NGO News

2021年12月25日

「核不拡散条約(NPT)再検討会議にあたっての外務省とNGO・市民社会との意見交換会」レポート

2022年1月4日より開催される核不拡散条約(NPT)再検討会議を前に、核兵器廃絶日本NGO連絡会は、12月20日、外務省との意見交換会をもち、その後記者会見を行いました。午後4時から1時間にわたり行われた意見交換会には、外務省から上杉謙太郎外務大臣政務官、石井良実軍備管理軍縮課長、市民社会から15団体19名が参加しました(参加者リストはこちら)。以下、概要をレポートします。【文責:河合公明(核兵器廃絶日本NGO連絡会幹事)】

挨拶をする上杉謙太郎外務大臣政務官(右)

意見交換に先立つ挨拶で上杉政務官は、自らが国会議員として選出された選挙区が、3.11東日本大震災での原発事故を経験した福島であることに触れ、核兵器なき世界を目指す上でNGOをはじめとする市民社会との協力は不可欠であると述べました。そして、日本政府として、来たるNPT再検討会議で意義ある成果を得られるよう努力していくと述べ、冒頭挨拶を結びました。

外務省への要請を行う大久保さん

続いて、日本反核法律家協会会長の大久保賢一さん(核兵器廃絶日本NGO連絡会共同代表)が、NGO連絡会を代表して挨拶。市民社会と日本政府との間には、核兵器禁止条約に対する評価については大きな隔たりがあるが、核兵器なき世界を目指すという共通の目標があり、そのためにNPTは重要との認識を共有している。それゆえ、NPT第6条の核軍縮義務の履行を進めていくことが不可欠であると述べました。そして、来たるNPT再検討会議において日本政府が上げるべき成果として、①核保有国が、これまでの約束を守って、核軍縮に一層努めるよう求めること、②核兵器の非人道性について、最終文書にきちんと書き込むこと、③少なくとも「核兵器を先に使わない」ことを約束させること、④核兵器の材料を生み出す再処理計画はやめること、⑤核兵器禁止条約の意義を認めて、明記すること、の5項目を要請しました。これらの内容は要請書としてまとめられ、上杉政務官に手渡されました(要請書はこちら)。

上杉政務官に要請書を提出

これに対し上杉政務官からは、概要、以下の回答がありました。

①について

NPT再検討会議におけるこれまでの合意は、NPT体制を支える重要な要素であり、その履行は各国の義務であると考えている。合意が実施されていくよう尽力したい。

②について

唯一の戦争被爆国として、日本政府はこれまで核兵器の非人道性に関する認識を各国に広げてきた。これからも、その取り組みを続けていきたい。

③について

核兵器の先制不使用宣言政策は、一般論として、全ての核保有国が、一斉に検証可能な形で行わなければ有意義でない。また、現在の安全保障環境では、先制不使用宣言に依拠して日本の安全を保障するのは難しいと考える。

④について

日本政府は「非核三原則」を堅持しており、国内法上も原子力を平和目的に限定して利用してきた。また、日本はNPTの締約国として、核兵器を製造・取得しない義務を負っており、IAEAの保障措置を受け入れている。これらの方針に沿って政策を実施していく。

⑤について

核兵器禁止条約は、核兵器なき世界が実現する際の出口となる重要な条約だが、現時点では、核保有国が1カ国も参加していない。核保有国を関与させていく努力が必要である。そのためにも、同盟国であるアメリカとの信頼関係を重視していく。

石井良実軍備管理軍縮課長

その後、河合公明NGO連絡会幹事の進行で、石井良実軍備管理軍縮課長との非公開の意見交換が行われました。

NPT再検討会議についてどのような見通しを持っているかについては、核軍縮に向けた議論を前進させたいとの考えが示される一方で、会議の見通しは決して明るいとは言えないとの認識が示されました。

核軍縮の分野で日本政府はどのような政策を考えているかについては、包括的核実験禁止条約(CTBT)や核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)を推進し、核兵器を質・量の両側面から削減していく。その際には十分な検証が求められ、透明性を高める政策を実施していく必要がある。核兵器なき世界への出口が見えてきたところで核兵器禁止条約が重要となる、との考え方が示されました。

核兵器禁止条約をどのよう評価しているかについては、核兵器のない世界の出口として重要な条約だが、核保有国が参加していないのが現状である。そうした国を関与させることが必要で、そのためにもアメリカとの信頼関係が重要だ。引き続き各国の橋渡しに尽力していきたい、との考えが重ねて示されました。

先制不使用宣言については、宣言の信頼性をめぐる懸念が議論となりました。

日本がアメリカの核の傘に依存し、核兵器を必要とする限り核兵器は減らせないのではないか。核兵器を減らすために、日本はどのような貢献をするのかとの問いに対しては、核軍縮に向けた努力と核の傘に依存する安全保障に必要性について、説明がありました。

意見交換会の様子

核兵器廃絶日本NGO連絡会は、定期的に市民社会との対話にのぞむ外務省に対し敬意を表します。今回の議論では、核軍縮に向けた政府の政策について、従来と同じ説明がなされたというのがNGO連絡会の受け止めです。

意見交換会を振り返り、日本原水爆被害者団体協議会代表委員の田中煕巳さん(核兵器廃絶日本NGO連絡会共同代表)は、原爆を体験している人間からすれば、核兵器は使ってはいけないとの思いだけであり、現実に減らしていくために何ができるかに取り組んでほしいと述べました。

以上

外務省の報道発表はこちらです。

「外務省と核兵器廃絶日本NGO連絡会との意見交換会の開催」

意見交換会の様子は、以下のメディアで取り上げられました。

朝日新聞「「核禁条約の意義表明を」被爆者ら政府に要請 NPT再検討会議で」(2021年12月20日)

NHK(全国)「NPT再検討会議を前に被爆者団体などが要請「条約意義 明記を」」(2021年12月20日)

NHK(広島)「NPT再検討会議前に 被爆者団体などが政府に要請」(2021年12月20日)

NHK(WORLD)「Japanese NGO meets govt. ahead of NPT review talks」(2021年12月20日)

毎日新聞「核兵器廃絶NGO連絡会、政府に一層の取り組み求める要請書」(2021年12月20日)

しんぶん赤旗「「核なき世界」へ行動を NPTを前に外務省要請 NGO連絡会」(2021年12月21日)

中国新聞「核軍縮の進展へ要望書 NGO連絡会 NPT会議前に」(2021年12月21日)

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