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2025年03月02日

「核兵器禁止条約 第3回締約国会議への日本政府の対応をめぐる外務省との意見交換会」レポート

2025年3月3日より開催される核兵器禁止条約(TPNW)第3回締約国会議を前に、核兵器廃絶日本NGO連絡会は、2月26日、日本政府による同会議へのオブザーバー参加を見送る対応をめぐり、外務省との意見交換会をもちました。

午後2時から1時間にわたり行われた意見交換会には、外務省から中村仁威 軍縮不拡散・科学部長、清水知足 軍備管理軍縮課長が、NGO側からは8団体8名が参加しました。以下、概要をレポートします。

声明を手交し、抗議する田中さん(左)、中村部長(右)

意見交換に先立ち、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中煕巳代表委員(核兵器廃絶日本NGO連絡会共同代表)が挨拶し、上記会議への不参加を表明した日本政府に抗議する声明の趣旨説明を行い、今回の政府の決定は非常に残念であると述べました。その後、声明の手交が行われました。声明では、日本は締約国会議に参加することによって、核兵器のいかなる使用も許さず、その廃絶を求める姿勢を明確に示すべきであると主張し、日本政府の方針の再考を強く促すものです(声明全文はこちら)。

これに対して、中村部長からは、石破総理の指示のもと、過去の事例をもとに検証を進めてきた。近年の日本を取り巻く安全保障の脅威に加えて、被爆国としてどう対処していくかについて検討を重ねた結果、オブザーバー参加をしないという結論に至ったとの説明がありました。日本政府として核不拡散条約(NPT)体制を基盤としつつ、核兵器のない世界に向けた現実的な取り組みを進めていくこと、また声明については政府関係者で共有するとの発言もありました。

意見交換するNGO関係者と取材陣

続いて、核兵器廃絶日本NGO連絡会の高橋悠太幹事の進行で、中村部長、清水課長との非公開の意見交換が行われました。NGO連絡会としては、政府の立場は以下のようなものであると理解しました(正確な引用ではありません)。

●日本政府としては、石破総理大臣の指示の下、過去に核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバー参加した国々の事例を検証した。その際、日本がオブザーバー参加するかどうかについては、総理の指示の下、ゼロベースで検討した。核保有国との意思疎通も行ってきたし、NATO本部も訪ねた。ただし、NATO加盟国の核兵器をめぐる関係性は、日米2カ国のそれとは性質が異なるため、ドイツがオブザーバー参加したから日本もできるというふうにいえるものではない。

●日本が核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバー参加するということは、世界的には非常に大きな意味をもつ行為とらえられる。オブザーバー参加であれば署名・批准に比べてハードルが低いと言う向きもあるが、政府としては、これがハードルの低い行為であるとは決してとらえていない。

●日本は核兵器保有国に囲まれており安全保障上の脅威がある以上は、政府としては、国民の生命と財産を守るためには、米国の核抑止力に頼らざるを得ないと考えている。

意見交換するNGO関係者

●2月18日の記者会見で岩屋外務大臣から「日本がオブザーバー参加することで誤ったメッセージを発信することになる」との発言(こちら)があった。その意味について、外務省としては、一つには米国に対して、そしてもう一つには周辺国に対して、誤ったメッセージを発信することになると考えている。これらの国々に対して米国の拡大核抑止を重視する姿勢を後退させるメッセージを送ることになるとの見方が示されたと、NGOは受け止めました。

●岩屋外相の先の会見では「核兵器禁止条約は核兵器のない世界の出口となる重要な条約である」と言及しており、政府としては、同条約について一切批判したり否定したりはしていない点に注目してもらいたい。国内でオブザーバー参加への広範な声が上がっていることは政府として十分に理解しており、それに答えられないかどうか、政府内で議論した。

●核軍縮をめぐって国際社会には大きな分断があり、それを埋めるために日本政府としては国連における「核廃絶決議」などを通じて積極的な外交努力を行ってきた。核兵器禁止条約にオブザーバー参加することでどのように核軍縮が進展するのか、という疑問や批判の声が一方にはある。いずれにせよ、一連の分断が少しでも改善されるように、市民社会にも協力していただきたい。

取材対応する田中さん(中央)

終了後、意見交換会を振り返り、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中煕巳代表委員(核兵器廃絶日本NGO連絡会共同代表)は、記者団の取材に対して、外務省からの説明に納得はしていないが、今後市民社会がどのような努力をしていくかが重要だ、などと述べました。

以上

意見交換会および、共同記者会見の様子は、以下のメディアで取り上げられました。

NHK「核兵器禁止条約の締約国会議 参加見送りの政府に被爆者ら抗議」(2025年2月26日)
共同通信「核禁条約会議への不参加に抗議 被爆者ら、外務省へ再要請」(2025年2月26日、信濃毎日新聞、北國新聞、南日本新聞ほかに掲載)
テレビ朝日 ANN「被爆者団体などが核兵器禁止条約会議にオブザーバー参加しない政府判断に抗議」(2025年2月26日)
中国新聞「「検証は結論ありき」 不参加の政府に抗議 核兵器廃絶日本NGO連絡会」(2025年2月27日)
長崎文化放送「田中熙巳さん 外務省に抗議、オブザーバー参加求める」(2025年2月27日)

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