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2016年05月08日

ジュネーブより:ICAN会議、国連作業部会第一週と今後

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スイス・ジュネーブで開催されている国連作業部会に参加している創価学会の河合公明さんからの報告です。第一週の議論の様子、それに先立つICANキャンペーン会議、そして今後の展望が触れられています。
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1.はじめに
ジュネーブで、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のキャンペーン会議(4月30日と5月1日)、国連公開作業部会の第1週(5月2日から5月4日)に参加しております。すでに様々なレポートが出ていますので、専門的な分析はそちらに譲り、私なりの問題意識に基づいて、今後の課題として考えなければならないと感じている点を念頭に綴らせていただきます。

2.ICANキャンペーン会議
ICANキャンペーン会議では、公開作業部会とその後について、こんな見通しを述べていました。

●5月の議論を踏まえて、8月の第3会期で国連総会への報告書がまとめられる。その中に核兵器の法的な禁止に関する言及がどのように盛り込まれるかが、第1の焦点となる。

●その報告書が、第3会期でどのように合意されるかが、第2の焦点となる。すなわち全会一致のコンセンサス方式となるのか、それとも多数決による採択となるのかということだ。

●前者であれば、核保有国による核の傘のもとにある核依存国による反対を受けることになり、議論はまとまらないであろう。後者であれば、核依存国は難しい立場に置かれることになる。公開作業部会に参加はしていないものの、核保有国は強く反発するであろう。

●いずれにせよ報告書は10月の国連総会第1委員会にかけられ、最終的には国連総会にかけられることになる。国連での討議は多数決となるため、勧告内容は賛成多数で採択されるという運びになる。

●勧告内容が、核兵器の法的な禁止に関する交渉を含むものであれば、総会決議の採択を経て核兵器禁止条約の交渉が始まることになる。

●もし勧告内容が交渉を含まないものであった場合には、非保有国の中から独自に交渉マンデートを含む国連総会決議案が提出され、採択にかけられることになろう。

●核保有国がそうした交渉に参加することは、当然ながら期待できない。核依存国は難しい選択を迫られることになるが、交渉に参加しないというスタンスをとれない国も出てくるかもしれない。すなわち、核依存国の中で対応に差が生じることになる。

●核兵器禁止条約の交渉が始まれば、非保有国中心の討議となるため、内容の確定に長期間を要することは考えにくい。

●オバマ大統領が広島を訪問する可能性が生まれてきている。これは、核兵器問題に関する国際的な関心を高めるという機会となる。

●国連公開作業部会での取り組みを通じて、核兵器禁止条約の交渉の開始への道筋を切り開きたい。

全体的な印象として、2日間にわたるICANのの会合では、これからのプロセスに向けた大変なエネルギーを感じました。

3.国連公開作業部会(第2会期)
5月2日から4日まで、国連公開作業部会(第2会期)の前半が行われました。

(1)参加国について
核兵器保有国の参加はありませんでしたが、日本、オーストラリア、ドイツ、オランダ、イタリアなどの核依存国は参加することになりました。非保有国では、人道誓約にコミットしている国々、中南米カリブ海諸国、太平洋島嶼国諸国、東南アジア諸国の存在感を感じます。

開会後の全体会では、マレーシア、ブラジル、オーストリアなど核兵器の禁止を求める非保有国と日本、ドイツ、オーストラリアなどの核依存国の間で、活発な意見の応酬がありました。議長の統合ペーパーの信頼性に疑問を呈するような発言も、核依存国より投げかけられました。合意の形成方式についても、神経質になっているように見えます。

(2)議論の構図と今後の展開
議論を通じで明らかになった、核保有国・核依存国対非核保有国という構図の中で、保有国は物理的には参加していないものの、依存国を通じて参加をしていると結果になっているように思います。

こうした構図の中での合意形成は容易ではないと思いますが、各国がどのように建設的な議論を展開するのか。その意味で、各国が出す作業文書に良く目を通し、そこから発せられているメッセージを読み解く必要性を感じます。

(3)核依存国の役割
今後、核依存国がどのように動くのか。もし法的な禁止をする方向で話が進んで行った場合、話し合いにだけは参加するのか、それともしないのか。そうした対応の温度差が出てくるのかどうか、注目されるところです。

タニ議長とお話しした際、核兵器をめぐり異なる立場がある状況下で議論を進めることは、大きなチャレンジであると述べつつ、特に日本のような核依存国が議論で果たす役割が重要であると指摘していたことが、印象に残りました。

日本の市民社会と日本政府との対話が、これまで以上に重要な意味を持ようになってくると思います。

(4)禁止の次に来るもの
今後の議論の帰趨は予断を許しませんが、もし核兵器を法的に禁止する方向でいくのであるならば、日本の市民社会としても、その議論の内容にどう具体的に貢献していくかが問われることになります。

さらに仮に法的に禁止する条約ができたとして、そこから先をどうするのか、すなわち廃絶への道筋をどのようにつけていくのかという問いは依然として残されることになります。これは禁止と廃絶を分離する戦略からくる、当然の帰結と言えます。

そのために何に取り組まなければならないのか。現地での議論に参加しながら、そのことを具体的に考えなければならない段階に入ってきているように強く感じます。これは、それだけ市民社会の取り組みが進んできたことを意味するものとも言えます。

4.むすび
明日9日より、公開作業部会の後半の議論が始まります。法的側面を含む効果的措置を議論することがテーマとなっておりますので、先週よりさらに激しい議論の展開になっていくのではないかと思います。後半から参加する国もあるようですので、議論も熱を帯びることが予想されます。

創価学会インタナショナル(SGI)としても、作業文書を提出しました。国連ドキュメントサービスの文書番号A/AC.286/NGO/17でご覧いただけます。また議場でも、4日の午後のセッションで発言の機会を得ました。

引き続き、現地で議論に参加しつつ、情報を提供させていただきたいと思います。(文責:河合公明)

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