2023TPNWレポート4 ー 第2回締約国会合 ハイレベル・セッションおよび一般討論演説 ー

はじめに

 2023年11月27日、核兵器禁止条約(TPNW)の第2回締約国会合が、ニューヨーク国連本部で開会しました。第1日目は、議長挨拶、他の役員の選出、議題の採択、議事規則の採択、組織事項、財務事項の確認が行われたのち、ハイレベル・セッションが行われました。ハイレベル・セッションでは、中満泉国連事務次長・軍縮担当上級代表や、赤十字国際委員会のミリアナ・スポリアリッチ(Mirjana Spoljaric)総裁、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のメリッサ・パーク(Melissa Parke)事務局長、長崎の被爆者の木戸季市さんが発言しました。続いて、カザフスタン、コンゴ民主共和国、キューバ、ラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止機関(OPANAL)がスピーチをしました。

 翌28日から29日にかけては、参加国による一般討論(general exchange of views)が行われました。本稿では、ハイレベル・セッションおよび一般討論における登壇者の発言内容をいくつか紹介します。(各スピーカーによる発言全文の一覧(英語)はこちら

議長挨拶

フアン・ラモン・デラフエンテ(Juan Ramón de la Fuente Ramírez)議長

 第2回締約国会合の議長に選出されたメキシコのフアン・ラモン・デラフエンテ(Juan Ramón de la Fuente Ramírez)氏は、核兵器の使用のリスクがかつてないほど高まっていることに触れ、締約国だけでなく、オブザーバー参加国にも感謝したいと述べました。また、第1回締約国会合で採択されたウィーン行動計画に基づいた会期間中の活発な取り組みに触れ、条約は急速な成長を遂げていると評価し「私たちは、より安全な地球に住み続けるために、この仕事を成功させなければいけない」という力強い言葉でスピーチを締めくくりました。

ハイレベル・セッション

中満泉国連事務次長

 中満泉国連事務次長は、昨年6月にウィーンで開催された第1回締約国会合以降も、国際的な緊張が高まっていることに懸念を示した上で、「TPNWのメッセージはこれまで以上に重要である。地政学的緊張の高まりは、核兵器のない世界という共通の目標の進展を先送りする理由にはならない」と述べました。また、「科学諮問グループの設置は、多国間軍縮条約の中でも特徴的な存在である。締約国の行動が事実に基づき、科学的助言に根ざしたものであること保証するものだ」と、科学諮問グループの意義と科学的な根拠に基づいた締約国の主張および行動の重要性を語りました。

メリッサ・パークICAN事務局長

 今年就任したメリッサ・パークICAN事務局長は、これまでの核兵器禁止条約の進展を称賛し、「TPNWの軍縮への取り組みは、脱植民地化のプロセスとの継続性を思い起こさせる。私たちは、人類を滅ぼしかねない核兵器の脅威から解放しようとしている」と述べました。さらに、「TPNWは、新たな署名や批准を重ねるごとに、より強固で実効性のあるものとなり、その規範はより根強いものとなっている」と強調しました。

木戸季市さん(長崎で被爆/原水爆被害者団体協議会事務局長)

 木戸さんは、自身の被爆当時の経験を紹介し、「広島・長崎に投下された原爆は、いのち、からだ、くらし、こころに被害を与えた。原爆は人間として死ぬことも、人間らしく死ぬことも許さない、絶対悪の兵器だ」と訴えました。また、国内外で核兵器廃絶と被爆者の救済を求めて運動しつづけてきた被爆者の声を聴いてほしいとも述べました。

カザフスタン

 カザフスタンは、旧ソ連時代に核実験が行われたセミパラチンスクにおいて、被ばくによる影響や土地の汚染という核被害が今もなお存在している現状について語り、「TPNWは軍縮だけでなく、人間の健康や開発にも資するものだと考えている」と述べました。また、同国がTPNW第3回締約国会議の議長国を務めることに触れ、国際信託基金の設置や、条約の普遍化、そして核不拡散条約(NPT)との補完性について議論を深めていきたいと述べました。

一般討論

オーストリア

 昨年議長国を務めたオーストリアは冒頭、「NPTや包括的核実験禁止条約(CTBT)をはじめとする多国間核軍縮体制が悲惨な状況にあることを考えれば、TPNWはこれ以上にないほど重要である」と述べました。そして、TPNWは、交渉の進展から条約の発効、そして条約の普遍化および実施と着実な進展を続けており、具体的な成果を上げていると語りました。

チリ

 チリは冒頭、各国による会期間中の取り組みについて敬意を表しました。その上で、「NPTのすべての締約国は、一般的かつ完全な軍縮に賛成しており、これに沿って、我々は核兵器の不拡散を含む大量破壊兵器に関する軍縮・不拡散体制を強く支持してきた」とし、TPNWは、NPTやCTBTを補完する条約であることを強調し、 TPNW締約国が非締約国に対して積極的に働きかけていくべきだと訴えました。

オブザーバー参加国

ドイツ

 昨年に引き続き、オブザーバーとして参加したドイツは、ロシアによる危機に直面している現在、TPNWは、自国の国家安全保障上の利益および核抑止力に依存するNATO同盟の義務に反するとして、TPNWには加盟しないという立場を明言しました。その上で、オブザーバーとして参加した動機を、NPT内で進む二極化に対抗し、核軍縮に責任を持つすべての利害関係者を橋渡しするためであるとしました。また、前回も関心を示していた、被害者支援および環境修復に関して、「ワークショップの支援、核実験の影響に関する統計調査、被害者支援に関するフェミニストの視点、女性と少女に対する放射線の影響に関するさらなる調査など、具体的なプロジェクト活動を支援していくつもりだ」と発言しました。

ノルウェー

昨年もオブザーバーとして参加したノルウェーは冒頭、「オブザーバー参加は、TPNWへの署名や批准に向けた一歩ではない。ノルウェーは、核共有の取り決めを含め、NATOを全面的に支持している 」と、自国の立場を表明しました。そして、「核軍縮を推進し、この分野における分極化に対抗するために、すべての国々が建設的な対話を行うことを求める」と述べた上で、アメリカとロシアおよび中国との間の対話の重要性を訴えました。また、2013年にノルウェーで開催された核兵器の人道的影響に関する会議に触れ、国民の意識向上に重要な貢献をしてきたと語りました。また、今後も軍縮プロセスにおける男女平等と多様な参加を促進する努力を続け、この作業に若い世代を参加させるイニシアティブを支援していくことを訴えました。

 会議前半の2日間を使って行われた一般討論からは、各国の核兵器廃絶における動機や取り組みを明らかになり、核兵器禁止条約が持っている可能性を感じるものでした。特に、締約国からは、条約の普遍化に関する言及も多く、どのように核抑止と向き合い、それに挑戦していくべきかという議論の土台が提示されたように思います。また、被害者援助に関しては、締約国のみならず、オブザーバー参加国からも多く発言がありました。様々な要素が含まれる条約だからこそ、普遍化のプロセスも多様であり、今後の動向を注視していきたいです。

核兵器廃絶日本NGO連絡会事務局 / GeNuine共同創設者 徳田悠希