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2022年06月19日

ウィーン・レポート②:ICAN市民社会フォーラム「北東アジアの非核化」より

18日、ウィーン旧市街にある会議施設Aula der Wissenschaftenで、ICAN市民社会フォーラム(1日目)が開催されました。

概要
市民社会フォーラム1日目では、全4ステージで合計26のイベントが開催されました。そのうち、日本からの参加者が登壇したものは、以下の通りです。

・これこそが核兵器だ(THIS is what nuclear weapons are)
 10:45〜@Main Stage
 登壇者:川崎哲(ピースボート)、木戸季市(日本被団協)
 ※当イベントのレポートはこちらから

・核汚染の歴史が世代を超えた抵抗を生む(A contaminating legacy breeds resistance across generations)
 13:15〜@Colloquy Hall
 登壇者:崎山昇(全国被爆二世団体連絡協議会)、中村涼香(KNOW NUKES TOKYO)、瀬戸真由(カクワカ広島)
 ファシリテーター:高垣慶太

・核兵器禁止条約と持続可能性の交錯点(TPNW-Sustainability Nexus)
 12:15〜@Colloquy Hall
 登壇者:星野俊也(大阪大学教授)中村生(KNOW NUKES TOKYO)、山口雪乃(KNOW NUKES TOKYO)

・北東アジアの非核化(Denuclearisation in Northeast Asia)
 11:00〜@Vienna Hub
 登壇者:秋葉忠利(元広島市長)、エンクサイハン・ジャルガルサイハン(ENKHSAIKHAN Jargalsaikan)(モンゴル元国連大使)、ハン・スーヨン(HWANG Sooyoung)(参与連帯)
 ファシリテーター:遠藤あかり(核兵器廃絶日本NGO連絡会)

「北東アジアの非核化」レポート
11:00(現地時間)からは、ピースボートと紛争予防のためのグローバルパートナーシップ(GPPAC)の共催によって「北東アジアの非核化」が開催されました。以下、概要をレポートします。

このイベントには、現地の会場に元広島市長の秋葉忠利さん、オンラインで韓国から参与連帯(People’s Solidarity for Participatory Democracy)のハン・スーヨンさんとモンゴルからブルーバナー(Blue Banner)のエンサイハン元国連大使が登壇しました。

秋葉元広島市長
・ロシアのウクライナ侵攻を受け、プーチン大統領による核兵器使用の威嚇や、それを受けた一部の政治家による核保有を肯定する発言があった。しかし、私たちがむしろ追求すべきは「北東アジア非核兵器地帯」である。
・一部の政治家による核保有を肯定する発言や、北東アジア非核兵器地帯の形成に対する人々や政府の関心のなさの背景には、広島と長崎で起こった惨劇が理解されてこなかったことがある。
・被爆者の願いは、世界中の誰も自身と同じ経験をしないことであり、それが人類の生存を守ることになること。
・日本政府は、すべての人々がなぜ核兵器禁止条約(TPNW)が必要かを考えるために、広島の声を聞き、それを世界に伝えるという姿勢を示してほしい。

ハン・スーヨンさん
・北朝鮮に対して韓国とアメリカは、軍事演習や威嚇、圧力ではなく、対話や関係改善のための条件づくりを進めるべきだ。
・北朝鮮との関係が不安定なままである限り、朝鮮半島の非核化は成し遂げられない。外交関係の正常化を含む、両国間の関係改善が必要である。
・北朝鮮だけでなく、アメリカによる韓国および日本への「核の傘」をなくすことで朝鮮半島の非核化は達成できる。朝鮮半島全体における核兵器への依存を完全になくすべきである。これこそが、核兵器のない朝鮮半島が、核兵器のない北東アジアの実現に向けた踏み台(stepping stone)になる。
・朝鮮戦争の終戦なしに、韓国政府がTPNWに参加することは難しいだろう。これからも韓国がTPNWへ参加できるよう活動を続けていきたい。

エンサイハン元国連大使 
・どの国も「相対的な優位性(アドバンテージ)」を持っている。モンゴルは、積極的な外交政策を促進することで地域の安全保障に貢献してきた。
・ウランバートル・プロセスの開始など、問題の解決のために集まり、議論する政治的な空間を作り出すことで地域の平和と安定に貢献してきた。
・「楽観的なアプローチ」が大切である。核保有国や「核の傘」依存国においてもNGOの役割は重要だ。
・政府と市民社会の協力関係が非核兵器地帯を作り上げるために重要であった。これからの北東アジアの非核化においても双方の努力が必要だ。

当イベントでファシリテーターを務めた遠藤あかりさん(核兵器廃絶日本NGO連絡会)は「TPNWは、被爆者や核兵器を持っていない国々の努力によって作り上げられてきた。NGOや一つ一つの国が核兵器廃絶に向けてイニシアチブをとっていく事が重要だ。スヨンさんのお話を聞いて世界のパワーバランスや安全保障問題を見直し、核兵器禁止条約にどの国も取り残されてはならないと改めて感じた」と話しました。

当イベントの開催にあたっては「核なき世界基金」による支援を賜りました。心より御礼申し上げます。

文責:浅野英男(核兵器廃絶日本NGO連絡会/神戸大学大学院博士課程)

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