NGO News

2020年10月25日

[声明] 核兵器禁止条約の発効確定にあたって

10月24日(現地時間)、ホンジュラスによる批准書の寄託により、核兵器禁止条約の発効要件である50カ国の批准国に到達しました。これにより同条約は、90日後の2021年1月22日で効力を生ずることになります。核兵器廃絶日本NGO連絡会は、この歴史的な展開を心から歓迎します。

核兵器は「違法」であるという人類の意思を明確にした核兵器禁止条約の発効は、核兵器の全面的な廃絶に向け大きな前進をもたらすものです。条約の前文にもあるように、その前進のためにこれまで、多くの国の政府、国連、国際赤十字・赤新月運動、その他の国際的な及び地域的な組織、非政府組織、宗教指導者、議会の議員、学者、そして何よりも自ら核兵器による戦争被害を体験した被爆者により、多大な努力が払われてきました。その事実は歴史に深く刻まれ、新たに経済界なども加わって進もうとするこれからの歩みに、堅固な礎を提供するものです。

残念ながら核兵器を保有する国の政府はいずれも、核兵器禁止条約に背を向けたままです。自らは核兵器を持たず他国の核兵器に依存する政策をとる国々も、同条約を拒否しています。そればかりか、中距離核戦力(INF)全廃条約の失効など核軍縮のための国際ルールが壊されています。より「使いやすい」 核兵器の開発と配備が公然とすすめられ、新たな核軍備競争が始まっています。世界は今、危機的状況にあります。

しかし、核兵器の非人道性と危険性について市民が声をあげれば、政府はその声を無視し続けることはできません。日本では、核兵器禁止条約への参加に7割以上の人びとが賛成しています。米国の核兵器を配備する4カ国(ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ)でも、62-70%市民が核兵器禁止条約への署名を求めています。北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるベルギーでは、新政権が核兵器禁止条約を肯定的に評価する政策を発表し、核兵器禁止条約が多国間核軍縮にいかなる新たな誘引を与えうるかについて調査する動きが出ています。核兵器禁止条約は、直面する危機的状況を乗り越える希望の道筋を指し示しています。

日本政府は、核兵器の「非人道性」と厳しい「安全保障環境」を考慮する「我が国の基本的立場」に合致せず、「核兵器国と非核兵器国との間の対立を一層助長し亀裂を深めるものである」との理由から、 核兵器禁止条約の交渉開始に「反対」しました。そして、「核兵器禁止条約が掲げる核兵器廃絶という目標は共有する」が、同条約の考え方が、「現実的」かつ「実践的」な核軍縮のための措置を「着実に」積み上げる「我が国の立場とは異なる」との理由から、同条約に「署名する考えはない」としています。ところが、核兵器の廃絶に向けた現実的で着実な一歩であるはずの核兵器の役割を限定する議論には反対しています。そして、日本の安全保障には米国の核抑止力が必要不可欠であるという立場を、全く変えようとしていません。核兵器の使用を前提とする抑止に依存するこのような姿勢は、「核兵器の非人道性を知る」唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界に向けた国際社会の取り組みを「リード」する「使命」を有するとする日本政府の「確固たる方針」と両立するものとは、到底考えられません。

私たちは日本政府に対し、核兵器禁止条約に関して、改めて以下のことを求めます。

●唯一の戦争被爆国としての使命と責任を果たすために、これまでの政策を転換し、核兵器禁止条約に早期に署名・批准すること。

●法的には何ら障害のない核兵器禁止条約への署名・批准をめざし、国会での議論を促すこと。

●来る核不拡散条約(NPT)再検討会議において、核兵器禁止条約が核軍縮・不拡散に果たす役割を政府として認め、発効要件を満たしたこの機運を同会議の成功に生かすこと。

●日本が批准する前に核兵器禁止条約が発効し締約国会議が開かれた場合は、日本はオブザーバーとして参加し、核軍縮の前進のために貢献すること。

被爆体験や戦争体験の風化が、歴史を忘れ、過ちをくり返すことにつながってはなりません。これらの体験は、未来に向けて「残す」べきものです。改めて訴えます。核兵器が人々に何をもたらしたかを思い起こし、核兵器が平和をもたらすという謬論とは決別しましょう。そして問いかけます。安全保障の議論において何を「変える」必要があるのでしょうか。COVID-19の感染爆発(パンデミック)により人類共生の道に暗雲が立ち込める中、時代はそれを考えることを求めています。長年にわたる運動に若い声と発想が「加わる」ことで、新たな力が生まれます。核兵器廃絶と平和のための行動を、世界のすべての国々と人々に呼びかけます。

2020年10月25日

核兵器廃絶日本 NGO 連絡会
共同世話人
大久保賢一  (日本反核法律家協会事務局長)
川崎哲  (ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員)
田中煕巳  (日本原水爆被害者団体協議会代表委員)
朝長万左男  (核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員長)
森瀧春子  (核兵器廃絶をめざすヒロシマの会共同代表)

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