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2018年05月01日

【2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会⑦】クラスター2の議論がはじまりました

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会場から望むレマン湖とモンブラン

27日(金)午前の部はクラスター1に関する国家代表からの声明リクエストがこれ以上なく、予定より半日早まってクラスター2の議論がはじまりました。クラスター2では核兵器の不拡散、保障措置、非核兵器地帯に関する条項について話し合われました。

この会議中に、南北朝鮮首脳会談の友好的な様子を示す数多くの写真と、共同声明のニュースが飛び込んできました。私は平素、朝鮮半島問題をもっぱら米朝関係、日朝関係の文脈でとらえており、南北関係をあまり意識しておりませんでした。しかし、38度線にある軍事境界線の緊張が5月1日をもって解ける方向に向かうというのは歴史的な素晴らしい出来事です。ただし、各国の核廃絶NGOの仲間たちからは、軍事的緊張が朝鮮半島からイランやシリアといった他の地域に移るだけならば核問題の真の解決にはならないとの意見が聞かれました。

奇しくも同日27日にトランプ米大統領とメルケル独首相がワシントンD.C.で会談し、メルケル首相はこれまでの態度を変えてイラン核合意(包括的共同作業計画:JCPOA)は不十分であると述べたと報道されています。交渉は5月12日まで続けられ、その後トランプ大統領がJCPOAを破棄するかどうか判断されます。もしも破棄されれば、米朝首脳会談を通じた朝鮮半島問題への悪影響は必至です。この意見はロシア、ブラジルから聞かれました。オランダ、ブラジルからはIAEAがイランのJCPOA遵守を確認しているとJCPOAを援護する発言もありました。

ロシアの発言内容

ブラジルの発言内容

オランダの発言内容

多く国の代表から、核実験、弾道ミサイル実験を続ける朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を不拡散の悪例として非難する一方、最近の南北・米朝首脳会談、核実験・大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験の停止、核実験場の破棄などのニュースは歓迎するとの発言がありました。ただし、北朝鮮は国連安保理決議を遵守し、核軍縮のための実際的な作業が実施され、CTBT、NPTに復帰し、IAEA保証措置を受けること、と釘を刺すのを忘れないのは冷静な態度です。これに関連し中国から、朝鮮半島の非核化と平和機構の設立は同時に進めるべきであるという「複線アプローチ」の提案がありました。

中国の発言内容

どのような手段がクラスター2の目的を実現するのに有効か、多く国の代表から出ていた意見を整理しておきます。IAEA保証措置と追加議定書批准、CTBT批准、FMCT締結、原子力供給グループ(NSG)による輸出管理、既存の非核兵器地帯設立の経験、などです。我々市民社会を勇気づけるものとしては、フィリピンから効果的な不拡散体制の実現のために産業界、学術界、市民社会が重要な貢献をしているとの発言がありました。

フィリピンの発言内容

この日も最後に「返答の権利」がシリアから行使され、保証措置を遵守していないとするEU・ドイツ・オーストラリアに対し、2017年のIAEA報告でシリアのIAEAへの協力が確認されていると発言しました。続けてイスラエルが国際法や国連憲章に違反する行為を行い、NPTにも化学兵器禁止条約にも生物兵器禁止条約にも批准していないと非難しましたが、相手となるイスラエルが不在のため、それ以上の非難合戦とはなりませんでした。月・火・木曜日に目撃した何ら建設的な結果を生まない非難合戦を聞いていると、日本政府が主導する賢人会議提案の「議論に礼節を取り戻す」や「傾聴」のことが思い起こされます。28日(土)に、所属している国際核廃絶ネットワークAbolition2000の年次総会に出席しました。そこでスイスの「平和的非暴力的コミュニケーション推進協会」の方から「対立マネジメントの訓練」の説明書を受け取りました。その中身はもう少し勉強する必要があります。以前読んだ、アパルトヘイト廃止後の南アフリカで対話ファシリテーションを行ったアダム・カヘン氏の著書のことも思い出します。26日分のブログで提起した問題意識と同じで、現状のNPT会議の運営方法を見る限り難しいとお断りしたうえで、核軍縮進展のためにはこうしたコミニュケーション方法こそ取り入れるべきではないかと強く思います。

午後はいくつかの国家からクラスター2の議論を続けるのではなく、国家間の協議に使いたいというリクエストが通り、休会となりました。おかげで出られないことを残念に思っていたナガサキユース代表団のサイドイベント「ユースプレゼンツ:全人類への記憶の継承」に出席して、メンバーの核廃絶への思いを知ることができ、有意義でした。

プレゼンでは、まずナガサキユース代表団の英語がとても上手なことに驚きました。そして、それぞれがどのように自分が核兵器とつながっているかを自分の言葉で語っていました。それぞれバックグラウンドは異なりますが、被爆都市長崎で生まれ、育ち、学ぶ学生が今を生きる自分がなぜ核兵器廃絶を目指すのかとてもわかりやすいプレゼンでした。

24日(火)夕方に同じナガサキユースが短い映像を見せるサイドイベントがありました。その中でインタビューされていた学生の一人が核兵器の問題は私の力ではどうしようもならないと言っていたのが印象的でした。私も昔はそう考えていた時もあり、それが世界の大多数の意見かもしれません。問題から目を背けるのではなく、しっかりと見つめて考えること、それは決して若い人だけの課題ではありませんが、若いときにその習慣が身につくことはとても重要だと考えていますので、応援しています。

月曜日の午前にクラスター2の議論が再開されます。

 

文責:山口大輔(ピースデポ)

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