NPDI広島会合、機会を逃す(ICAN声明)
昨日開催された軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)広島外相会合(および広島宣言)に対して核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の国際運営委員メンバーらは、以下の声明を発表しました。
NPDI広島会合、惜しくも機会を逃す
2014年4月12日、広島
(声明のPDF版はこちら。English version here.)
軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)のために広島に集まった国際NGOのメンバーたちは、NPDIの外相たちが、世界が大量破壊兵器に関する法的な抜け穴を埋め、核兵器を非合法化する必要があるということに合意できなかったことに失望しています。
私たちはNPDI外相会合が広島で開催されたことを歓迎しています。すべての政府指導者たちは広島・長崎を訪れ、核兵器のない世界を達成するための誓約を新たにすべきです。
広島会合においてNPDIの外相たちは被爆者の証言を聞き、核兵器がもたらす無差別的な影響を直接に目の当たりにしました。被爆者たちは、生涯をかけて核兵器廃絶を訴え続けてきました。広島は、核兵器がどのような主体によっても、いかなる状況においても再び使われてはならないということをまさに再確認するのに相応しい場所であります。
核兵器の人道上の影響から導き出される唯一の論理的な帰結は、核兵器を法的に禁止するための交渉プロセスを開始しなければならないということです。それは、核保有国が最初の段階で参加することを拒否するとしても開始されなければなりません。そのような法的文書は、核不拡散条約(NPT)を履行し強化し、核兵器の保有を許さない明確な規範を確立することによって軍縮を促進するものであり、核兵器が安全保障を提供するという主張に挑戦し、核保有国に対して保有核兵器を廃棄するという道徳上の強い動機付けを与え、世界的な不拡散努力を強化するものです。
私たちは、NPDIの外相たちの以下のような認識に同意します。いかなる核兵器の使用も破滅的な人道上の結末をもたらすこと。核兵器の根絶こそが目標であること。核兵器が存在する限り、それが使われる危険は現実のものであること。核軍縮と不拡散はすべての国の責任であること。現存する多国間の核軍縮のためのフォーラムは失敗していること。私たちはまた、NPDIがこの広島会合の機会に市民社会との関与を、限定的ながらもしていることを歓迎します。
NPDIのうち7カ国は、自国の安全保障戦略において核兵器に依存していることから、世界にもたらしている核の脅威を取り除く責任を負っています。これらの国々が安全保障政策から他の非人道的、無差別的な兵器を排除したことを考えると、このような核兵器への依存は矛盾した立場であるといえます。
日本は、昨日(2014年4月11日)に閣議決定したエネルギー基本計画によって、核兵器に利用可能なプルトニウムの大量備蓄を続けようとしているようです。オーストラリアは、核兵器の原材料となるウランをすべてのNPT上の核兵器国に輸出していると共に、インドにも輸出することを現在交渉しています。インドは、NPTに加盟しておらず、核実験を停止することを誓約しておらず、核兵器のための核分裂性物質を未だに生産し続けているにもかかわらずです。
広島会合に先立ち、私たちはNPDIの外相たちに書簡を送り、以下のことを要請しました。
●核兵器を禁止しその撤廃を命ずる条約の交渉開始を支持すること。
●核兵器を撤廃することが人間の安全保障上の共通の緊急事項であることを強調すること。
●自国領土内に置かれている核兵器を撤去すること(そのような政策をとっている国においては)。
●安全保障政策から核使用の威嚇を取り除くこと(そのような政策をとっている国においては)。
●本年内にウィーンで開催される核兵器の人道上の影響に関する第3回国際会議に参加すると誓約すること。
NPDI広島会合が、核兵器を非合法化し撤廃する新しい法的文書を支持することを明確に表明しなかったこと、そして、NPDI政府の側において何ら有意義な新しい誓約を行わなかったことについて、私たちは失望しています。
川崎哲(ピースボート、日本)
ティルマン・ラフ(核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、オーストラリア)
スージー・スナイダー(PAX、オランダ)
上記3名はいずれも核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員である。