NGO News

2022年06月21日

ユース・ブログ⑤:中村涼香さん(KNOW NUKES TOKYO)にインタビュー

本日のブログは、KNOW NUKES TOKYO共同代表の中村涼香さんへのインタビューです(聞き手は、事務局の遠藤あかり)。20日に開催された「核兵器の人道上の影響に関するウィーン会議」(非人道性会議)で、「核兵器の使用と実験から生き延びた人々の証言」(Testimonials of Survivors of Nuclear Weapons Use and Testing)の一人として登壇されました。中村さんのスピーチの全文はこちらから。

非人道性会議で被爆三世としての発言し、どんなことを感じましたか?

中村:会議の冒頭、会議場を埋める多くの人々の前でキーになるスピーチの時間を頂き、とても光栄でした。私のスピーチは、被爆者である木戸季市さんの次でした。壇上に立つ前はとても緊張していて、頭が真っ白になりそうだったです。木戸さんのスピーチに湧きおこる拍手を背中にうけて、世界に向けた木戸さんの声が会場の人々にしっかりと受け止められていることに少し安心し、登壇することができました。今は、自分のスピーチを終えてほっとしています。

私も会場の後ろの方にいました。傍聴している人達が、涼香さんのスピーチを聞きながら、「東京から来た22歳だって、彼女は被爆三世として話しているんだね」と話していて、被爆二世、三世の人達の声に耳を傾けている人が多くいるんだな、と思いました。あのメッセージの中で特に重要視したのはどこでしたか?

中村:自分がスピーチを考えているときに特に伝えたいなと思ったのは、被爆者が自身の辛い経験を持ちつつも、声を上げてきたということです。被爆体験を話すことでその痛みや苦しみを続けさせてしまっているんです。そのことを自覚しながら話さなければならないと思っていました。

今回、日本政府から「ユース非核特使」の委嘱を受けてきたこともあって、何を伝えたらいいのかとても考えました。「日本の政府が核兵器禁止条約締約国会議に参加しないことを残念に思います。日本が積極的に核軍縮に取り組めるよう、政府と市民が一体になって頑張ります」とスピーチで述べました。会場から拍手が沸き起こり、この思いを後押ししてもらっているようで嬉しかったです。しかし実際には、締約国会議に日本の政府は参加しない方針なので、もやもやを感じました。しかし、ユース非核特使として様々な国の様々な立場の人とコミュニケーションができることをプラスに捉え、この場所でのスピーチだからこそ伝えられたという思いもあるのだと考えています。

ユースオリエンテーションから始まり、ICAN市民社会フォーラム、非人道性会議と、今日までウィーンで活動してみてどんな感想を持っていますか?

中村:ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから、不安定な国際情勢の中で、日本も含めて世界的に核抑止論や核共有を拡大する議論が起こりました。核兵器の廃絶が厳しい流れになっていて、私自身苦しい時期を過ごしてきました。その中で、核軍縮、核兵器廃絶のための国際会議がウィーン開催されることになり、今回の渡航を決めました。様々な不安を抱えながら現地に来てみると、色々な人が集まってそれぞれの活動を共有し、展開し、人々が持つ熱気というものを久しぶりに感じました。

ユースオリエンテーションやICAN市民社会フォーラムに参加して、被爆者の声や私の今日のスピーチが、人々に伝わっている実感があり、感動しました。本当に核兵器を無くせるかもしれないと思いました。核軍縮に向けた世界の雰囲気を感じる中で、日本は唯一の戦争被爆国としての声を求められていると思います。私はこれまでウィーンでの盛り上がりをみる中で、改めて日本政府が締約国会議に来ないということに対して残念に思うというか…。日本のためにプラスになる機会を、政府が逃してしまっているのではないかと思いました。というのも、今の世界情勢の中で、日本の憲法を通じて各国に平和を訴えることができる、アピールの機会を逃している気がしています。

締約国会議に向けての気持ちをお願いします。

中村:締約国会議がついに始まります。どんな風に会議が進むのか想像できない裏返しでもありますが、ワクワクしています。条約が今後どのように運用されていくのか、ウクライナのこともあわせて、核軍縮や核兵器廃絶に向けて世界はどのような捉え方と方法を選び進んでいくのかを見ていきたいです。私はサイドイベントである平和首長会議に出席します。平和首長会議や締約国会議について、できるだけ詳細に情報や流れをキャッチして日本に伝えていきたいです。

これまで被爆三世ということを意識して運動に参加してきたというよりも、条約の普遍化を重視してきたので、これほどまで被爆三世としての意見を求められることに気づかされ、驚きも感じています。このことに世代の移り変わりも見えているように感じます。被爆三世としての声、条約の普遍化はどちらも重要なことなので、明日も多くの人に伝えられたらいいと思います。

インタビュアー:遠藤あかり(核兵器廃絶日本NGO連絡会/立命館大学修士課程)

CATEGORY

ARCHIVE