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2022年08月04日

NPTレポート①:NPT再検討会議 開幕!

現地時間8月1日10:00(日本時間8月1日23:00)、アメリカ・ニューヨークの国連本部にて、第10回核不拡散条約(NPT)再検討会議がスタートしました。初日は、議長選出や運営に関する諸手続きの後、各国のハイレベルによる一般討論演説が国連総会議場で行われました。

なお、開会前には、国連本部前で、ベアトリス・フィンICAN事務局長が会見を開き、「NPTは核軍縮のマイルストーンであり、ウクライナ侵攻の中で重要性が増している」と述べました。

予定時刻から数分遅れてNPT再検討会議がスタートしました。初めに、2019年の第3回準備委員会議長のサイード・ハスリン大使(マレーシア)からの引き継ぎを受けて、再検討会議議長のグスタボ・スラウビネン大使(アルゼンチン)が開会挨拶をしました。スラウビネン大使は、新型コロナウイルスのパンデミックによって延期されていた会議を今日からようやく始めることができる。NPTは核軍縮のための核兵器国と非核兵器国のグランドバーゲンであると述べ、NPT の趣旨を確認しました。また、各国や市民社会の働きに注目していることも表明しました。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、世界は危機の中にあり、「中東から朝鮮半島、ロシアのウクライナ侵攻まで」核をめぐる危機が悪化している。雲行きが再び怪しくなってきた。私たちはこれまで「非常に幸運であった」が「幸運は戦略ではない」。また幸運は「地政学的緊張が核による衝突につながることを防ぐ盾でもない」。だからこそ、「衝突を回避する方策を打ち出す機会」としてこの「再検討会議が重要だ」と述べ、以下の3点などを各国に確認するよう促しました。
第1に、核兵器は使用してはならないことをすべての国が確認すること、第2に、戦争のリスクを減らすだけではなく、核兵器を廃絶し、決して使用されないことを保証すること、第3に、中東やアジアにおける緊張の高まりに対処するために対話と交渉を強く支援することなどです。(国連事務総長のステートメントはこちら

続いて、ラファエル・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長がスピーチをしました。IAEA事務局長は、ヨーロッパにおいて核兵器による対立や事故の可能性が懸念される深刻な紛争に直面しているとし、ロシアによるチェルノブイリ原子力発電所と立ち入り禁止区域の過去の占領およびサポリージャ原発における進行中の占領によって、人間の生命と生活が危険に晒されている、と危機感を示しました。(IAEA事務総長のステートメントはこちら

その後、議事運営の決定を経て、一般討論演説が始まりました。国家元首など、ハイレベルな登壇者から順に演説を行いました。

まず、フィジー(兼太平洋諸島フォーラム代表)は、発効から35年を迎えた南太平洋非核地帯条約(ラロトンガ条約)を活かして、NPTの定める軍縮・不拡散の目標にコミットしてきた。また、ロシアによる核兵器使用の威嚇を明確に非難すると述べました。さらに、太平洋地域での核実験と核廃棄の影響について、具体的なエピソードを交えながら紹介した上で、核軍縮の遅れは、私たち太平洋地域のコミュニティにとって深い懸念であり、我々の「青い海」を守るために、放射性物質による環境汚染のない地域を目指すと語りました。また、核兵器禁止条約の締約国会合で採択された政治宣言に「留意する」と述べました。(フィジーのステイトメントはこちら

続いて、日本の岸田文雄首相がスピーチしました。岸田首相は、ウクライナ侵攻によって核兵器のない世界への道のりがさらに険しくなったが、広島出身の首相として、あきらめることはないと述べました。その上で、現実から核兵器のない世界という理想に至る現実的なロードマップの一つとして、以下の5点からなる「広島行動計画」を発表しました。

1 核の不使用の継続。ロシアの核使用の威嚇を非難。
2 透明性の向上。核分裂物質の生産について、FMCTの交渉開始の機運の促進。
3 核削減の傾向の継続。核軍縮に向けた米ロ・米中の二国間対話の促進。CTBTの首脳級フレンズ会合の開催。
4 不拡散と平和利用。北朝鮮に対する批判。原子力の安全性を高めるための国際社会との連携。
5 広島、長崎訪問を通じた核の実相の理解促進。国連に基金(1000万ドル)を拠出し、若者の軍縮教育を促進。

また、国際賢人会議を11月23日に広島で開催予定であること、来年のG7を核の惨禍を繰り返さないコミットメントの場にすることなどを表明しました。最後に、持参した赤い折り鶴を掲げ、佐々木禎子さんのエピソードを紹介しました。(日本のステートメントはこちら

北欧諸国(Nordic countries)を代表してデンマークは、核軍縮のための枠組み「ストックホルム・イニシアチブ」や「ステッピング・ストーン(踏石)」作業文書など、北欧諸国による取り組みを改めて紹介しました。また、今回の再検討会議が、核軍縮の検証に焦点を当て、進められていくことを推奨しました。また、市民社会の強力な役割を強調し、ジェンダー平等や女性・若者の完全な参加を実現することで、持続可能な成果を得られると強調しました。(北欧諸国のステートメントはこちら

アメリカは、冒頭で、グロッシIAEA事務局長や岸田首相のスピーチを評価しました。また、「バイデン大統領との共同声明で、日本の核不拡散へのコミットメントを再確認した」とも述べました。そして、現在、米国が保有する核兵器数は、最盛期であった1967年に比べて90%近く減少しているとし、軍縮義務の履行をアピールしました。イランについては、「目標を達成するための取引に応じないでいる」と非難しました。ロシアに対しても強く非難し、1994年のブダペスト覚書は、ウクライナが核兵器を確信を持って放棄できるよう、安全の保証を約した。そのウクライナへの侵攻は、自国の安全のために核保有を考える国に、「考えうる最悪のメッセージ」を送ったと述べました。また、原発の占領についても非難しました。自国の核ドクトリンについては、「核兵器の使用は、米国と同盟国の死活的な利益を守るための極端な状況においてのみ検討される」としました。オバマ元大統領や安倍元首相が核軍縮を進めたことを想起させる発言もありました。(アメリカのステートメントはこちら

バングラデシュは、「核兵器を使用するという薄っぺらな脅し」を明確に非難し、「軍縮のペースが遅いこと」を深く懸念し、NPT第6条と過去のNPT会議における約束の履行を核兵器国に強く求めました。また核兵器禁止条約にすべての国が署名・批准するよう要請しました。(バングラデシュのステートメントはこちら

ドイツは、核兵器国にNPT第6条の履行を求めるとともに、核兵器禁止条約第1回締約国会議にオブザーバー参加し、対話の仲立ちと促進をしたと発言しました。また、核被害の影響や女性に対する不均衡な影響など、非人道性に関する事実を学んだとも述べ、世界が核兵器廃絶に向けて連携することを求めました。(ドイツのステートメントはこちら

なお、岸田首相の演説後には被爆者のサーロー節子さんが会見を行いました。
サーローさんは、「岸田さんがスピーチで言った内容自体はよかったが、一番大切だと思うことがスピーチのなかに含まれていなかった。それは核兵器禁止条約に一切触れなかったことだ」と述べました。

また、昼の休憩時間帯には、広島県と長崎県の共催によるサイドイベント「核軍縮と私たちの持続可能な未来」が開催されました。

初日を終えた筆者の第一印象は、再検討会議が「比較的スムーズに開幕した」でした。ロシアのウクライナ侵攻を理由に、会議が紛糾する、議事運営に支障がでる可能性もありました。もちろんロシアへの批判は多くの国が行ったものの、それが会議の開幕を中止させることはありませんでした。

また、いくつかの国々がジェンダー平等の視点を提起しました。これまで小さな分科会でジェンダー平等が議論に出てくることはありましたが、ハイレベルな「一般討論演説」でそれについての発言がなされることは異例だと思います。

明日(現地時間8月2日)は、一般討論演説の続きから行われます。

KNOW NUKES TOKYO共同代表 高橋悠太

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