【2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会⑥】クラスター1の議論がはじまりました
4月25日(木)午後からは、一般討論およびNGOプレゼンテーションを終え、具体的な議論がはじまりました。クラスター1では、具体的には核兵器の不拡散・軍縮・国際平和と安全保障に関する条約の条項、安全の保証、非核兵器国に対する核兵器の使用や使用の威嚇への保証のための効果的な国際的枠組みについて話し合われました。
核軍縮の進展を生み出せる新味のある提案がないか注意深く聞いていましたが、違いを見つけることはできませんでした。しかし、以前からある提案の重要性が減じるわけではありませんので、どういった提案が多くの国から出されたかご紹介します。警戒態勢解除、信頼醸成、検証、透明性向上、リスク低減、消極的安全保障、非核兵器地帯、核兵器禁止条約(TPNW)、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)、戦略兵器削減条約(新START)、2000年、2010年NPT最終文書の行動計画などです。パナマが軍縮教育の重要性について述べていたことを特記しておきます。
そして、やはり核兵器国の動向は気になるところです。英国、ロシアはあえて多弁にならずに、我々はNPT第6条の核軍縮義務を果たしている、と淡々と述べている印象でした。多弁だったのが中国です。安全保障ドクトリンにおける核兵器の役割を減らすこと、先行使用を前提とする核抑止政策をやめ先行不使用政策をとること、NPT第6条は無期限核兵器保有を認めるものではない、核の傘、ヨーロッパにおける核シェアリングをやめることなどを訴えていました。5核兵器国は24日(火)の朝に会合を持ったことを明かしており、中国がリーダーシップを取って、というのは現実的には難しいでしょうが、仲介役としてでも自身の主張を他の核兵器国にも浸透させてほしいと思います。
クラスター1の特定事項に移る前に、声明に対する「返答の権利」が行使され、米国が新NPRに小型核兵器の開発を盛り込んだことでNPT第6条の核軍縮義務を守っていないとするイランと、遵守しているとする米国の間で激しい応酬が繰り広げられました。初日の最後と2日目の最後(3日目の午後はサイドイベントに出ていたため全体会のやり取りは不明)にもシリアでの化学兵器使用問題、イギリスでの元ロシアスパイ暗殺事件、クリミア併合などが提起され、米国、英国、ロシア、シリアの間で責任は相手にあるとする激しい非難合戦が行われました。ロシアはNPTの場はそれらの問題を話し合う場ではないとし、米国は(化学兵器の)不拡散の規範が害されているのだから提起せざるを得ないと言います。確かにこの非難合戦で時間を浪費して本来話し合われるべき重要な問題が話し合われないのでは困りますが、肝心の核軍縮の議論のほうが全くかみ合っていません。その根底には相互の不信感があります。これら問題を包括的に取り扱う場を別に設けて信頼を高め、共通の基盤を構築してからでないと核軍縮の話し合いは進展しないように思われました。
その後、午後の部の途中からクラスター1の特定事項(核軍縮と安全保障)に議論が移りました。非核兵器国の側から、非核兵器地帯に属している国でさえも核兵器国が議定書に署名していないケースがほとんどであるため、(核兵器で攻撃しないという)消極的安全保障を核兵器国の政策ではなく法的拘束力のある形で認めてほしいという声が一様に聞かれました。カザフスタンはこの交渉開始の機は熟していると述べています。双方失うものはないように見えるため、この点だけでも進展を見てほしいものです。
クラスター1の特定事項に関する声明は26日で出尽くしました。明日27日はこれ以上クラスター1の声明の提出がなければ予定より半日早まってクラスター2の議論が行われるようです。27日の議論も引き続き報告します。
文責:山口大輔(ピースデポ)