【2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会⑤】米国政府主催のサイドイベントが行われました
4月25日(水)午後1時15分から、米国主催によるサイドイベント「米国の核態勢の見直し(NPR)」が国連ヨーロッパ本部のルーム25で行われました。
ここでは、国務省のクリストファー・フォード核不拡散特別代表、アニータ・フリート次官補が登壇し、国防総省のロバート・スーファー次官補代理、グレゴリー・ウィーバー空軍戦略計画兼政策担当副局長がテレビ電話で参加しました。
フリート次官補は不拡散と軍備管理に関し、米国が悪化する安全保障環境下にあることを指摘。そうした状況下では、抑止の信頼性を示し、もし必要があれば、潜在的な敵の脅威に核兵器で反撃する用意があるという意図を示さなければならないと述べました。
さらに米国は、不拡散・軍備管理に強くコミットする。包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を追求することはないが、CTBT準備委員会(CTBTO)に対する支援は継続する。米国は、NPT第6条の軍縮誠実交渉義務や効果的措置を含め、NPTの全ての義務にコミットしてきた。米国が長年、NPT第6条の核軍縮義務にコミットしてきたことは明らかだ。
核兵器禁止条約(TPNW)に関しては、安全保障の現実を無視するものである。核兵器を持つ責任ある民主主義国家や、その拡大核抑止のもとにある国に対し圧力をかける一方、独裁的国家の行動に何ら影響を与えない。核兵器を持つ国は、同条約に署名することはない。同条約により、世界から1発の核兵器も減ることはない。軍縮の動きを分断化し、軍縮の可能性を低下させる恐れすらある。このように述べて、TPNWに対し大変に厳しい見方を示しました。
フォード特別代表は、今回のNPRは、米国の伝統的な核戦略と大きくかけ離れたものではないと述べました。そして、①核戦略の構造的な面で革新的なものがあるわけではない、②核の近代化と核抑止の信頼性へのコミットメントに重きを置いている、③変化する安全保障環境に適応していく姿勢を示している、④核戦略に関する透明性を通じて他の核兵器保有国にもそれを促していることを挙げて、これらの4点は米国がこれまで「継続」してきたものだと指摘しました。
質疑応答も活発に行われました。その中で、米国はNPT第6条の核軍縮義務にコミットしてきたとの説明があったが、NPRの文中にはNPT第6条に言及していないのではないかとの指摘がありました。フォード特別代表は、NPRには核不拡散に関する記述があると応じました。
また、別の問いに対する答えの文脈で、NPRの冒頭のパラグラフにあるように、「長期的な目標としての核兵器の廃絶」にもコミットしていると述べました。
米国は、核兵器の非人道性はどのように考えているのかという問いに対しては、非人道性イニシアティブは、米国の安全保障上の懸念や現実に耳を傾けてこなかったといったコメントがありました。
なお、米国はこのサイドイベントに関して、「米国は、責任ある核兵器国がどのように行動すべきかの基準を引き続き設定している」とツイートしました。(原文はこちら)
全米科学者連盟のハンス・クリステンセン氏はこれに関連し、「NPRの勧告に対し批判的な立場をとってきた者として、NPT再検討会議の準備委員会で市民社会と直接に意見交換することを米国が決めたことは、素晴らしいことだ。全ての答えを得たわけではないが、他の核保有国もこうした姿に続くべきだ」とツイートしていました。(原文はこちら)
ちょうどこの原稿を仕上げている最中、核軍縮に関するクラスター1で、米国の声明が読み上げられました。2018年のNPRは核兵器の役割を拡大してはいないという一節が、耳に飛び込んで来ることになりました。(声明の原文はこちら)
文責:河合公明(創価学会平和委員会事務局長)