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2018年04月25日

【2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会②】第2回準備委員会が開幕しました

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4月23日、第2回準備委員会がジュネーブの国連ヨーロッパ本部で開幕しました。すでに各国が作業文書を提出し始めており、それぞれの立場が明らかになっています。ここでは第1日目の一般討論の内容も踏まえつつ、筆者からみた今回の準備委員会の注目点を紹介しておきたいと思います。

(1)まず、本ブログ読者の多くが関心を寄せているであろう核兵器禁止条約(TPNW)ですが、これを2020年NPT再検討会議の最終文書のなかでどのように位置づけるかです。すでにオーストリアなど22カ国が作業文書9を提出し、最終文書に盛り込む具体的内容を提案しています。例えば、核兵器のもたらす「人道上の帰結についての知見と証拠が事実に基づく議論で提起されたことを歓迎」し、「核兵器爆発の影響が、従来理解されていたよりも重大で、相互関連しており、地域的・地球的影響を及ぼし、人類の生存を脅かしうることを認識する」こと。そして核兵器のもたらす「人道上の帰結への落胆を表明し、国際法遵守の必要を再確認」すること。そのうえでこの「人道上の帰結の新証拠により、核兵器は国際法に合致して使用できないとの見方が強化されたことの承認」や、TPNWは「NPT第6条でいう効果的措置であるという事実の承認」を求めています(12項の趣旨)。単純にTPNWを認めよというよりも、TPNWの前提となっている考え方を受け入れたうえで、TPNWはNPT第6条でいう「効果的措置」に該当することの承認を求めていると言えます。新アジェンダ連合(NAC)もすべてこの作業文書の共同提出国になっていますが、NACのNPT第6条についての作業文書13では、1995年、2000年および2010年の最終文書は、第6条の核軍縮義務実施し締約国が必要と認めたものであり、締約国はその実施に完全に責任があると主張しています(10項、11項)。TPNWの推進はNPT第6条の履行にあたるという主張が明確に見えてきています。

(2)これに対して核兵器国(NWS)、とりわけ米国は作業文書30を提出し、新しい核軍縮のアプローチである「核軍縮条件創出アプローチ」(CCND:creating the conditions for nuclear disarmament)を提示しました。核軍縮に取り組むには前提となる国際安全保障環境の改善が必要であり、NPTのすべての締約国がこれに取り組む責任があるというものです。米国は、NPT前文で、締約国は核軍縮の促進のために「国際間の緊張の緩和及び諸国間の信頼の強化を促進することを希望している」と指摘し、国家間緊張の緩和こそ、NPT第6条に従って核軍縮の条件を育てるために必要だと指摘しています(8項)。実際、初日の米国代表の発言は、核軍縮をめぐる国際環境の悪化を指摘するものでした。

トランプ政権は2月に公表した「核態勢見直し」(NPR)でCTBT批准を求めないとしました。従来のステップ・バイ・ステップのアプローチで最初に達成すべき措置がCTBTでした。米国が提起する新しいアプローチはステップ・バイ・ステップのアプローチに代替するものなのでしょうか?また、他のNWSもこれに同調するのでしょうか?NWS側の軍縮の取組み姿勢がどうなるのかに注目したいと思います。

(3)最後に日本です。日本は4月に公表された賢人会議の提言を作業文書37として提出しました。この提言では、上記にみられるような核軍縮における2つの潮流の対立が先鋭化している現状について、両者の橋渡しを行う措置を提案したものです。とりわけ橋渡しをする国(つまり日本)に対しては、誠実な対話の開始を求めており、なかでも「困難な問題」と思われるような議題を設定して共通の基盤づくりを目指すよう提言しています。その議題とは、核使用・威嚇の合法性を根拠づける自衛権の問題であり、核兵器のない世界を構想するにあたっての、国際の平和と安全の維持と人間の安全保障の両立性の問題です。これらの議題は、上記のように対立する双方の側から、どのように受け止められるでしょうか?日本の主張はこれに限定されているわけではありませんが、橋渡しの役割をどこまで果たせるかに注目したいと思います。なお、会議2日目には、河野外務大臣の演説と日本政府による賢人会議の提言をテーマにしたサイドイベントが予定されています。

 

文責:山田寿則(明治大学法学部)

 

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