NGO News

2022年12月17日

国際賢人会議メンバーと被爆者・NGOの意見交換会 レポート

 「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議第1回会合が広島で開催されました。12月10日に行われた国際賢人会議委員と市民社会の意見交換には、国際賢人会議側から、座長である熊本県立大学の白石隆理事長をはじめ、アンゲラ・ケイン元国連事務次長兼国連軍縮担当上級代表ら12名が参加。市民社会側からは被爆者、NGO関係者、通訳を含め計21名が参加しました。以下、概要をレポートします。【文責:河合公明 / 遠藤あかり(核兵器廃絶日本NGO連絡会)】

 白石座長は冒頭あいさつで、核兵器のない世界をいかにして実現するか、迎合しすぎず、相手の立場を理解して対話をしていこうというのが国際賢人会議の重要な目的だ。信頼関係を少しでも作ることが重要だと思うと述べました。また、前日に行われたユース非核特使との対話や、この日、英語で被爆体験を聞いたことに触れ、新たなイメージが湧いた。被爆の理解促進がこの問題を考えるうえで重要だと改めて認識したと述べました。

 最初に市民社会側から、代表4名による冒頭発言がありました。

 日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の木戸季市事務局長は、国際賢人会議に対して、①核兵器とは何かについて日本被団協が明らかにしてきたことを学ぶ場を作ること、②第二次世界大戦後も戦争は各地で続いており、核兵器は戦争をなくす力になっていないという事実に立ち帰り、核抑止論の欺瞞を明らかにすること、③核兵器が人類を滅ぼすか、人類が核兵器をなくすか、人類の危機を救うために何をしなければならないかを考えること、④武力で世界の紛争は解決できず、日本国憲法9条の実践、話し合いと対話でのみ解決できること、という4点を訴えました。(発言内容はこちら

 次に、広島の被爆者である広島原爆被害者団体協議会の箕牧智之理事長は、これまでアメリカで行ってきた被爆証言を振り返り、それが子どもたちの心に届き、感動した時の体験を語りました。また、原爆投下を正当化するアメリカの風潮を改めてほしいと述べ、核保有国と日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を粘り強く求め、核兵器の廃絶を世界に訴えていきたいと委員に呼びかけました。(発言内容はこちら

 3番目に、長崎の被爆者である核廃絶地球市民集会ナガサキの朝⻑万左男代表(核兵器廃絶日本NGO連絡会共同代表)は、本年6月にウィーンで開催された核兵器禁止条約(TPNW)第1回締約国会議が成功に終わり、様々な行動計画が採択された反面、8月にニューヨークで行われた第10回NPT再検討会議では最終文書の採択に至らなかったことを残念に思うとし、TPNWとNPTという2つの条約の相互補完性を深く追求していくことは、核なき世界を目指す人類共通の目標に計り知れない恩恵をもたらすものであると指摘しました。この国際賢人会議において、核抑止政策の克服を全核保有国が追求していくことが現実的な課題であると述べました。(発言内容はこちら

 最後に、カクワカ広島の⽥中美穂共同代表は、「核廃絶というゴールは共有している」という言葉を繰り返しているだけでは核廃絶はなしえず、すべての国が核廃絶に向かって舵を切ることができるよう賢人会議で具体的な道筋を示してほしいと訴えました。また、核兵器は使われる被害だけでなく、持つだけで被害を生み出してきたことを認識すべきであると指摘。核廃絶までの道のりがいかに険しいものであるとしても、ヒバクシャが強いられ続けている苦痛は、核軍縮の議論における困難とは比べものにならない。勇気をもって、核抑止ではなく核兵器禁止を世界に訴えてほしいと述べました。(発言内容はこちら

 後半は、国際賢人会議側は白石座長、被爆者・NGO側は核兵器廃絶日本NGO連絡会の河合公明幹事の進行で、意見交換が行われました。

 広島被爆者団体連絡会議の田中聡司事務局⻑は、5核兵器国を核軍縮のテーブルにつかせてほしいと要望。グローバルヒバクシャ援護の行動計画が動いていることから、日本には原爆被爆者援護の知見があり、そうした知見を提供し協力していくことが求められる、と述べました。

 広島平和記念資料館の原田浩元館⻑は、被爆者は広島平和記念資料館で展示されている内容をはるかに超える惨状を経験していることを指摘。広島平和記念資料館の訪問で被爆者の声に耳を傾けたのであれば、なぜ核兵器をなくすことを私たちが訴えてきたのかを想像してほしいと述べました。

 露エネルギー・安全保障研究センター(CENESS)のアントン・フロプコフセンター長からは、日本がTPNWに署名・批准しない現状について指摘があり、日本の外務大臣や外務省から、NGO側に条約の署名・批准について相談があったのかという質問が出されました。

 これに対し、日本反核法律家協会の大久保賢一会長(核兵器廃絶日本NGO連絡会共同代表)は、日本政府とNGOの立場は異なっている。政府は賛成できないとし、私たちNGOは核と人類は共存できないという立場である。日本政府は毎年、国連に核廃絶決議を提出し、その中でNPT第6条に言及している。日本政府がNPTを重要視するのであれば、核兵器の廃絶に向かっていけるはずである。日本反核法律家協会としては、核兵器は一刻も早くなくすべきだという考えである。核兵器をなくすことを夢物語にすべきではないと応じました。(大久保賢一日本反核法律家協会会長の発言内容はこちら

 米国のローズ・ゴッテメラー元国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)からは、ユース非核特使との交流が有意義であったとし、被爆者の証言の重要性を認識したうえで、気候変動の問題では市民社会、特に若い世代の間で運動の広がりを見せているが、核兵器の話題ではどのようなムーブメントを起こすことができると思うかとの質問が投げかけられました。

 これに対し、田中美穂さんは、気候変動と核兵器の被害に着目して関心を持つ人と連携することができる。このような場があること、被爆者に直接会うことが重要な機会であり、今後ITやSNSの技術を活かすことができるのではないかと述べました。

 若い世代からは、KNOW NUKES TOKYO の高橋悠太共同代表が、オンラインをよく見る若い世代だからこそ、自分が関与できない問題だとそこから遠ざかることもある。議論が可視化され、女性やこれまで関わっていなかった人たちが議論に加わり、私たちが決められる問題だという認識を広げることが必要だと述べました。

 米カーネギー国際平和財団の趙通シニアフェロー(プリンストン大学客員研究員)からは、核兵器が日本の安全保障に役立つと考える人にどう対応するべきかという問題提起がありました。また、核軍縮・不拡散アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク(APLN)のターニャ・オグルビー・ホワイトリサーチディレクターからは、核のリスクや紛争のリスクに加えて、核兵器が使われなかった場合における通常兵器によって引き起こされる抑止について、市民社会はどのような議論を行っているのかという質問がありました。

 これに対して、高橋共同代表は、日本国内でも核共有が必要だという声が上がったが、核兵器が何をもたらすのかということが十分に理解されておらず、国会議員と市民社会の認識の差が感じられる。一部の人々によって核政策が決定されていることに問題があると応じました。またANT-Hiroshimaの渡部朋子代表は、核リスクという点では、核兵器は女性や子供への放射線の被害が大きく、彼らの声が政策に反映されていないことが問題であることを指摘。自身の大切な人たちが被爆者になってしまう瀬戸際に立たされていると述べ、人間としてどう生きるのかということを考えてほしいと訴えました。

 白石座長は、議論のまとめとして、被爆者・NGOの発言からサジェスチョン(示唆)を頂いた。この会議には、核兵器を持つ国と持たない国の人達が集まっている。率直で礼を失しない議論が行われ、日本政府の政策についての質問もあった。私もそれを意識しつつ参加している。こういう形で率直な議論をすることは本当に大事だ。世界の安全保障環境は非常に難しい。核の危機も一時は忘れられたようなこともあったが、あまりうれしくない形で思い出されている。皆さんからのインプットを踏まえて明日の議論に繋げたいと思うと述べました。

 最後に、被団協の木戸事務局長は、何を受け継ぐべきか―それは人の命を守ることを中心に置くということである。人の命を奪うという事実、これが核兵器なのだ。そのことを賢人会議では話し合っていただきたい。先ほどは被団協の立場から話したが、被爆の経験は人間として受け継ぐべきものだ。核兵器による被爆は、なくしていかなければならない事象であることを伝えたいと述べました。

 約1時間、予定時間を超えて意見交換が行われました。今回の国際賢人会議及びNGOとの意見交換会の様子は、以下のメディアで取り上げられました。

【国際賢人会議 NGOとの意見交換会についての報道】

・共同通信「被爆者「核廃絶へ議論を」 国際賢人会議が意見交換」(2022年12月10日)

・中国新聞 「「核なき世界への一歩に」岸田首相がメッセージ 国際賢人会議が広島で初会合」【動画】(2022年12月10日)

・読売新聞「国際賢人会議「粘り強く 核廃絶を」」(2022年12月11日)

・毎日新聞「広島で国際賢人会議の初会合開幕 首相「核廃絶の重要な一歩に」」(2022年12月10日)

・NHK「国際賢人会議開幕 被爆地・広島で核軍縮に向け有識者ら議論」(2022年12月10日)

【国際賢人会議全体についての報道】

・共同通信「各国委員が原爆慰霊碑献花 国際賢人会議2日目」(2022年12月11日)

・毎日新聞「岸田首相 核廃絶へ「現実的な取り組み進める」広島で賢人会議」(2022年12月11日)

・中国新聞「「核なき世界への第一歩に」岸田首相がメッセージ 国際賢人会議が広島で初会合」(2022年12月10日)

・毎日新聞「国際賢人会議開幕 核なき世界へ、歩幅合わせ/広島」(2022年12月11日)

・朝日新聞「オバマ氏「核兵器ない世界、追求する責任」広島で国際賢人会議開幕」(2022年12月10日)

・TBS NEWS DIG Powered by JNN 「「核兵器ない世界」に向け議論“国際賢人会議”が広島市で初会合」(2022年12月10日)

・読売新聞「「核兵器のない世界」実現へ、首相「国際社会の機運高めることが重要」…国際賢人会議が閉会」(2022年12月11日)

・NHK「「国際賢人会議」に臨む被爆者“核廃絶で人類守る決意を” 」(2022年12月10日)

・ANN「広島で賢人会議 オバマ氏「核のない世界を」」(2022年12月10日)

・日本経済新聞「核軍縮、保有国と道筋時探る 広島で国際賢人会議を初開催」(2022年12月12日)

・産経ニュース「首相、サミット控え核軍縮の機運醸成図る 賢人会議」(2022年12月11日)

・首相官邸「「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議」(2022年12月11日)

・NHK「「国際賢人会議」が閉会 次回会合はG7広島サミットまでに」(2022年12月11日)

・東京新聞「「広島サミットで核軍縮発信を」国際賢人会議が閉幕」 (2022年12月11日)

・NHK「国際賢人会議開幕 被爆地・広島で核軍縮に向け有識者ら議論」(2022年12月10日)

・朝日新聞「国際賢人会議の委員、平和記念公園へ 被爆の実相に「心動かされた」」(2022年12月11日)

・首相官邸「「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議についての会見」(2022年12月11日)

・毎日新聞「国際賢人会議座長 NPT決裂巡り「不満高まり、率直に議論」」(2022年12月11日)

・共同通信「国際賢人会議座長「次回は春に」」(2022年12月11日)

・TBS「岸田首相が「国際賢人会議」で「核兵器のない世界」実現に向け議論深める」(2022年12月11日)

・日テレ「岸田首相 国際賢人会議を終えてコメント」(2022年12月11日)

・NHK「国際賢人会議 有識者 慰霊碑に献花」( 2022年12月11日)

・NHK「国際賢人会議2日目 岸田首相は閉会セッション出席へ」(2022年12月11日)

・NHK「国際賢人会議 オバマ元大統領「核兵器のない世界を追求」」(2022年12月10日)

・TBS「「現実的かつ実践的な歩み進める」 国際賢人会議で岸田首相」(2022年12月11日)

・NHK「国際賢人会議が始まる 被爆者が核兵器廃絶を訴え」(2022年12月10日)

・朝日新聞「岸田首相、賢人会議で「核なき世界」訴える 「橋渡し役」果たせるか」 (2022年12月11日)

・毎日新聞「「胸を打たれた」国際賢人会議の各国有識者らが広島を視察」(2022年12月11日)

・朝日新聞「英語の証言に感銘「他の国にどうやったら…」国際賢人会議で議論」(2022年12月12日)

・北国新聞「賢人会議、意義を体現する議論できたと体現」(2022年12月11日)

・山陽新聞「各国委員が原爆慰霊碑献花、広島 国際賢人会議2日目」(2022年12月11日)

・NHK「核兵器のない世界へ「国際賢人会議」を前に若者と意見交換」 (2022年12月09日)

・朝日新聞「岸田首相肝いりの国際賢人会議 二つの「橋渡し役」への一助なるか」 (2022年12月10日)

・日本経済新聞「オバマ元大統領のメッセージ 核軍縮の国際賢人会議」(2022年12月10日)

・RCC「「核兵器ない世界」に向けて 国際賢人会議が広島市で開幕」(2022年12月10日)

・下野新聞「賢人会議、意義を体現できる議論できたと首相」 (2022年12月11日)

・中国新聞「国際賢人会議の委員、開幕前に若者と意見交換」(2022年12月9日)

・中国新聞「岸田首相、国際賢人会議閉会セッションに出席へ」(2022年12月9日)

・朝日新聞「オバマ氏のビデオメッセージ全文 広島で開催の国際賢人会議」(2022年12月10日)

・中国新聞「ロシア委員、核威嚇への非難に反論「正しくない」国際賢人会議」(2022年12月10日)

・朝日新聞「核なき世界に向け、賢人会議始まる ロシアによる「核の威嚇」で応報」(2022年12月10日)

・朝日新聞「「核兵器の悪夢、誰が望むのか」国際賢人会議を前に学生ら訴え」 (2022年12月9日)

・日本海新聞「被爆者「核廃絶へ議論を」国際賢人会議が意見交換」(2022年12月10日)

・NHK「首相“G7サミットで核兵器のない世界の実現に向け議論” 」(2022年12月11日)

・FNN「岸田首相「広島サミットにつなげたい」国際賢人会議が閉幕」(2022年12月11日)

・毎日新聞「「核なき世界」へ 広島で道筋議論 初の国際賢人会議」(2022年12月11日)

・毎日新聞「「やりっ放しにしないで」核廃絶へ若者らが「賢人」に伝える願い」 (2022年12月11日)

・大分経済新聞「国際賢人会議が閉幕」(2022年12月11日)

・中国新聞「国際賢人会議が閉幕 核なき世界へ、首相「理想へ近づける有益な成果を」」(2022年12月11日)

・大阪日日新聞「会合前に原爆慰霊碑に献花、広島 賢人会議委員ら、資料館も」 (2022年12月11日)

・山陰中央新報「被爆者ら進展求める 核廃絶へ「議論を行動に」広島賢人会議」 (2022年12月11日)

・共同通信「国際賢人会議、広島で核軍縮議論 岸田首相「廃絶への第一歩に」」(2022年12月10日)

・中国新聞「核なき世へ「今度こそ」 過去の成果には疑問も【国際賢人会議を前に】被爆地の焦り」(2022年12月9日)

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