NGO News

2021年10月02日

9.26「核兵器廃絶のための国際デー記念シンポジウム」安全保障とは何か-パンデミックの時代に考える レポート

シンポジウム参加者の皆さん

国連が定める「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」を記念して、オンラインシンポジウム「安全保障とは何か-パンデミックの時代に考える」が 9月26日、渋谷区を配信会場として開催されました(オンライン映像はこちら)。このシンポジウムは、核兵器廃絶日本NGO連絡会の主催、国連広報センターの共催により、市民社会・国連・政府の3者のパートナーシップによる取り組みとして2015年から毎年開催され、今回で7回目を数えます。

パネルディスカッションの様子

本年のシンポジウムには、ゲストとしてNPO法人8bitNews代表理事でありジャーナリストの堀潤さんとNO YOUTH NO JAPAN 代表理事の能條桃子さんをお迎えいたしました。

まず冒頭では、シンポジウム開催に際し茂木敏充外務大臣からメッセージが寄せられ、外務省の池松英浩軍縮不拡散・科学部審議官により代読していただきました。メッセージの中で茂木外務大臣は、「日本は唯一の戦争被爆国として国際社会をリードする使命を有している。そのために政府だけでなく、NGOをはじめとする各界各層の皆様の協力が必要不可欠である」と述べられました。

続いてシンポジウム全体への問題提起として、学生有志による提言書の発表がありました。本年はシンポジウムに向けて、首都圏で核廃絶のためのアクションに取り組む団体KNOW NUKES TOKYOが、25歳以下の若い世代へアンケート調査を実施。その結果をもとに「被爆国日本のU25による提言書2021」を作成しました。シンポジウムでは、KNOW NUKES TOKYOを代表して高垣慶太さん(早稲田大学1年)が、提言書の作成経緯と、「日本は核兵器禁止条約に参加すること」などを含む5項目にわたる提言を説明されました。

U25提言書を池松審議官に提出        

続いて能條さんが発言。デンマーク留学を機に若者の政治参加や環境問題について活動してきた経験を通し、「若者に注目が行きがちだが、今の社会を担っている全世代が被爆体験を聞くことができる最後の世代であると思う。若者だけに託すことは問題を未来に持ち越すことになってしまう。その意味で大人が『若者』という言葉だけを利用するのではなくて、問題を抱える全世代で何ができるのか一緒に考えていきたい」と述べ、「世界の潮流を作るのも私たち市民である」と強調されました。

能條さん

次に、堀さんをファシリテーターに、登壇者によるパネルディスカッションが行われました。まず、企画責任者であるKNOW NUKES TOKYO共同代表の高橋悠太さん(慶應義塾大学3年)が、シンポジウムのテーマについて説明。今回のテーマ設定の背景には「コロナパンデミックを通じて、改めて核兵器が一人一人の人間の安全を守れていないのではないか」という問題意識があると述べられました。

高橋さん

日本原水爆被害者団体協議会の田中煕巳代表委員(核兵器廃絶日本NGO連絡会共同代表)は、「被爆者として、核兵器は絶対に使われてはならないと考えている。核戦争の可能性が高まっているからこそ核兵器はなくさなければならないというのが私たちの思いである」と発言されました。

田中さん

池松審議官は、「私たちも国民の命を守るという思いでやってきている。核兵器廃絶というゴールは共有している。ただ、日本を取り巻く現状を考えると現時点ではアメリカの核の傘に頼らざるを得ない」と述べられました。

池松さん 

能條さんは、「日本国民を守ることも大事だが、日本だけ良ければいいというわけではない。私には地球市民的な思いがあって、全ての人々の安全を保障することが日本の安全にも繋がるのではないか」と指摘されました。

次に、核兵器廃絶に向けたこれからの取り組みも議論のテーマとなり、能條さんは「SDGsのように具体的な期限を設定していくのはどうか。また、ジェンダーへの配慮など、多様な人の声を取り入れていくべきだ」と主張されました。

このような主張に対して池松さんは、「そうした期限を定めることができれば大きな前進になるだろう。そのためには核廃絶に向かった道筋が見えてこなければならないし、それがfeasibility(実行可能性)を伴っていることが大切だ」と指摘されました。

国連広報センターの根本かおる所長は、「具体的な目標を立て、達成が見込めることも大切だが、そこにaspiration(強い願い)を取り入れた野心的な目標を設定してきたのがSDGsであった。核廃絶についても広島・長崎100年の節目を刻む2045年に向けて声を上げていくことが必要だ」と語られ、「国連総会で初めて採択された決議は核軍縮に関わるものであり、核軍縮は国連のアイデンティティであるとも言える。今回の提言書も国連に届けていく」と述べられました。

根本さん

次に、堀さんは「核兵器がなくなった後の世界における安全保障や抑止というもののあり方について考えていく必要があるのではないか」との問題提起をされました。

堀さん  

この問題提起に対して、池松さんは「各国との信頼関係を作ることが重要。国家間対話の促進や国連決議の提出など、日本が核廃絶へのリーダーシップを果たしていきたい。考え方に違いはあるが、同じゴールに向かって、お互いの共通点に着目して取り組んでいきたい」と述べられました。

高橋さんや田中さんは、日本が核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバーとして参加するべきだと主張されました。さらに、田中さんは「パンデミックを通じて国や人種を超えて取り組むことが重要だと学んだはずだ」と指摘されました。

閉会の挨拶に立った田中さんは、「核兵器が本当に必要なのか、若者や多くの人を巻き込みながら議論していきたい」と述べられました。

最後に、総合司会を務められた本間のどかさん(明治学院大学1年)はシンポジウムを振り返り、「核兵器廃絶というゴールは共有しているものの、政府と市民社会の間には距離があることを感じました。また、このシンポジウムの中で、安全保障に関する考えが、なぜ若者と先行世代の間で異なるのかということについて、分かってきました。そして、今を生きるすべての世代が主体となって核兵器廃絶に向けて取り組むべきだと思いました」と感想を述べられました。

本イベントの様子は、以下のメディアで取り上げられました。

NHK「核廃絶や安全保障考えるシンポ 若者たちが提言書を発表」(2021年9月26日)

毎日新聞「核兵器廃絶へ若者が提言書 国連「国際デー」にオンラインシンポ」(2021年9月28日)

しんぶん赤旗「核禁条約に批准・署名を NGO連絡会 核兵器廃絶へシンポ」(2021年9月28日)

連合通信「「核廃絶の期日目標を」NGO連絡会がシンポ 核兵器禁止条約をめぐり議論」(2021年10月2日)

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