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2023年08月11日

2023 NPT インタビュー1 − ​​ユース・フュージョン代表 ヴァンダ・プロスコヴァさん

 2026年核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けた第1回準備委員会に参加している若者へのインタビュー記事をお届けします。第1回はチェコ出身でユース・フュージョン(Youth Fusion)の代表を務めるヴァンダ・プロスコヴァ(Vanda Prošková)さんです。

  ヴァンダさんは2022年に国連軍縮部主催の#Youth4Disarmamentプログラムにも参加しており、それ以来、筆者とも親交があり、快くインタビューに応じてくれました。ヴァンダさんの核軍縮分野における活動は多くの人を惹きつけてきました。彼女のパワフルで真っ直ぐなメッセージが多くの人に届くと幸いです。

倉光(K):まず、いつ頃から、どのようにして核軍縮に向けた活動に関わるようになったのか教えてください。

ヴァンダ(V):私が核軍縮の分野で活動を始めたのは5〜6年前です。核軍縮・不拡散議員連盟Parliamentarians for Nuclear Nonproliferation and Disarmament:PNND)という団体でインターンを始めました。PNNDは、様々な地域、国、政党を超えた世界中の国会議員が核軍縮・不拡散に取り組むためのプラットフォームです。PNNDのインターンを通して様々な人に出会い、それがきっかけでこの分野で活動をするようになりました。そこで縁した方々とは現在もプロジェクトで深く関わっています。

 インターンを終えてから、約3年前、仲間と共にユース・フュージョンという団体 を設立し、徐々にプログラムを大きくしてきました。ユース・フュージョンは核軍縮だけではなく、核問題と関連する分野(開発学や環境問題等)に興味関心のある若者を集め、「核兵器の問題を安全保障だけではなく様々な視点から捉え、彼ら/彼女らを繋げて若者のネットワークを作る」ことを目標に設立しました。核兵器の問題も、環境問題も、相互に深く繋がり、互いに影響し合う問題であり、両者は切り離せない関係にあると考えています。

 そこで作ったネットワーク・繋がりからいつも元気をもらっています。若者が少ないこの分野で、ユース・フュージョン というコミュニティとそこでのプロジェクトを通して多くの若者を巻き込み、より多くの関心を集め、活動の幅・輪を広げてきました。例えば、最近はユース・ホットライン・キャンペーン(Youth Hotline Campaign) というキャンペーンを立ち上げました。フェローシップのようなもので、キャンペーンの参加者は月に一度、オンラインのウェビナーを通じて核兵器や他の関連する問題について学ぶことができるという企画です。ウェビナーのあとは参加者をグループ分けし、グループワークを行います。各グループには、いま特に対話が必要とされている核大国のロシアとアメリカからの参加者を必ず入れるようにしています。現在は3つのグループがあり、それぞれのグループでプロジェクトが進行しています。

K:今回の準備委員会に先立って行われた作業部会の会合では、ユース・フュージョンの代表としてとして発言する場面がありましたね。また、ユース・フュージョンの枠を超えて活動の幅がますます広がり、今回の準備委員会でも様々なイベントの企画や発言をする機会があると伺っています。そのことについて詳しく教えていただけますか?

V:私が今回ウィーンに渡航したのにはいくつかの理由があります。まず、1つ目は、先ほどお話ししたユース・フュージョンの代表としてです。作業部会と準備委員会における一般討論ではNGOの代表として発言しました。また、来週(準備委員会の2週目)にはサイドイベントも企画しています。イベントでは、NPTという場における若者の参加や若者の軍縮教育、平和教育の重要性について話し合い、先ほど紹介したユース・ホットライン・キャンペーンの成果についても発表する予定です。このサイドイベントには国連軍縮部ウィーン事務所のレベッカ・ジョビン(Rebecca Jovi)代表も参加してくださる予定で、フィードバックを頂けることになっています。このような形で国連軍縮部の協力を得られるのは大変嬉しいことだと感じています。

     2つ目に、ドクマイン(Docmine)というスイスにある映像プロダクション会社のプロジェクトの一環として参加しています。私は現在、ドクマインという会社でニュークリア・ストーリーズ(Nuclear Stories)というプロジェクトに携わっています(プロジェクトのInstagramはこちら)。名前の通り、核兵器および原子力発電にまつわる体験談や歴史について、その人道的な側面に焦点を当てて物語形式で紹介するというプロジェクトです。よく知られているような話から、あまり知られていないような話まで「核」という物質が人間、個人、ひいては私たちの世界に及ぼす影響を紹介することで話題のきっかけを作ることを目的としています。この準備委員会では、多くの若者や、核兵器や原子力の問題に日々携わっている参加者に話を聞き、それをビデオコンテンツとして一般の人々に共有するつまりなのでとてもワクワクしています。このプロジェクトにおける私の使命は、こうした彼ら/彼女らの大事な声をより広く共有することだと思っています。準備委員会ではユース・フュージョン のサイドイベントの他に、来週の月曜日にニュークリア・ストーリーズの主催でサイドイベントを企画しています。ニュークリア・ストーリーズでは映画の作成もしているので、イベントではその映画を上映して、国連軍縮部の職員から平和教育について話をしてもらう予定です。

 3つ目に、#Leaders2Futureというプログラムの参加者として準備委員会に参加しています。#Leaders2Futureは国連軍縮部の#Youth4Disarmament のプログラムの過去の参加者を対象とした取り組みです。#Leaders2Futureのメンバーは50人ほどいるのですが、その中の希望者10人が今回のウィーンでの研修に参加することになりました。#Leaders2Futureの研修では、NPT準備委員会の一部傍聴、国連軍縮部ウィーン事務所での活動や他の国際機関および団体による取り組みについて学ぶことができました。2023年の初旬頃から数ヶ月に1回メンバーを対象に軍縮にまつわる様々なテーマのオンライン勉強会が開催され、そこでの話し合いを踏まえて今回の準備委員会のサイドイベントでは私たちの意見勧告(Recommendation)を発表する機会も頂きました。

K:特にユース・フュージョンは今回の準備委員会でも活躍しているように見えますね。

V:ユース・フュージョンがNPTのサイドイベントを開催できることはとても恵まれていることだと思いますし、それを実現できる力をつけてこれたことをとても嬉しく思っています。また、私がとても誇らしく思っていることは、準備委員会のNGOセッションでステートメントを読んだNGO16団体のうち、3団体の発表者(ヴァンダさんを含む)がユース・フュージョンに関わったことのある若者だったことです。(ヴァンダさんはユース・フュージョン(Youth Fusion)、 ヴァネッサさんは核軍縮・不拡散議員連盟(NPPD)、 ライアンさんはリバース・ザ・トレンド(Reverse The Trend)を代表して発言。ヴァネッサさんとライアンさんは以前にユース・フュージョンでインターンをしていた。)設立してからまだ3年も経っておらず、お給料も出ないボランティアの活動にも関わらず、こんなにも素晴らしくパワフルなネットワークが生まれてきているということを実感する機会でした。本当に嬉しく思っています。ユース・フュージョンに関わる一人一人が世界をサステイナブルで、優しく、平和にするために努力している姿を見て、感謝の気持ちが湧き、誇らしく感じます。私たちが少しでも変化を起こしているということを実感し、元気が出ます。

K:ユース・フュージョンも含め、様々なプロジェクトで活躍していますが、その中でどんな時に大変さや難しさを感じますか?

V:まず、個人的に大変だなと思うことは時間管理です。また、どの団体にも共通していると思いますが、資金集めも大変です。この分野に興味があり、関わりたいと感じている全ての若者に平等に機会を提供することは本当に難しいと感じています。ユース・フュージョンでは金銭的な理由や、ビザの取得の難しさといった国籍に関する理由によって対面でイベントに参加できない人でも意義ある参加(meaningful participation)ができるよう、全てのイベントをハイブリッド(オンラインと対面の両方)の形式で行っています。様々な国からの参加者がいるので、例えば、国連に関係するプロジェクトなど、オンライン開催ができない場合は、本当に大変だなと感じています。ここ2年間の活動を通して、ユース・フュージョンのミッションとして心に留めていることは「できる限り多くの若者に平等に機会を与える」ということです。

K:ヴァンダさんにとって何がモチベーションになっていますか?

V:この世界には、素晴らしい才能とやる気を持っているけれども、どのようにしてこの分野に関わったらいいのか分からず、動きたくても足踏みしている若者がたくさんいます。ユース・フュージョンが、彼ら/彼女らが活動をするための手伝いができる場所になっていること、それが私の活力です。実際に、元インターンが準備委員会の同じNGOステートメントの場で意見を発表するという目に見えた変化があったことはとても素晴らしいことだと感じました。

 また、個人的には、他のプログラム(#Youth4Disarmament等)で知り合った友人たちに軍縮関係の会議で会えることが嬉しいです。彼ら/彼女らの頑張っている姿を見て、自分も頑張ろうと思うことができます。そして、頑張っているのは私1人だけではなく、他にもたくさんの友人がこの世界をより良い場所にしようとしているのだと実感できることが私のモチベーションです。私の素晴らしい仲間達が20年後に、各国の代表団だったり、外交官としてより影響力を持つ立場でこのような会議の場に出席していることを想像すると、この世界はどれだけ良くなるだろうとワクワクします。お互い励まし合い、頑張って、この世界をより良くしていきたいと考えています。

インタビュー後記

 ヴァンダさんは、彼女のニュークリア・ストーリーズのプロジェクトに、ぜひ日本人も参加してほしいと語っていました。興味のある方はぜひプロジェクトのInstagramにメッセージしてみてください。

インタビュアー 倉光静都香

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