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2016年05月11日

ジュネーブより②:核兵器禁止を求める国々と核依存国の対立が鮮明に

5月9日、国連作業部会で発言する日本被団協の藤森俊希事務局次長(右)

5月9日、国連作業部会で発言する日本被団協の藤森俊希事務局次長(右)

ジュネーブからの河合公明さん(創価学会)による報告、第二弾です。
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5月9日、作業部会第2会期の後半が始まり、午前10時から、パネル4「核兵器のない世界の達成と維持のために必要な法的効果措置、法的規定・規範の要素について」が行われました。プレトリア大学のスチュアート・ケーシー・マスレン教授(国際法)を発表者に招き、核兵器を法的に禁止する場合、どのような要素を考慮すべきかについて活発な議論が行われました。

同教授は、核兵器を明示的に禁止する条約がない状況下では、禁止条約が重要な意味を持つと指摘。生物兵器や化学兵器の事例を引きながら、どのような要素を禁止の対象に含めていくかについて、具体的に議論する必要性があると論じました。

この発表を受け、午後の休憩をはさんで午後6時まで、全体討議となりました。本日より、法的側面に関する議論が始まったため、日本、韓国、ドイツ、カナダ、オランダ、ベルギー、など、北東アジアや北大西洋条約機構(NATO)諸国のいわゆる核依存国と、メキシコ、コスタリカ、オーストリアといった非核保有国が、双方の立場から発言するという構図が一層鮮明になってきました。

メキシコは、作業文書17を引用しつつ、禁止条約が核の傘に依存する核依存国の政策に大きなインパクトを与える可能性があること。多くの国が核兵器の法的禁止を求めており、もはや相違点はいつからどのように始めるかという点に絞られていること。核兵器禁止条約は核不拡散条約(NPT)と矛盾するものではないことを述べました。

日本は、作業文書9に示されたいわゆる「プログレッシブアプローチ」について論じると共に、効果的措置としての包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進や核分裂性物質禁止条約(FMCT)の必要性を訴えました。筆者が注目したのは、「核兵器に対する認識を変えなければならない」という趣旨の発言です。核兵器を法的に禁止することは、核兵器は許されない兵器であるとの認識を確立することを目的の一つにしているため、日本の目指す方向を支援するものともなり得ます。それゆえこの発言は今後、日本政府と市民社会の対話の中で重要な論点になるものと考えます。

カナダは、作業文書20を引用しつつ、いわゆる「法的ギャップ」というものが本当に存在するのかという問題を提起。ニュージーランドや市民社会の発言者がそれに反論するなど、議論が交わされました。

ノルウェーは、核兵器の法的な禁止が必要なことには同意すると述べ、いつからそのための議論を始めなければならないかについて議論すべきだと述べました。ただし、具体的にどのようにすべきについては立場を明らかにしませんでした。

エジプトは、長年の懸案である、中東の非大量破壊兵器地帯化が重要であると指摘。核兵器を禁止する条約に関しては、その廃絶を実現するための暫定的な法として支持するとの立場を明らかにしました。

ジャマイカの発言にも注目しました。本日の議論を振り返り、誰のための安全保障か、安全保障とは何を意味しているのか、核兵器はそうした安全保障に役に立つのか、それとも損なうものなのか。それを明らかにすべきである。そしてこれらの問いに対し、国際社会の多くの国々がすでに、安全保障は人間のためにあり、一部の国でなく全ての国のものであると考えている。そもそも核兵器は、そうした安全保障を損なうものであり、そこにこそ焦点を当てるべきであると論じると、場内からは拍手が起きました。

先週メキシコなど9カ国が共同で作業文書34を提出しました。そこに、禁止条約交渉を2017年に開始すべきであるとの主張が盛り込まれていることが注目されています。全体討議ではその作業文書への支持表明が少しずつ出始めていますが、まだ大きな流れにはなってはいないため、今後どれだけ支持表明の声が上がるかが焦点の一つとなると思われます。(文責:河合公明)

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