と述べました。
続いて、今回の会議を共催するノーベル平和賞受賞団体の国際平和ビューロー(IPB)のライナー・ブラウン共同会長が挨拶。核兵器禁止条約が採択された今こそ、その意義をより多くの人々に普及させ、世界は変えられると訴え続けていこう、と呼びかけました。
英国のアクロニム研究所のレベッカ・ジョンソン所長からは、現在の朝鮮半島情勢に関連し、核兵器禁止条約がいかなる役割を果たしうるのかについて議論を深めていくことは、北東アジアの安全保障を考えていく上でも、同条約の普遍化を考えていく上でも、重要な意味を持つとの問題提起がありました。
引き続いてテーマ別の近況報告に移り、禁止条約の署名と批准の状況、人道イニシアチブ、核兵器への投資の禁止、デジタル技術によるキャンペーン、信仰団体(faith communities)による取り組みが報告されました。
午前中の全体会では質疑応答も行われ、キャンペーンを効果的に進めていくための観点から、様々な意見交換が行われました。フィン事務局長は、次の1000日間の取り組みとして、核兵器禁止条約の早期発効とともに、発効に必要な50カ国の批准のみならず、100カ国の批准を目指したいと述べました。
この質疑応答では、筆者も発言の機会を得ました。その際、核の傘という言葉が持つイメージが、核抑止の本質を覆い隠す役割を果たしていることを指摘。核抑止は、核兵器を使用することを前提としていることを分かりやすい言葉で人々に説明していくことが、とりわけ核兵器依存国における運動において重要だと述べました。
午後からは、核兵器保有国、核兵器依存国、禁止条約賛成国のカテゴリーの3つの分科会が行われ、それぞれ核兵器禁止条約の早期発効と普遍化を促すための具体的な取り組みについて議論されました。
筆者は、核兵器依存国における取り組みを議論する分科会に参加しました。そこでは、①議会(議員)に対する働きかけ、②核兵器廃絶運動とは異なる分野の運動との連携、③核兵器禁止条約に反対する立場からの議論への対応についての議論が行われました。
午後6時30分からは、ジュネーブ市長主催のレセプションがアリアナ美術館で行われました。
21日(日)には、キャンペイナーズ・ミーティングの第2日が行われました。午後からは、人権と積極的義務、メディア戦略とメッセージ発信、デジタル・キャンペーンと各団体の運動における相互補強をテーマにした分科会が行われました。筆者にとって、人権と積極的義務に関する分科会の内容は、大変に興味深いものでした。
核兵器禁止条約には、国際人権法への言及があります(前文8項および第6条)。核兵器による攻撃に際し、最も関連性のある人権は生命への権利であり、そのほか非人間的かつ屈辱的な扱いの禁止や、居住の権利と財産権、そして核実験により生じる人権侵害もあります。
核兵器禁止条約と同じように武器貿易条約(2014年発効)にも、人権と関連する規定があります。すなわち同条約の第6条、第7条は、輸送される武器が虐殺、戦争犯罪、人道に対する罪に使用されるとの情報がある場合、または人権を侵害する決定的なリスクが存在する場合において、締約国の武器輸送を禁止しています。
全ての国の人権状況を普遍的に審査する枠組みである国連人権理事会の「普遍的・定期的レビュー」(UPR)を活用して、審査対象国に対し武器貿易条約への批准または加入を呼びかけた国があるという事例も紹介されました。
核兵器禁止条約は国際人権法に言及していますので、武器貿易条約の先例に照らし「普遍的・定期的レビュー」を活用して、禁止条約の署名、批准、履行を呼びかけることが可能になるのではないかという議論です。実際に2017年11月、第28回「普遍的・定期的レビュー」において、グアテマラが11カ国に対し、禁止条約の署名と批准を求めた事例がすでにあるようです。
こうしたアプローチが核兵器禁止条約にも応用できないかという点は、今後、議論していく意味があると考えました。
文責:河合公明(創価学会平和委員会事務局長)