【開催レポート】核廃絶国際デー記念イベント「ユースがデザインする『核なき世界』」
国連が定めた「核兵器の全面的廃絶のための国際デー(核廃絶国際デー)」を記念してイベント「ユースがデザインする『核なき世界』〜ピースサークルを通じて国連に声を届けよう〜」を開催しました(アーカイブ動画はこちら)。
核兵器をなくす日本キャンペーンと核兵器廃絶日本NGO連絡会は、核廃絶国際デーに合わせ、国連広報センターや外務省と協力し、記念イベントを開催してきました。
本年は、一般社団法人かたわらにもご協力いただき、国連「ピース・サークル」と連携したイベントを開催しました。
第1部では「ユース、国連、核なき世界」と「安全保障って軍事だけ? 軍縮を通じた平和のつくり方~核とAIの問題から考える~」をテーマに2つのトークセッションを実施しました。国連、外務省、市民社会、ユース、それぞれの立場から、核兵器のない世界を実現するために何ができるか、対話や外交・軍縮が平和に果たす役割について考えました。

トークセッション①では、国連広報センターの根本かおるさんと一般社団法人かたわら代表理事の高橋悠太さんが登壇。核なき世界に向けて国連はどう取り組んでいるのか、軍縮や平和の実現にユースが取り組む意義はどこにあるのか、についてお話しいただきました。
根本さんは、国連では、若者を保護する対象ではなく「平和の担い手」と見るように変化しており、2024年に国連で採択された「未来への協定」では全5章のうち1章が若者や将来世代に当てられたり、国連事務総長の直属でユース・オフィスが設置され、事務次長補に30代の若手が起用されていることなどを紹介しました。
高橋さんは、これまで世界的には約60カ国で約350回、日本では11回にわたり開催されてきたピース・サークルの経験から、たとえ対立や競合関係にある国々であっても、気候変動対策などに取り組むことで、共通の目標を作り、信頼関係を育めるのではないか等の意見が若者から寄せられたことを紹介。そうして生まれる協力関係を他の分野にもつなげていく重要性を語りました。
根本さんは、平和とは戦争がないことだけでなく、もっと幅広いものを意味するものだと思うと語り、他者の状況に「想像力を働かせること」、「人の痛みを想像できる力」をつけてほしいと若者に期待を寄せました。

トークセッション②では、国連、外務省、市民社会それぞれのセクターからゲストが登壇し、核兵器とAIをテーマに、対話や外交、軍縮を通じて平和をつくることができるかについて語り合いました。
始めに、アジア太平洋資料センターの内田聖子さんが、AIの軍事利用の現状と課題を解説しました。内田さんは、AIは従来の兵器と異なり、自立的な学習や状況分析、判断をすることが可能であると指摘し、それによって短時間で大量の攻撃が可能になっていることを紹介しました。そのため、AIの情報分析や行動提案に対して、人間の理解が追いつかず、単にそれを承認するだけの存在になっていないかや、人間が保つべき「レッドライン」が崩れつつあるのではないかとの懸念を提示。AIの使用に倫理や民主的な管理をどのように組み込んでいくのかが問われていると語りました。
外務省軍備管理軍縮課の石川亘さんは、核兵器とAIのリスクについて、国際社会での議論を紹介しました。石川さんは、米中首脳会談や核不拡散条約(NPT)の会議において「核兵器の使用決定は人間がコントロールする」との原則が核保有国間で確認されてきていると述べました。また、情報収集から分析、使用判断に至るプロセスの中で、どの段階までAIを活用してよいのか、人間の関与をいかに実質的に確保しつづけられるかが問われると語りました。
国連広報センターの根本さんは、世界では紛争の数が増加し、軍事費が史上最高を更新したと述べ、その背景には相互不信があると指摘しました。また、これだけ軍事費が増えると、開発援助(ODA)や医療、教育、社会保障など、他の予算が削られてしまうと語り、軍事だけでなく、健やかな暮らし、教育、食、雇用、セーフティーネットなど、全てがつながって私たちの安全保障がある。そうした広い意味で考えた安全保障が担保できなくなってしまうと語りました。
かたわらの高橋さんは、生成AIによって作られた原爆投下に関する動画がSNSに多く投稿されていることを紹介し、そのなかには歴史的事実とは異なる内容が含まれている場合があることを指摘。作り手は被爆の実相を伝えたいという思いを持っていたとしても、誤った情報が伝わってしまい、核兵器の問題を考える共通の基盤が崩れかねないとの問題意識を共有しました。
パネルトークでは、他にも、核軍縮が進められてきた過去の事例からどのような教訓を私たちは学べるか、対話や外交が果たす役割は何かなどについて登壇者が意見を交わしました。

第2部では、参加者が小グループに分かれ「核と平和」をテーマに対話をしました。
「2045年に向けて、このまま核とAIの脅威が放置された世界と、脅威が規制された核のない世界のどちらへ進むと思うか」という問いについて、参加者がそれぞれの考えを共有し、それらの「シナリオを止める、または向かうために “今” できることは何か」というテーマで対話を深めました。
参加者からは、AIに頼り切るのではなく「人間が最終判断をすること」が重要である、そのためには民主主義がきちんと機能する社会が必要である、AIの利用について教育現場で正しい使い方を伝えていくことが大切だなどの意見があがりました。
今回のイベントでは、AIやデジタル技術という身近なテーマを入り口に、核兵器や軍縮が私たちの生活や未来と地続きでつながっていることを考えることができました。
参加したユース世代をはじめとする一人ひとりが、現状を知り、想像力を働かせながら、身近な人々そして社会に対して問いを広げていくことの大切さを共有する、非常に有意義な時間となりました。
インターン・木場笑里