【2024NPTレポート】核不拡散条約(NPT)「準備委員会」とは何か
7月22日から8月2日にかけて、2026年核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けた第2回準備委員会(以下、NPT第2回準備委員会)がスイス・ジュネーブの国連本部にて開催されます。
それに先立ち、本稿では、そもそも準備委員会とは何かについて、その位置づけや議論されるテーマ、会議が目指す最終成果などについて解説します。その後、第2回準備委員会の議題とスケジュールをご紹介します[1]。
NPT再検討プロセスと準備委員会
NPT準備委員会[2]は、5年に1度開催される再検討会議に向けて、その3年前から1年に1回、2週間にわたって開催されます。これら3回[3]の準備委員会を踏まえて、NPT締約国は再検討会議を開催し、条約の義務および過去の合意の実施状況や将来の行動計画などについて議論します。全3回の準備委員会と再検討会議によって構成されるこの過程はNPT再検討プロセスと呼ばれています。
準備委員会では、大きく分けて、会議の規則や進行などに関する手続事項(procedural matters)と条約の義務や過去の合意の実施状況といった実質事項(substantial matters)の2つについて議論および意思決定がなされます。前者には、例えば、準備委員会や再検討会議の議長の任命[4]および日時・開催場所の決定などが含まれます。後者については、開会セッションと一般討論の後、3つのクラスターに分かれて議論が行われます。クラスター1では核軍縮や安全保証(security assurances)などについて、クラスター2では核不拡散や地域問題、非核兵器地帯などについて、クラスター3では原子力の平和利用やその他の問題について、それぞれ議論されます[5]。
各クラスターでの議論を終えた後は、最終文書の採択へと移ります。第1回および第2回準備委員会では、次回の準備委員会に向けて、これまでの議論の内容を総括した「事実概要(factual summary)」への合意を目指し、第3回準備委員会では翌年開催される再検討会議への「勧告(recommendations)」の採択を目指します[6]。これらが締約国のコンセンサスで採択できなかった場合、議長の裁量によって、事実概要案あるいは勧告案を議長の作業文書(Chair’s working paper)として提出することができます[7]。
NPT第2回準備委員会の議題とスケジュール
今回のNPT第2回準備委員会は、以下の議題およびスケジュール(現地時間)で進行される予定となっています(7月12日時点)。
日時 | 議題 |
7/22 10am – 1pm | 開会セッション |
7/22 3pm – 7/23 1pm | 一般討論(General debate) |
7/23 3pm – 6pm | NGOステートメント |
7/24 – 7/25 | クラスター1 |
7/26、7/29 | クラスター2 |
7/30 – 7/31 | クラスター3 |
8/2 | 最終文書の採択など |
なお、会議に関連する公式文書や締約国が提出した作業文書などは国連やReaching Critical Willのウェブサイトで閲覧することができます。会期間中のサイドイベント情報は、締約国が開催するものは国連、市民社会が開催するものはReaching Critical Willがそれぞれ掲載しています。
浅野英男(核兵器をなくす日本キャンペーン事務局スタッフ)
[1] 本稿は、「2023 NPTレポート1 ― 核不拡散条約(NPT)再検討会議「準備委員会」とは何か」に加筆・修正を加えたものである。
[2] 以下の解説は、“NPT Review Process: An Explainer” を参照して執筆した。
[3] 第1回準備委員会はオーストリア・ウィーン、第2回準備委員会はスイス・ジュネーブ、第3回準備委員会はアメリカ・ニューヨークで開催されるのが通例である。また、第4回準備委員会が再検討会議と同じ年に開催される場合があり得る。
[4] 第1回準備委員会は西欧その他諸国グループ(WEOG)、第2回準備委員会は東欧諸国グループ(EEG)、そして第3回準備委員会は非同盟諸国(NAM)がそれぞれの議長を指名するのが通例である。再検討会議では、第1回準備委員会の議長が主要委員会Ⅲの議長、第2回の議長が主要委員会Ⅱの議長、第3回の議長が主要委員会Ⅰの議長を務める。また、再検討会議全体の議長はNAMのうち、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、カリブ諸国の間で順番に指名するのが通例となっている。
[5] 各クラスターでは、「特定の課題(specific issues)」について議論する時間が設けられている。再検討会議の場合は、3つの主要委員会(Main Committee)とそれぞれの下に設けられる補助機関(Subsidiary Body)という構成になっている。
[6] これまで勧告案がコンセンサスで合意されたことは一度もなく、事実概要案も2002年以降、採択されたことはない。コンセンサス文書に代えて、議長の作業文書として提出されてきた。
[7] 昨年の第1回準備委員会では、イランやロシアなどの反対を受けて、事実概要案を議長の作業文書として公式文書に残すことさえも断念する結果となった。