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2026年07月01日

いま核兵器が使われたら、日本はどうなる?

はじめに

 広島・長崎への原子爆弾投下は、1945年末までに、合わせて約21万人もの命を奪ったとされています。その数字の背景には、一人ひとりの人間にもたらされた、言葉では語り尽くせない「非人道的」な被害がありました。

 被爆者の証言などを通じて、多くの人が核兵器はおそろしいものであると考えていると同時に、私たちはどこかで核兵器の使用は過去のものだと感じているのではないでしょうか。

 しかし、世界には9,700発以上の核兵器が実際に使えるように配備・貯蔵されており、その多くは、広島・長崎で使用された原爆の威力をはるかに上回るものです。さらに、核保有国間の緊張が高まるなか、核が実際に使われるリスクはかつてなく高まっています。核の脅威は、今を生きる私たちにとってきわめてリアルな問題なのです。

 そこで本記事では、もし現在、核兵器が使用されたら、私たちの住む「日本」にどのような影響や被害があるのかを学術的な研究をもとに紹介します。

もし、日本に対して核攻撃があったら

 2008年に行われた研究では、日本に対して核が使われた場合、どのような被害があるかについて、2つのシナリオが検証されています。

 第一は、ある核保有国が、広島原爆と同じ威力の15キロトン1の核兵器を50発使用するケースです。そこでは、死傷者数(死者・怪我人)は約1300万人にのぼると予測されています。これは東京都の総人口(約1400万人)に匹敵します。中国・北朝鮮など核兵器を持っている国と隣り合う日本で、こうしたシナリオは現実性を帯びています。

 第二は、ロシアが、100キロトンの核兵器200発を日本に使用するシナリオです。、この場合、死傷者数は約5900万人にのぼると見積もられています。これは日本の人口の約半数に当たります。(図表1)

 こうした核戦争において、実際どのくらいの人が生存できるかは医療へのアクセスに大きく左右されます。しかし、核攻撃後では、医師や看護師などの医療者も被害を受け、病院機能は壊滅的になる可能性が高いと考えられます。そのため被害がより大きくなるのです。

図1:ChatGPTによって生成

 また、2023年に発表された長崎大学などの研究では、テロリストグループによって10キロトンの核兵器が東京の中心部で使用された場合のシミュレーションが行われています。核兵器は、敵対する国だけではなく、テロリストによって使用されるリスクもあります。

 このシナリオでは、たった一発の小規模な核使用でも、数ヶ月以内に約22万人が死亡すると推定されています。また、東京都心に住む多くの人が致死量の放射線を浴びることにより、一年以内にさらに最大160万人が死亡。被爆によって引き起こされるがんにより、長期的にはさらに約50万人が死亡するとされています。(図2)

図2:ChatGPTによって生成

他国の核戦争による日本への被害

 たとえ核兵器が日本以外の場所で使用されたとしても、日本に住む私たちには甚大な被害が生じると考えられています。

 まず、日本の周辺国に対して核が使用された場合、放射性物質が日本まで飛来する可能性が考えられます。

 たとえば、2023年に公表された研究では、アメリカが中国のミサイル・サイロ(格納庫)が位置するエリアを、300キロトンの核兵器540発で攻撃した場合、その放射性物質が風に流されて日本に到達するシナリオが検討されています。その結果、日本では、適切なシェルターがある場合でも最大で約17万8千人、シェルターがなければ最大で151万7千人が放射線被害によって死亡するとされています。

 さらに、日本から遠く離れた場所での核使用だとしても核の冬」による世界的な食糧危機が起き、日本で大量の死者が出ると予想されています。

 核の冬とは、核兵器が地上の物を燃え尽くし、それが大量のすすやちりとなって大気中に舞い上がることで、太陽光が遮られ、地球全体が数年以上にわたって寒さと暗闇に覆われる現象のことです。急激な太陽光の減少と気温の低下は、世界全体の農作物の生産をほぼ不可能とし、大規模な飢饉を引き起こします。

 たとえば、2022年の研究では、インドとパキスタンの間で核戦争(15キロトンの核兵器を100発使用)が起きた場合、核の冬による飢饉によって、戦争から2年後までに日本では人口の6割にあたる最大約7200万人が死亡、アメリカ・ロシア間の全面的な核戦争(100キロトンの核兵器を4400発使用)では、日本人口のほぼ全員(※2022年当時)に当たる約1億2500万人が死亡する可能性が指摘されています。食料自給率の低い日本では、他国に比べて餓死者が多くなる傾向にあるのです。(図3)

図3:ChatGPTによって生成

 たとえ日本が直接的な核攻撃を受けなかったとしても、核兵器による悲劇と無関係でいられるとは限らないのです。

シミュレーションツール

 ここまで紹介した研究のようなシミュレーションを簡易的に再現するツールもオンラインで公開されています。これらのツールでは、核兵器が使用される場所や規模を入力するだけで、予測される爆風、熱線、放射線の影響や死者数などが表示されます。

ツール1(英語):NUKEMAP by Alex Wellerstein  

ツール2(英語):What would happen if a nuclear bomb went off in your backyard? | Outrider 

 このようなツールを使えば、私たちが実際に住んでいる街に核兵器が使われた場合どのような影響があるのかについて、より明確なイメージを持つことができます。

おわりに

 本記事では過去の研究データから、現代において様々なシナリオで核兵器が使用された場合に、日本に住む私たちにどのような被害や影響が想定されるかをまとめました。いずれのシナリオでも、たった一瞬、一発の核兵器で、想像することもできないような数の命を奪い、紛争に責任をもたない市民にも悲劇をもたらします。

 核兵器を抽象的なものや過去のものとして捉えるのではなく、今この瞬間に起こりうる脅威として捉えるためには、核が使われると実際に何が起きるのかという現実を直視することが不可欠ではないでしょうか。

 このようなデータを一人でも多くの人に広めることで、核兵器が存在し、使用されるリスクがある世界で生きることが何を意味するのか、私たちは自分や大切な人の命が突然奪われるかもしれない現実を受け入れたままで良いのか--それらを皆で考え、議論するきっかけに本記事がなれば幸いです。

インターン 前田将太

  1. 核兵器による爆発の威力を表すのに使われる単位。1キロトンは、1000トンのTNT火薬を集めて爆発させたのと同等のエネルギーを意味する。 ↩︎

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